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伊勢湾西岸の海岸平野で,三重県の主要部を占める。北は木曾三川と養老山地,西は鈴鹿山脈,布引山地,南は中央構造線に沿う高見山地,朝熊(あさま)山地で限られる。海岸線は単調で,遠浅の砂浜海岸である。海岸線に沿って狭い浜堤と後背湿地をもつ沖積平野が南北に連なり,山麓の段丘や扇状地群と接している。北端には木曾川,長良川によって形成された輪中地帯,揖斐(いび)川の三角州,鈴鹿川,岩田川,雲出(くもず)川,櫛田川,宮川などの諸河川によって開析・堆積された段丘,扇状地が連なっている。年平均気温は14~15℃,年降水量は1700~2000mm,山沿いでは積雪をみるが海岸寄りに南下するほど温和な気候である。歴史的には皇大神宮の伊勢遷宮,壬申の乱,斎宮の設置など畿内の勢力との結びつきが強い。中世にも伊勢平氏の拠点であり,室町時代にも南朝方の北畠氏の勢力圏であった。沖積低地は伊勢米の産地であるが,南部では施設園芸も盛んである。宮川北西岸の伊勢たくあん,多気郡のイセイモ,松阪の牛肉などは特産品として名高い。丘陵地帯では樹木農業が盛んで,水沢,亀山,飯南,飯高の伊勢茶,石薬師,高野尾の苗木やサツキ,多度,多気,山城,久居のミカンやナシなどがある。沿岸漁村ではノリ養殖のほか,ハマグリ,アオヤギなどの採貝漁業,カタクチイワシ,アナゴ,エビ,カニなどの網漁業が行われている。県内の都市の多くがこの平野にあり,旧東海道や参宮街道に沿って桑名,四日市,鈴鹿,津,松阪,伊勢などを中心に工業化が進められている。交通はJR関西本線,紀勢本線,近鉄各線,三岐鉄道,国道1号,42号線,名阪国道,名四国道などが通過し,名古屋,大阪との結びつきが強い。海の玄関は四日市港で松阪港,津港がこれに次ぐ。
執筆者:田中 欣治
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
三重県東部、伊勢湾に面し、ほぼ南北に細長い海岸平野。北は木曽(きそ)川デルタに始まり、南は櫛田川(くしだがわ)に沿う中央構造線に至る。中央の津、松阪あたりで内陸へくびれ、南部は東へ大きく湾曲した海岸線をもつ。南北ほぼ90キロメートル、東西15~25キロメートルで、内陸は鈴鹿山脈(すずかさんみゃく)を構成する傾動地塊の急斜面と、その南に続く高見山地、紀伊山地でくぎられる。山麓(さんろく)に扇状地、段丘が発達し、海岸に沿って、北から員弁(いなべ)、鈴鹿、安濃(あのう)、雲出(くもず)、櫛田、宮川などの河川が形成した沖積地が展開する。コシヒカリを中心とした稲作が盛んで、イチゴなどの施設園芸が行われる。また、臨海地域は工業地帯となっている。三重県の主要部をなし、県下14市のうち桑名、四日市、鈴鹿、亀山(かめやま)、津、松阪、伊勢の7市が集まる。JRの紀勢本線、関西本線、名松(めいしょう)線、参宮線、近畿日本鉄道の名古屋線、大阪線、山田線、湯の山線、鈴鹿線、伊勢鉄道、国道1号、23号などが走っている。
[伊藤達雄]
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