改訂新版 世界大百科事典 「総定員法」の意味・わかりやすい解説
総定員法 (そうていいんほう)
国の行政機関の定員の最高限度を定めた〈行政機関の職員の定員に関する法律〉の通称。同法は1969年に制定され,その後の国の定員管理について,基本的な法律となっている。第2次大戦後,定員管理についての法制度は変化してきているが,69年当時は,各省別の定員を個別に各省設置法で定めることとなっていた。しかし,当時の制度においては定員の増加を十分に統制できず,また弾力的な定員管理ができないなどの問題が指摘され,総定員法が制定された。同法は行政機関の定員の最高限度を1967年度末の定員であった50万6571人(1985年度から50万9508人に変更)と定め,各省別の定員は政令で定めることとした。つまり,行政部に各省別の定員を決定する権限を与え,行政需要の変動に応じた弾力的な定員管理を行うこととするとともに,総定員数を同法で定め,安易な増加を抑制することとした。同法の下で,行政需要の減退している行政部門の定員を削減し,そのようにして生じた定員を行政需要が増加している部門に充てることにより,全体の定員の増加を抑制するとの定員管理が行われてきている。
同法については,総定員の抑制に貢献してきている点が評価されるとともに,行政事務の変動に対応して定員を再配置するというよりも,総定員の抑制を通じて事務の適正化を促すとの転倒した行政管理の方法に重点を置いているとか,国会の統制が空洞化するとかの問題が指摘される。
執筆者:橋本 信之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報