老ノ坂(読み)オイノサカ

デジタル大辞泉 「老ノ坂」の意味・読み・例文・類語

おい‐の‐さか【老ノ坂】

京都市亀岡市との間にある峠。山陰道京都への入り口。標高193メートル。老齢を重ねることに掛けても用いる。
[補説]「大枝おいの坂」とも書いた。

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精選版 日本国語大辞典 「老ノ坂」の意味・読み・例文・類語

おい【老】 の 坂(さか)

  1. さまざまの苦難に耐えながら次第に年老いていくことを、坂を上るのにたとえていう語。
    1. [初出の実例]「君を祈る年の久しくなりぬれば老のさかゆく杖ぞうれしき〈慶暹〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)賀・四二九)

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日本歴史地名大系 「老ノ坂」の解説

老ノ坂
おいのさか

京街道(山陰道)大枝おおえ山を丹波から山城へ越える所、王子おうじから山城の沓掛くつかけ(現京都市西京区)に至る間をいう。大枝山は「万葉集」をはじめとして「大江山」とも記され、古歌や説話などでは老ノ坂のことをさすことが多い。酒呑童子説話の大江山ともいい、山腹にある円墳はその首塚と称されるが、酒呑童子の大江山は丹波と丹後の境の大江山とする説が有力である(加佐郡の→大江山

古来、軍事交通上の要衝であり、「続日本後紀」承和九年(八四二)七月一七日条は、伴健岑・橘逸勢らの謀反(承和の変)を記し、宮門ならびに内裏の守りを固めるとともに「亦令山城国五道」として「清原真人秋雄守大枝」と記している。


老ノ坂
おいのさか

[現在地名]西京区大枝沓掛町

山陰道、丹波と山城との国境の峠及び沓掛くつかけから峠に至る道をいう。「山州名跡志」は大枝おおえ大井おおいと読まれ、老の字があてられたとする。「続日本後紀」承和九年(八四二)七月一七日条には「大枝道」とみえる。下って建武三年(一三三六)二月三日の軍忠状に「責付丹州追山畢」(忽那文書)とあり、また「明徳記」上巻に「若敵桂川ヲ越テ老ノ山手向ニ馳上テ相支ヘン時ハ」と出る。

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百科事典マイペディア 「老ノ坂」の意味・わかりやすい解説

老ノ坂【おいのさか】

山陰道(京街道)が大枝(おおえ)山を山城から丹波へ越える国境の峠およびその前後の坂をいう。大枝山は《万葉集》をはじめとして〈大江山〉とも記され,古歌や説話などでは老ノ坂のことをさすことが多い。酒呑(しゅてん)童子説話の大江山ともいい,山腹にある円墳はその首塚と称されるが,酒呑童子の大江山は丹波・丹後境の大江山とする説が有力。老ノ坂(大枝山)は古来,軍事交通上の要衝であり,ことあるごとに守りが固められた。また齢を重ねることを坂を登ることにたとえて,〈老ノ坂を越える〉という表現は,謡曲など文芸に多用された。→大枝山関

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改訂新版 世界大百科事典 「老ノ坂」の意味・わかりやすい解説

老ノ坂 (おいのさか)

老ノ阪とも書く。京都盆地亀岡盆地との間の分水界の山地および峠。老ノ坂山地西山)はポンポン山(679m)を最高峰とする古生層の山地で,山城・丹波両国の境界をなす。古くは大枝(おおえ)山または大江山とも呼ばれ,源頼光が酒呑童子を退治した伝説が残る。京都市と亀岡市の境の老ノ坂峠(260m)は山陰道の要衝であり,山城の西の重要な出入口で,近世には宿場町ができていた。山陰道は現在国道9号線となり,峠下を老ノ坂トンネルが通じる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「老ノ坂」の意味・わかりやすい解説

老ノ坂
おいのさか

京都府南西部、京都盆地と亀岡盆地との間の大枝(おおえ)山山塊にある峠。標高193メートル。大枝峠ともいう。江戸時代まで京都と丹波(たんば)方面を結ぶ唯一の交通路として山陰道が通じ、交通、軍事上の要衝として、679年(天武天皇8)すでに大江関が置かれたと伝えられる。一帯は大枝山とよばれ、小式部内侍(こしきぶのないし)の「大江山いく野の道の……」の大江山は、この老ノ坂をさすとも解され、明智光秀(あけちみつひで)もここから本能寺攻めに向かった。明治になって山陰本線が開通し峠の交通的価値は一時衰えたが、昭和に入りふたたび重要な交通路となった。現在では旧道にかわって国道9号がトンネルによって通じ、自動車の往来が頻繁である。

[織田武雄]

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世界大百科事典(旧版)内の老ノ坂の言及

【大枝山関(大江山関)】より

…山城国乙訓郡(現,京都市西京区大枝)の関所。古代の山陰道は都と丹波以西8ヵ国の国府を結ぶが,奈良・平安の両時代とも,山城・丹波国境の大枝山(現,老ノ坂峠)を越えて丹波国に入った。平安京の時代には大枝山は,逢坂・竜華・山崎・宇治・淀などと並ぶ交通の要衝で,山城国五道,山城国四堺の一つと呼ばれ,山の手前に関所が設けられた。…

【酒呑童子】より

…酒呑童子の名称は,《大江山絵詞》では〈酒を深く愛する者〉ゆえの名となっているが,そのストーリーが中国の白猿伝説の影響を受けているとみて,〈斉天大聖(チイーテイエンダーシヨン)〉の名を借りたのでは,とする説も出されている。大江山は元来は都のあたりにほど近い老ノ坂であったらしいが,《大江山絵詞》では丹波・丹後の千丈ヶ嶽の大江山,《酒伝童子絵巻》では近江伊吹山となっている。大江山に鬼神がこもるとする観念は,老ノ坂が都(山城国)と外界を隔てる境界の性格をもった場所であったこと,疫神の侵入をさえぎり都の安寧と清浄を確保する四境祭の舞台であったこと,多くの盗賊・強盗が出没し,そのすみかとなったこと,などを背景として分析されるべきであろう。…

※「老ノ坂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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