腎症候性出血熱(読み)ジンショウコウセイシュッケツネツ(その他表記)Epidemic Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome

デジタル大辞泉 「腎症候性出血熱」の意味・読み・例文・類語

じんしょうこうせい‐しゅっけつねつ〔ジンシヤウコウセイ‐〕【腎症候性出血熱】

ハンタウイルス一種感染して起こる病気。野ネズミにつくダニ媒介される。5日ほど続く高熱皮膚発赤や出血斑、たんぱく尿や乏尿などの症状を呈する。HFRS(hemorrhagic fever with renal syndrome)。

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家庭医学館 「腎症候性出血熱」の解説

じんしょうこうせいしゅっけつねつりゅうこうせいしゅっけつねつ【腎症候性出血熱(流行性出血熱) Epidemic Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome】

[どんな病気か]
 セスジノネズミが保有するウイルスが、ダニの媒介(ばいかい)で人間に感染しておこる病気で、ロシアで出血性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)と呼ばれている病気、旧日本軍が流行性出血熱と命名した病気、韓国で韓国型出血熱と呼ばれている病気は、いずれも同一の病気です。
 常在地は、朝鮮半島、中国の東北地方、ロシアのシベリア地方、スカンジナビア半島、東ヨーロッパの国々です。
[症状]
 2~3週間の潜伏期間の後、急に高熱が出て、4~5日続きます。そして、頭痛、嘔吐(おうと)、眼球結膜(がんきゅうけつまく)や軟口蓋(なんこうがい)の発赤(ほっせき)と出血斑(しゅっけつはん)、顔や上胸部の日焼け状の皮膚発赤や出血斑が現われます。
 発病から4日目ころ解熱しますが、その直前に血圧が低下し、ひどいショック状態になります。
 ついで乏尿(ぼうにょう)から無尿となり、幻覚けいれん肺水腫(はいすいしゅ)をおこして約5%の人が死亡します。
 この時期をもちこたえると、9~11病日から尿量が増え、回復します。
[治療]
 特効薬はありません。播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)(「播種性血管内凝固症候群(DIC)」)に対する副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬、急性腎不全(じんふぜん)に対する人工透析(じんこうとうせき)、細菌の感染予防に抗菌薬などが用いられます。
[予防]
 ノネズミの駆除(くじょ)が有効です。人から人への感染の報告はありませんが、病人血液や尿の取り扱いに注意します。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腎症候性出血熱」の意味・わかりやすい解説

腎症候性出血熱
じんしょうこうせいしゅっけつねつ

急に高熱が出て4~6日続き、急に熱が下がったあと高度のタンパク尿と乏尿がおこり、重症の場合は全身性の出血傾向などもみられるウイルス性の伝染病であるが、通常わが国にはない。

 病原ウイルスは、1981年にLee & Choが分離したRNA型ウイルスで、直径80ナノメートル前後の球形である。保有動物はセスジノネズミApodemus agrariusで、これに寄生するダニが媒介するとされている。治療には特効薬がなく、対症的に治療が行われる。

 なお、第二次世界大戦中、当時の満州(中国東北部)に駐留中の日本陸軍軍医部によって命名された流行性出血熱や旧ソ連で出血性糸球体腎炎とよばれていた疾患、あるいは、韓国で韓国型出血熱とよばれているものなど、すべて同一疾患であり、世界保健機関(WHO)では1984年、これらを一括して腎症候性出血熱(hemorrhagic fever with renal syndrome略称HFRS)とよぶことにした。

 おもな流行地域は朝鮮半島、中国東北地方、旧ソ連地域、スカンジナビア半島、東ヨーロッパ地方などである。わが国でも1960~66年に軽症患者が約100人、大阪で発生したことがあるほか、1975~78年に実験室感染が二、三の大学でおこっている。

[柳下徳雄]

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