紀斉名(読み)きのただな

精選版 日本国語大辞典 「紀斉名」の意味・読み・例文・類語

き‐の‐ただな【紀斉名】

  1. 平安中期の漢詩人。本姓田口氏。橘正通の弟子となり紀伝道に学ぶ。従五位上式部少輔兼大内記に至る。大江以言とともに文才を並び称せられ、漢詩の総集「扶桑集」を編纂した。天徳元~長保元年(九五七‐九九九

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改訂新版 世界大百科事典 「紀斉名」の意味・わかりやすい解説

紀斉名 (きのただな)
生没年:957-999(天徳1-長保1)

平安時代の詩文家。本姓は田口,のち紀氏に改めた。橘正通について学び,尾張掾のとき対策に及第し,一条天皇の長徳年中(995-999)大内記となって詔勅を作り,宋国返牒などを書いた。詩文は伝統を尊重して〈新意なし〉(大江匡房江談抄》)とも言われたが,〈極楽の尊を念じたてまつること一夜,山月正に円(まどか)なり。勾曲の会に先(さい)だてること三朝,洞花落ちなむとす〉(《和漢朗詠集》)など愛誦された句も多い。漢詩集《扶桑集》を編纂し,大江匡衡との詩病論争は有名。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紀斉名」の意味・わかりやすい解説

紀斉名
きのただな

[生]康保3(966)?
[没]長保1(999).12.15.
平安時代中期の漢詩人。旧姓を田口といい,のちに紀氏に改めた。橘正通に学んで対策 (たいさく) に及第し,式部少輔や大内記などに任じられた。一条天皇の頃の名儒として知られ,大江以言 (これとき) と拮抗するといわれた。彼の詩文は伝統を重んじて新意に乏しいと評されているが,その詩句章句朗詠によって人々に親しまれ,その文才は大江匡衡 (まさひら) との間に行われた省試詩判 (しょうししはん) をめぐっての論争によって知ることができる。その著『紀斉名集』 (999) は現存しないが,漢詩集『扶桑集』を編集した功績は大きく評価される。

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朝日日本歴史人物事典 「紀斉名」の解説

紀斉名

没年:長保1.12.15(1000.1.24)
生年:天徳1(957)
平安中期の文人。本姓は田口,のち改姓。橘正通に師事し,永延年間(987~89)に方略試(官人登用試験)に及第。のち大内記,式部少輔などを歴任。名文家として知られ,「当時(一条朝)の名儒」と称される一方,大江匡房からその文体について古典を尊重しすぎて新意が全くないと酷評される(『江談抄』)など,悪評も目立つ。長徳3(997)年,延喜以後7朝の漢詩を『扶桑集』(12巻)として編集しているが,これについても匡房は批判的。この『扶桑集』は没した翌年,妻から時の左大臣藤原道長に献上されている。家集『斉名集』は藤原通憲の蔵書目録(12世紀前半)に載るが現存せず,その詩文は『本朝文粋』などに収められる。一説に享年は34とも。

(瀧浪貞子)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀斉名」の意味・わかりやすい解説

紀斉名
きのただな
(957―999)

平安中期の漢詩人。本姓は田口、のちに紀姓に改める。永延(えいえん)年間(987~989)に方略試に及第。長徳(ちょうとく)年中(995~999)大内記当時、漢詩集『扶桑集(ふそうしゅう)』の編纂(へんさん)にあたった。ただし生前には完成せず、死後、藤原道長によって奏覧に供された。『紀斉名集』1巻があったが現存しない。作品は『本朝文粋(ほんちょうもんずい)』に賦(ふ)、詩序、対策(官吏登用試験の答案)などが、『和漢朗詠集』『類聚(るいじゅう)句題抄』『江談抄(ごうだんしょう)』『新撰(しんせん)朗詠集』などに詩が、断片も含めて60余首残っている。表現は平易で、白楽天の影響が強くうかがえる。

[金原 理]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「紀斉名」の解説

紀斉名 きの-ただな

957-1000* 平安時代中期の官吏,漢詩人。
天徳元年生まれ。橘正通(まさみち)にまなび,対策(官吏登用試験)に及第。一条天皇の長徳年間に大内記となり,詔勅をつくり,漢詩集「扶桑集」の編集にあたった。「本朝文粋」「和漢朗詠集」に詩文をのこしている。長保元年12月15日死去。43歳。本姓は田口。名は「まさな」ともよむ。

紀斉名 きの-まさな

きの-ただな

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世界大百科事典(旧版)内の紀斉名の言及

【本朝文粋】より

…14巻。詩中心の総集《扶桑集》(紀斉名(ただな)撰)に対して,日本最初の文中心の総集。編者は藤原明衡(あきひら)。…

※「紀斉名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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