書写した経巻を寺社に奉納して信仰の深さをしめし,神仏の加護や故人の冥福を祈ること。巡礼者がおこなう場合は,たとえば日本回国六十六部聖(ひじり)ならば,《法華経》六十六部(1部は8巻)を写経し,これを諸国一宮(いちのみや)に奉納して歩く。したがってこれを経聖(きようひじり)という。しかしのちにはこれを忘れて,西国三十三所観音霊場巡礼や四国八十八ヵ所観音霊場遍路のように,仏前で経巻を読誦することを納経というようになった。このとき寺から納経受取という書付と判をもらった。これが帳面になって,寺の本尊と参詣の年月日を記入して判をもらうようになったのが,納経帳の起源である。ところが最近では,仏前で経巻も読まずに判をもらって歩く納経や,納経札を堂舎にはる納経がおこなわれている。納経の方法にも寺に奉納する納経のほかに,書写の経巻を聖地に埋納する埋経もあったが,まれには書写経巻を池に沈めたり,水に流すものもあり,納経が経巻の保存のためでないことがわかる。
執筆者:五来 重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
『法華経(ほけきょう)』などの経典を寺社に奉納すること。写経の功徳(くどく)を霊場信仰に結び付けて高める方法で、12世紀後半ごろに始まり、多くは勧進聖(かんじんひじり)がかかわった。先行する経塚(きょうづか)への埋経と一連の関係がある。平清盛(きよもり)一門が厳島(いつくしま)社に奉納した平家納経は、『法華経』を中心とする装飾経の優品でもある。同じころから転読に供する『大般若経(だいはんにゃきょう)』を寺社に施入することも多くなる。しかし代表的なのは六十六部如法経(にょほうきょう)の方式である。これは12世紀末に初見し、全国66国の霊場に『法華経』を埋納したり、写経や読誦(どくじゅ)を奉納する回国行として発達し、納経先の寺社からは請取(うけとり)状が出された。これが16世紀に急増、近世には、他の霊場巡礼とともに簡便化し、ただ霊場に参詣(さんけい)するのを納経といったり、金品を納めて寺社から三宝印(さんぼういん)、寺印を受け、これを集めた集印帳を納経帳というに至った。
[菅原昭英]
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