網漁業にあっては,刺網類などのように自家労働力によって経営できるものと,地引網や建切網,定置網のように多数の労働力を必要とし共同経営されるものとがある。網組とはおもに後者の網漁における共同経営体およびその労働組織をいう。これには漁場占有利用などの関連からいくつかの形態がある。村落の共同体的な性格を反映しているものとして村網(地下網(じげあみ),百姓網)がある。網組構成員である百姓が漁場占有利用権の持分に応じて出資するとともに労働力を提供して網漁を経営したものである。また伊豆内浦の大網漁のように,網組が網度持(あんどもち),津元,網子によって構成されたものもあった。網度持は経営費を出資し,その収益の配当をうける共同経営者で,津元は網度持のなかの実質的な経営者であり,網子は労働力のみを提供する者であった。網度とは網組そのものを指すと同時に,網組のあげる収益権を示す株であった。それゆえ限られた範囲でそれは譲渡売買されることもあった。このように内浦の大網では網度株が旧来の名主土豪層と思われる一部の長百姓層に独占されたことから,中世的特色をもった網組であったといえる。近世の一般的な網組は網元,網子の構成になるものであった。特に農業と結びついた九十九里のイワシ地引網に代表されるように,経営者である網主は村の高持百姓で,名主,組頭などを兼ねるものが多かった。網元は自家の小作人などを漁業労働者である網子として雇った。したがって網元と網子の関係は現在のような経営者対労働者という近代的労働契約上の関係ではなく,封建的隷属関係の上に立つものであった。
→網漁業
執筆者:辻井 善弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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