三重県中部を流れる川。三重・奈良県境,紀伊山地の高見山(1248m)に源を発してほぼ東流後,北流して松阪市北東部で伊勢湾にそそぐ。幹川流路延長85km,全流域面積461km2。ほぼ川に沿って和歌山街道(現,国道166号線)が通り,紀伊半島を横断する交通路として紀州藩主の参勤交代路などに利用された。上・中流の河道は西南日本を外帯と内帯に区分する中央構造線にほぼ沿い,両岸には河岸段丘がよく発達している。上流は渓谷美を中心とする香肌峡(かはだきよう)県立自然公園の景勝地であり,林業を生業とする山林地域である。川俣(かばた)谷と呼ばれた上流部は,近世以来,伊勢茶の産地として知られる。下流部は伊勢平野で伊勢米の産地であり,かつて伊勢商人の活動の基盤であった松坂木綿の産地でもあった。下流左岸は沖積低地で,水田が開かれて条里遺構を残すが,右岸は自然堤防の高燥地である。かつては水運が盛んで,相可(おうか)などの河港が発達し,相可の対岸の射和(いざわ)は伊勢おしろいの産地,商人の町として栄えた。
執筆者:藤本 利治
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三重県の中央部をほぼ東流して伊勢(いせ)湾に注ぐ川。一級河川。奈良県境の高見山地西部や台高山脈(だいこうさんみゃく)北部を源流として東に向かって流れ、伊勢平野に流入してからは向きを北東に変え、松阪市東部で伊勢湾に注ぐ。延長87キロメートル、流域面積436平方キロメートル。紀伊半島を横断する中央構造線に沿う河川として知られる。古生代の長瀞(ながとろ)変成岩類からなる山を刻み、中流では香肌峡(かはだきょう)の峡谷をつくる。近世末までは水運があり、中流左岸の射和(いざわ)と対岸の相可(おうか)間には渡船があって、それぞれ宿として栄えた。和歌山と松阪を結ぶ紀州街道が高見峠を越えて河谷沿いに通じ、伊勢参宮や参勤交代路として宿駅も発達した。
[伊藤達雄]
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