羽黒山(読み)ハグロサン

デジタル大辞泉 「羽黒山」の意味・読み・例文・類語

はぐろ‐さん【羽黒山】

山形県中西部の山。標高414メートル。月山がっさん湯殿山とともに出羽三山の一。山頂付近に出羽神社がある。古くから修験道の霊場。

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精選版 日本国語大辞典 「羽黒山」の意味・読み・例文・類語

はぐろ‐さん【羽黒山】

  1. 山形県鶴岡市東方の山。月山・湯殿山とともに出羽三山の一つに数えられる。鎌倉時代から羽黒派山伏の根拠地として知られ、頂上に出羽三山合祭殿がある。標高四一四メートル。
    1. [初出の実例]「出羽国にははぐろさんとて、山社多きところなれば」(出典:義経記(室町中か)七)

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日本歴史地名大系 「羽黒山」の解説

羽黒山
はぐろさん

西のはらい川と東の立谷沢たちやざわ川に挟まれた幅約四キロの裂片地塊で、東田川郡羽黒町の東北部を占める。祓川の西方、手向集落は古くからの門前集落で、近世には多くの三山詣の行者たちで賑いをみせた。手向から表参道は約一・七キロ、二千五〇〇段に近い石段で、両側には樹齢一五〇―五〇〇年のスギ並木(国指定天然記念物)が続く。表参道三の坂より南へ下った南谷みなみだに(県指定史跡)は近世初期の羽黒山別当天宥が住した所で、芭蕉が来泊したのも南谷の別院であった。芭蕉は南谷を詠んで「有難や雪をかほらす南谷」の句を残し、また天宥を追悼して「其玉や羽黒にかへす法の月」と吟じている(おくのほそ道)。山内には五重塔(国宝)・三神合祭殿・桃山風書院造の斎館、開祖と伝える蜂子皇子の陵墓、歴史博物館などがあり、現在は出羽三山神社が管理する。五重塔近くの爺スギや南谷のカスミザクラも国指定天然記念物。山麓には羽黒国民休暇村や羽黒スキー場があり、訪れる観光客も多い。

現在、羽黒山頂に霊祭殿があるが、これは本来羽黒山が祖霊の集まる場(端山)であったことを示し、羽黒という名称も端(羽)山と黒森山とに由来するものであろう。このような性格をもつ羽黒山をのち仏教がとり込んでいき、やがて羽黒山寂光じやつこう寺として山内に多数の伽藍と寺坊が建立され、八宗などを兼学する寺僧や修験者をかかえ、全山を統轄する総別当や治安維持にあたる長吏、そして政所などの職・機構が生れた。さらに広大な寺領と東国を中心に網の目のように張りめぐらされた末派修験と信者たちが結んだ講が成立し、在地領主層とは異なる有力な宗教権力となっていった。このような地方有力寺院としての羽黒山の成立は一二世紀後半頃と考えられる。例えば将軍足利義教が永享二年(一四三〇)八月一日と刻された懸仏絵図を寄進したのは、鎌倉公方足利持氏と衝突した永享の乱の際に、鎌倉を背後から牽制するために羽黒山を懐柔する意図があったことは明白で、一山成立後の羽黒山の政治的・経済的・宗教的勢力をぬきに中世の奥羽史を考えることはできない。なお出羽神社(三山神社のうち)は式内社いでは神社に比定され、出羽国の国魂神社であったと考えられる。

〔羽黒山寂光寺〕

寂光寺とは一山の総称で、永禄三年(一五六〇)書写の「羽黒山睡中問答並縁記」によれば瀧水りゆうすい寺・中禅ちゆうぜん寺・千勝せんしよう寺・機乗きじよう寺・賀我がが寺・嘉祥かしよう寺・禅定ぜんじよう(いずれも現廃寺)の七ヵ寺と、別寺建立二寺(福王寺・如法寺)からなっていて、山中三千五〇〇坊と称された。


羽黒山
はぐろさん

小野おの川の上流右岸、新所しんじよ町の北方に位置する。標高二九〇・八メートル。全山奇岩怪石に覆われた岩山で、「満済准后日記」正長二年(一四二九)三月六日条に、関氏の支城羽黒城があったとみえる。大永四年(一五二四)山麓の正法しようぼう寺開基関盛貞の招きでこの地を訪れた連歌師宗長は、「宗長手記」に「むかし山寺ありけるとなむ。鉾楯の用意にや。をのつからの巌を楯、矢倉門は石を棟柱。四方五十町。谷めくりてみゆ。凡数万軍兵とりむかへるとも。おそるへくもみえす」と記している。永禄一〇年(一五六七)同寺滞留の大徳だいとく(現京都市北区)清庵和尚を訪ねた紹巴は、和尚とともに当山に参詣、羽黒影向の跡をたたえている(紹巴富士見道記)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羽黒山」の意味・わかりやすい解説

羽黒山
はぐろさん

山形県北西部、出羽山地(でわさんち)西部の丘陵性の山頂一帯をさす。標高414メートル。鶴岡市(つるおかし)と東田川郡庄内町(しょうないまち)にまたがる。新第三紀の泥岩、頁(けつ)岩からなり、南部では月山(がっさん)の泥流がのる。西側の祓(はらい)川、東側の立谷(たちや)川の谷が丘陵を深く刻み、南北に長い地塊状を呈す。月山、湯殿山(ゆどのさん)とともに出羽三山と称し、古くから羽黒修験(しゅげん)の霊場として繁栄してきた。山頂付近に出羽(いでは)神社が鎮座し、月山神社、湯殿山神社をあわせた三神合祭殿(鐘楼とともに国指定重要文化財)がある。広大な境内には国宝の五重塔、羽黒山修験本宗の本山荒沢寺(こうたくじ)など神仏習合時代の名残(なごり)をとどめる建造物や旧跡が多い。また、推定樹齢1000年を超えるといわれる国指定天然記念物の爺スギ、国の重要文化財の梵鐘(ぼんしょう)、山頂鏡池出土の銅鏡(国指定重要文化財)などを収めた出羽三山歴史博物館もある。西麓(せいろく)の手向(とうげ)は羽黒山の門前集落で、重要文化財の正善院黄金(こがね)堂があり、現在も40近い宿坊が軒を連ねる。手向からの表参道は約1.7キロメートル、樹齢300~500年の特別天然記念物のスギ並木が続くなかを約2500段の石段を登って山頂に至る。手向から山頂までの有料道路もあり、さらに山頂から月山八合目までの自動車道路が通じ、夏季は定期観光バスが運行される。磐梯(ばんだい)朝日国立公園の一部で、南麓にはスキー場や休暇村、温泉などがある。

[中川 重]

『『出羽三山・葉山』(1975・山形県総合学術調査会)』


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改訂新版 世界大百科事典 「羽黒山」の意味・わかりやすい解説

羽黒山 (はぐろさん)

山形県北西部の山。標高414m。鶴岡市に属する。月山(がつさん),湯殿山とともに出羽三山とよばれる。月山の北麓にあたり,新第三紀層の基盤上に月山の泥流が乗りあげた丘陵で,山頂には出羽三山を合祀する出羽神社がある。平安時代末期から鎌倉時代にかけて羽黒修験(羽黒派)の拠点として栄えた。伝承によれば,羽黒山を開いたのは崇峻天皇の子蜂子皇子(能除太子)で,役行者(えんのぎようじや)が中興したといい,山名も皇子を導いた3本脚の烏にちなむというが,このような伝承は,羽黒開山が,修験の祖といわれる役行者よりも古いことを主張するためにいいだされたことと考えられる。羽黒山全域に及ぶ広大な社地内には,五重塔,鐘楼,霊祭殿,斎館などがあり,神仏習合時代のなごりをとどめる。山麓にある門前町手向(とうげ)から山頂までの約1.7kmは2446段の石段の参道で,両側には樹齢300~500年の杉並木(特天)が続いている。山頂へは手向から有料道路が通じる。南麓の峰中堂付近は第2次大戦後に羽黒開拓地となったが,立地条件が厳しいため下山する者が多く,1976年には国民休暇村が開設された。
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百科事典マイペディア 「羽黒山」の意味・わかりやすい解説

羽黒山【はぐろさん】

山形県鶴岡市にある山。出羽三山の一つで,標高414m。平たんな山頂にある出羽三山神社の出羽(いでは)神社は,古来羽黒山山伏で知られる修験(しゅげん)道場。五重堂,黄金堂があり,山麓の手向(とうげ)から杉並木(特別天然記念物)の並ぶ石段の参道が通じる。
→関連項目スギ(杉)鶴岡[市]羽黒[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羽黒山」の意味・わかりやすい解説

羽黒山
はぐろさん

山形県北西部にある山。標高 414m。月山 (1984m) ,湯殿山 (1500m) とともに出羽三山と呼ばれる。古くから羽黒山伏の根拠地で,出羽三山の合祭殿である出羽神社がある。境内には池中納鏡の古鏡などを所蔵する出羽三山歴史博物館,蜂子皇子御陵などがある。平将門創建と伝えられる五重塔は国宝,参道のスギ並木は特別天然記念物,爺スギ,南谷のカスミザクラは天然記念物。磐梯朝日国立公園に属する。五重塔付近から手向 (とうげ) の随神門までの長い石段は壮観である。

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事典・日本の観光資源 「羽黒山」の解説

羽黒山

(栃木県河内郡上河内町)
とちぎの景勝100選」指定の観光名所。

羽黒山

(山形県鶴岡市・西村山郡西川町)
出羽三山」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の羽黒山の言及

【出羽三山】より

…山形県のほぼ中央部,朝日山地の北端部に位置する月山(がつさん)(1979.5m),湯殿山(1500m),羽黒山(436m)の三山をあわせていう。月山と湯殿山は近接しているが,羽黒山は両山の北約20kmに位置する。…

【出羽神社】より

…〈いではじんじゃ〉ともいう。山形県東田川郡羽黒町,羽黒山上に鎮座。旧国幣小社。…

【羽黒派】より

…修験道の一派。山形県の羽黒山を本山とする。崇峻天皇の子の蜂子(はちす)皇子を開祖と称し,苦行性と古態を残すことで知られる。…

※「羽黒山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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