紀事本末体(読み)キジホンマツタイ(その他表記)Jì shì běn mò tǐ

デジタル大辞泉 「紀事本末体」の意味・読み・例文・類語

きじほんまつ‐たい【紀事本末体】

歴史記述の一形式一つ事件始終をまとめて記述する方法南宋袁枢えんすうが著した「通鑑つがん紀事本末」に始まる。

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精選版 日本国語大辞典 「紀事本末体」の意味・読み・例文・類語

きじほんまつ‐たい【紀事本末体】

  1. 〘 名詞 〙 歴史記述の一体裁人物伝記、または年代順序によらないで、一事件ごとにその首尾本末をまとめ記すもの。宋の袁枢の「通鑑紀事本末」に始まる。紀事本末。〔現代日用新語辞典(1920)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「紀事本末体」の意味・わかりやすい解説

紀事本末体 (きじほんまつたい)
Jì shì běn mò tǐ

中国歴史叙述の形式の一つで,紀伝体編年体と併せて史の三体という。宋の袁枢(1131-1205)が編年体の《資治通鑑(つがん)》をもとにして,歴史的事件のはじめから終りまでを一見しうる形式を考案し,その書を《通鑑紀事本末》と名付けたのに始まる。清朝の《四庫全書総目》に至ってはじめて,紀事本末体が史書を分類する形式の一つとして認められた。書物の数は必ずしも多くはないが,叙述の形式は,章学誠ら清朝以降の歴史家に重んぜられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀事本末体」の意味・わかりやすい解説

紀事本末体
きじほんまつたい

中国、前近代の歴史叙述の形式の一つ。紀伝体(きでんたい)や編年体(へんねんたい)の歴史書の弱点を補うために創案された体裁であり、重要な事件を時代ごとに選び、各事件について完結的にその起承転結を年月日を追って叙述する。編年体の歴史書の代表作である、北宋(ほくそう)、司馬光(しばこう)の『資治通鑑(しじつがん)』を改編した『通鑑紀事本末(つがんきじほんまつ)』(南宋、袁枢撰(えんすうせん)。42巻)がこの形式の最初のものである。たとえばその第1巻は、「三家、晋(しん)を分ける」「秦(しん)、六国を并(あわ)す」「豪傑、秦を亡ぼす」の3項からなっている。明(みん)・清(しん)時代には『左伝(さでん)紀事本末』(清、高士奇(こうしき)撰)があり、また宋、元、明、遼(りょう)、金、西夏などの時代についての多くの紀事本末体のものが編纂(へんさん)された。

[尾形 勇]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紀事本末体」の意味・わかりやすい解説

紀事本末体
きじほんまつたい
ji-shi-ben-mo-ti; Chi-shīh-pên-mo-t`i

中国の歴史叙述の一形式。編年体 (→年代記 ) は年を主とし,紀伝体は人を主とするのに対して,紀事本末体は事件を主とする。宋の袁枢 (えんすう) が,編年体の『資治通鑑』の記事を『通鑑紀事本末』として編纂し直したのを初めとする。以後,『宋史紀事本末』『元史紀事本末』『明史紀事本末』『左伝紀事本末』 (以上紀事本末五種) ,さらに『西夏紀事本末』『三藩紀事本末』 (以上七朝紀事本末) ,『遼史紀事本末』『金史紀事本末』 (以上九朝紀事本末) がある。

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百科事典マイペディア 「紀事本末体」の意味・わかりやすい解説

紀事本末体【きじほんまつたい】

中国における歴史叙述の一形式。重要な事件ごとに,原因から結果までをまとめて記述する。紀伝体は人を主とし,編年体は年を主とするのに対し,これは事を主とする。編年体の《資治通鑑》を改編した南宋の袁枢(えんすう)の《通鑑紀事本末》に始まる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「紀事本末体」の解説

紀事本末体
きじほんまつたい

中国の歴史叙述形式の1つで,事件の発端・経過・結末をまとめて記す形式
南宋の袁枢 (えんすう) (1131〜1205)が編年体の『資治通鑑』の紀事を編纂 (へんさん) しなおした『通鑑紀事本末』に始まる。歴史の因果関係がわかるので,こののち盛行した。紀伝体・編年体とともに三体という。

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世界大百科事典(旧版)内の紀事本末体の言及

【通鑑紀事本末】より

…もともと中国の歴史記述の様式には紀伝体と編年体があるが,前者は各パートが独立しているため,同一の〈事〉が重複して現れることがあるし,後者は時間が主で〈事〉が従であるため,複数の〈事〉が並行して記述されたり,ひとつの〈事〉がしばしば寸断される結果,〈事〉をひとまとまりとしてとらえがたいという欠点がある。袁枢はここに第三のスタイルとして紀事本末体を創案し,その克服を図ったのである。その後,《宋史紀事本末》をはじめ,ひと口に《九朝紀事本末》と呼ばれる多くの史書がこのアイデアを踏襲した。…

※「紀事本末体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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