(読み)チュウ

デジタル大辞泉 「紂」の意味・読み・例文・類語

ちゅう〔チウ〕【紂】

古代中国いん王朝最後の王。名はしん妲己だっき溺愛できあいし、酒色にふけって政治を乱し、忠臣比干ひかんを殺すなど、暴虐限りを尽くして武王に滅ぼされた。古来けつ王とともに暴君の代表とされる。殷紂。紂王

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「紂」の意味・読み・例文・類語

ちゅうチウ【紂】

  1. 中国、殷王朝最後の王。名は辛(しん)。紂は諡(おくりな)。夏の桀(けつ)とならんで悪王の代表とされる。愛妃妲己(だっき)におぼれ、酒池肉林による長夜の宴にふけり、良臣を殺し、民を苦しめたという。後に周の武王に討たれた。生没年未詳。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「紂」の読み・字形・画数・意味


9画

[字音] チュウ(チウ)
[字訓] しりがい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は寸。寸はおそらく丑(ちゆう)の略形で、肘(ちゆう)と同声。指をまげ、強く引きしめる意がある。〔説文〕十三上に「馬の(しりがい)なり」とし、肘の省声とするが、丑の省略形とみるのがよい。殷の最後の王である帝辛の諡(おくりな)とされるが、〔書、無逸〕に「殷王受(ちう)の亂」とあり、他の諸にも「王受」とあるので、受がその名、紂は音借の字である。

[訓義]
1. うまのしりがい。
2. 殷王の名。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕紂 ウマノアシホタシ

[語系]
紂diu、受zjiuは声近く、紂はその仮借音。〔逸周書、諡法解〕に「殘にして善を捐(す)つるを紂と曰ふ」、〔呂覧、功名、注〕に「仁を賤しみ累多きを紂と曰ふ」とするが、いずれも紂の字義に関しないことである。

[熟語]
紂棍
[下接語]

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「紂」の意味・わかりやすい解説

紂 (ちゅう)
Zhòu

中国,殷の最後の王である帝辛のこと。受ともいう。前11世紀の人。紂というのはその悪行から人々がつけた呼び名だとされる。暴虐な政治によって殷王朝を滅ぼした。夏のけつ)王と並んで古代の悪王の代表とされる。《史記》殷本紀によれば,その力は猛獣を取りひしぎ,その知は臣下の諫言を言いまかせるといった,人並みはずれた資質を持っていた。妲己(だつき)を愛し〈酒池肉林〉の豪奢な長夜の宴を行ったとされるが,単なる淫乱君主というよりも,すぐれた資質ゆえに自信過剰となって暴虐を行ったのだとされている。重税を課し,炮烙(ほうらく)の刑などの酷刑を行ったため人心が離反し,周の武王に牧野(ぼくや)の戦で敗れ,宝玉の衣を着て,火に投じて死んだ。なお殷末の卜辞資料によれば,帝辛は積極的に東夷(人方)征伐を行い,山東省一帯の経営に力を注いでいるすきに,西方から攻めこんだ周の軍に都をおとされたものらしい。その時期の甲骨文の書体も謹厳で,淫靡の風はうかがわれない。紂王の悪行とされるものの多くは,後世の付加なのであろう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「紂」の意味・わかりやすい解説

紂【ちゅう】

古代中国,王朝の最後の君主。殷の記録では,辛または受と記され,紂というのはその悪行から人びとがつけた呼名とされる。才力すぐれた君主で東方に大領土を開いたと伝えるが,《史記》等では,妲己(だっき)を愛し,悪政のために民心離反し,周の武王に討たれて滅んだとする(前1050年ごろ)。夏の(けつ)と並称される暴君の代表者。
→関連項目伯夷・叔斉

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android