日本の事業所や企業の活動の状態や産業構造を明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の実施のための母集団情報を提供することを目的とした統計調査。総務省統計局が実施している。調査対象の全体を調査することから「センサス」とよばれている。経済構造実態調査、工業統計調査とともに基幹統計の経済構造統計を構成している。ここで、事業所とは経済活動の場所ごとの単位をさし、(1)経済活動が、単一の経営主体のもとで一定の場所(1区画)を占めて行われていること、(2)物の生産やサービスの提供が、従業者と設備を有して、継続的に行われていること、という二つの条件を満たしたものをさす。一方、企業とは、事業・活動を行う法人(外国の会社を除く)および個人経営の事業所をさす。
経済センサスは、事業所・企業の基本的構造を明らかにする「経済センサス―基礎調査」と、事業所・企業の経済活動の状況を明らかにする「経済センサス―活動調査」の二つから成り立っている。
基礎調査では、民間事業所のうち新規把握事業所について、名称および電話番号、所在地、活動状態、従業者数、おもな事業の内容、業態、開設時期、単独事業所・本所・支所の別、組織全体の年間総売上(収入)金額などを調査している。2020年(令和2)12月25日時点の基礎調査では、日本の民営事業所639万8912のうち、新規把握事業所は118万7518であることが明らかになった。なお、新規把握企業等については、企業産業分類、売上(収入)金額などを調査している。
活動調査では、基礎調査の項目に加えて、売上高と事業別売上金額、費用総額とおもな費用項目と金額、設備投資の有無などについて調査している。2015年時点の活動調査では、日本の売上金額1624兆7143億円(2011年と比べると21.7%の増加)、付加価値額は289兆5355億円(同18.3%の増加)となったことが明らかになった。ここで、付加価値額とは、売上高から費用総額を差し引いて、給与総額と租税公課を加えたものとして定義している。
基礎調査の結果は前述のとおり、各種統計調査の母集団情報を提供することなどで役だっている。活動調査の結果は、国民経済計算(SNA)の推計や産業連関表の作成に利用されている。2011年の活動調査の結果とそれをもとに作成された2011年産業連関表は、2008SNA2011年基準のSNAの推計に用いられた。また、2015年の活動調査の結果は、2019年6月に公表された2015年産業連関表の作成に利用され、2020年末に公表された2008SNA2015年基準のSNAの推計に用いられた。なお、2015年産業連関表において、従来、すべて中間投入とされていた建設補修(建築)の産出額のうち、改装・改修(リフォーム・リニューアル工事)について総固定資本形成に計上する変更が行われた。この変更は、2008SNA2015年基準の国内総生産(GDP)の金額を過去にさかのぼって増加させることにつながっている。
経済センサスの実施が提言されたのは、2005年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(骨太の方針)であった。産業分野ごとに、各府省によりそれぞれ異なる年次および周期で実施されている大規模統計調査を統廃合するとともに、経済全体に占める比率が高まっているサービス分野の統計不足を解消することが目的であった。企業や事業所を対象とした統計調査には、1947年(昭和22)から始まった「事業所・企業統計調査」があり、2006年まで調査が行われたが、2009年に経済センサスに統合された。
[飯塚信夫 2021年5月21日]
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