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京都府南西部、京都盆地と亀岡盆地との間の大枝(おおえ)山山塊にある峠。標高193メートル。大枝峠ともいう。江戸時代まで京都と丹波(たんば)方面を結ぶ唯一の交通路として山陰道が通じ、交通、軍事上の要衝として、679年(天武天皇8)すでに大江関が置かれたと伝えられる。一帯は大枝山とよばれ、小式部内侍(こしきぶのないし)の「大江山いく野の道の……」の大江山は、この老ノ坂をさすとも解され、明智光秀(あけちみつひで)もここから本能寺攻めに向かった。明治になって山陰本線が開通し峠の交通的価値は一時衰えたが、昭和に入りふたたび重要な交通路となった。現在では旧道にかわって国道9号がトンネルによって通じ、自動車の往来が頻繁である。
[織田武雄]
…山城国乙訓郡(現,京都市西京区大枝)の関所。古代の山陰道は都と丹波以西8ヵ国の国府を結ぶが,奈良・平安の両時代とも,山城・丹波国境の大枝山(現,老ノ坂峠)を越えて丹波国に入った。平安京の時代には大枝山は,逢坂・竜華・山崎・宇治・淀などと並ぶ交通の要衝で,山城国五道,山城国四堺の一つと呼ばれ,山の手前に関所が設けられた。…
…酒呑童子の名称は,《大江山絵詞》では〈酒を深く愛する者〉ゆえの名となっているが,そのストーリーが中国の白猿伝説の影響を受けているとみて,〈斉天大聖(チイーテイエンダーシヨン)〉の名を借りたのでは,とする説も出されている。大江山は元来は都のあたりにほど近い老ノ坂であったらしいが,《大江山絵詞》では丹波・丹後の千丈ヶ嶽の大江山,《酒伝童子絵巻》では近江伊吹山となっている。大江山に鬼神がこもるとする観念は,老ノ坂が都(山城国)と外界を隔てる境界の性格をもった場所であったこと,疫神の侵入をさえぎり都の安寧と清浄を確保する四境祭の舞台であったこと,多くの盗賊・強盗が出没し,そのすみかとなったこと,などを背景として分析されるべきであろう。…
※「老ノ坂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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