腎症候性出血熱(HFRS)は、ハンタウイルス感染による種々の程度の腎不全と血管障害に伴う症状からなる疾患です。本症には、重症型腎症候性出血熱と軽症型の流行性腎症と呼ばれるものとがあります。
このハンタウイルスには、ハンターン(Hantaan)、ドブラバ(Dobrava)、ソウル(Seoul)、およびプーマラ(Puumala)などの亜型があり、そのなかでもハンターン型ハンタウイルスによる腎症候性出血熱が最も重症です。ドブラバ型およびソウル型ハンタウイルスによっても腎症候性出血熱が引き起こされます。流行性腎症は軽症型の腎症候性出血熱で、プーマラ型ハンタウイルスによります。
アジアからヨーロッパにわたる広い地域で流行しています。ソウル型、ハンターン型ハンタウイルスによる腎症候性出血熱は韓国、中国で、ドブラバ型ハンタウイルスによる腎症候性出血熱は東欧で流行しています。そして、軽症型の流行性腎症は北ヨーロッパで主に流行しています。
ヒトからヒトへの感染はありません。日本の感染症法では、4類感染症に指定されています。
潜伏期間は4~42日です。突然の発熱、頭痛、出血症状、腎不全による
血液や採取された臓器からウイルスを検出したり、急性期と回復期のIgG抗体の有意な上昇や、IgM抗体を検出したりして診断します。
安静、ショックに対する治療、輸液・循環の管理などの対症療法が基本で、特異的な治療法はありません。しかし、発症早期には、リバビリン(コペガス)が用いられます。感染予防には、ネズミと接触する機会を減らすための環境改善が重要です。
西條 政幸
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
急に高熱が出て4~6日続き、急に熱が下がったあと高度のタンパク尿と乏尿がおこり、重症の場合は全身性の出血傾向などもみられるウイルス性の伝染病であるが、通常わが国にはない。
病原ウイルスは、1981年にLee & Choが分離したRNA型ウイルスで、直径80ナノメートル前後の球形である。保有動物はセスジノネズミApodemus agrariusで、これに寄生するダニが媒介するとされている。治療には特効薬がなく、対症的に治療が行われる。
なお、第二次世界大戦中、当時の満州(中国東北部)に駐留中の日本陸軍軍医部によって命名された流行性出血熱や旧ソ連で出血性糸球体腎炎とよばれていた疾患、あるいは、韓国で韓国型出血熱とよばれているものなど、すべて同一疾患であり、世界保健機関(WHO)では1984年、これらを一括して腎症候性出血熱(hemorrhagic fever with renal syndrome略称HFRS)とよぶことにした。
おもな流行地域は朝鮮半島、中国東北地方、旧ソ連地域、スカンジナビア半島、東ヨーロッパ地方などである。わが国でも1960~66年に軽症患者が約100人、大阪で発生したことがあるほか、1975~78年に実験室感染が二、三の大学でおこっている。
[柳下徳雄]
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