考える(読み)カンガエル

デジタル大辞泉 「考える」の意味・読み・例文・類語

かんが・える〔かんがへる〕【考える/勘える】

[動ア下一][文]かんが・ふ[ハ下二]
知識や経験などに基づいて、筋道を立てて頭を働かせる。
判断する。結論を導き出す。「こうするのが正しいと―・える」「解決の方法を―・える」「よく―・えてから返事をする」
㋑予測する。予想する。想像する。「―・えたとおりに事が運ぶ」「―・えられないことが起こる」
㋒意図する。決意する。「留学しようと―・える」「結婚を―・える」
関係する事柄事情について、あれこれと思いをめぐらす。「周囲状況を―・えて行動する」「くよくよ―・えてもしかたがない」
工夫する。工夫してつくり出す。「新しいデザインを―・える」
問いただして事実を明らかにする。取り調べて罰する。
「―・へられつる事ども、ありつる有様、願をおこしてその力にてゆるされつる事など」〈宇治拾遺・八〉
占う。占いの結果を判断・解釈する。
「いまだかやうの事なし。いかがあるべきと―・へ申せ」〈平家・一一〉
[用法]かんがえる・おもう――ともに精神的な活動を表す語であるが、「考える」は知的に分析することであり、「思う」は情的、感覚的な心の働きや瞬間的な判断などを示すのに用いる。「クイズ答えを考える」とはいうが「思う」とはいわない。◇大音響を耳にしてすぐ口にするのは「雷が落ちたかと思った」であり、「考えた」ではない。◇「彼女のことを思う」は、思慕したり、心配したりすることを表すが、「彼女のことを考える」と言えば、より分析的理性的にその状況について思いめぐらすことを表す。「将来医師になろうと考えている」といえば具体的な手だてまで含めて計画していることであり、「思う」では漠然と希望しているだけという感じがする。
[類語]思う思い巡らすおぼし召す存ずる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「考える」の意味・読み・例文・類語

かんが・えるかんがへる【考・勘】

  1. 〘 他動詞 ア行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]かんが・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 ( 古くは「かむがふ」とも表記 )
  2. いくつかの物事をひきくらべて調べる。勘案する。
    1. [初出の実例]「更に人民(おほつたから)を校(カムカヘ)て、長幼(このかみおとと)の次第(ついで)、及び課役(おほせつかう)先後(さきのち)を知ら令むべし」(出典:日本書紀(720)崇神一二年三月(熱田本訓))
    2. 「毎度かつにのる先蹤をかんがふるに、夜うちにしかず」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
  3. 罪を問いただす。吟味して処罪する。勘当する。
    1. [初出の実例]「是の時に三輪君、小鷦鷯(をささき)、其の推鞫(カムカフルこと)苦みて頸を刺して死ぬ」(出典:日本書紀(720)舒明八年三月(図書寮本訓))
    2. 「いみじう腹立しかりてかんかへて滝口にさへわらはる」(出典:能因本枕(10C終)五八)
  4. (えき)によって吉凶を判断する。うらなう。
    1. [初出の実例]「宿曜の賢き、道の人にかんがへさせ給ふにも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. 「いるかは常に多けれども、いまだかやうの事なし。いかがあるべきとかんがへ申せ」(出典:平家物語(13C前)一一)
  5. 物事を、筋道を立てて思いはかる。あれこれと頭を働かせて判断する。思考をめぐらす。
    1. [初出の実例]「文を推(おしはか)り義を考(カムカフレハ)」(出典:法華義疏長保四年点(1002)一)
  6. 学びとる。学習する。学ぶ。
    1. [初出の実例]「我家の武を稽(カンガヘ)、詩哥の大概を学び」(出典:浮世草子・近代艷隠者(1686)二)
  7. 目的のものや、よい機会などをねらう。様子をうかがう。
    1. [初出の実例]「それから後は、おやぢの留守ばかりかんがへて蹴る」(出典:咄本・聞上手(1773)まり箱)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の考えるの言及

【心】より

… 心の問題を身体的局在説の迷路から解き放ち,思惟を本性とする固有の精神現象として定立したのはフランスのデカルトで,彼がいわゆる松果腺仮説を提出したのも,心身の相関をそれで説明しようとしたものにほかならない。心が固有の精神現象であるなら,その成立ちや機能を改めて考える必要があり,17世紀後半からの哲学者でこの問題に専念した人は多い。心を〈どんな字も書かれていず,どんな観念もない白紙(タブラ・ラサtabula rasa)〉にたとえた経験論のロック,心ないし自我を〈観念の束〉とみなした連合論のD.ヒューム,あらゆる精神活動を〈変形された感覚〉にすぎないと断じた感覚論のコンディヤックらが有名で,こういう流れのなかからしだいに〈心の学〉すなわち心理学が生まれた。…

※「考える」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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