ヨーロッパ的な伝統であるリベラル・エデュケーションliberal educationは,教育を生活のための手段として考えるのではなく,人間の教養そのものを重視する教育を意味した。しかし,近代における自由教育は,国家をはじめとする政治的権力の統制や教会勢力などの干渉をしりぞけ,子どもの自発性や自己活動,ならびに教師の自由を尊重する教育を意味するようになった。日本の場合,自由民権運動の過程で追求された自由教育は,教育への権力統制を排除しようとするものであった。また大正期には,たとえば山本鼎の自由画教育の提唱や土田杏村を指導者とする自由大学の運動があり,羽仁もと子の自由学園(1921),西村伊作の文化学院(1921),池袋児童の村小学校(1924)などが自由教育をスローガンにしたが,そこでは子どもの自発性や自己活動を尊重して教育改造をおしすすめることがめざされていた。また,第2次大戦後の〈新教育〉の理論や実践も,戦前の〈自由教育〉の系譜をひくものであった。自由教育についてつねに問題となってきたことは,自由が単に〈拘束からの解放〉にとどまるかぎり,〈放縦〉とか〈堕落〉に通じ人間の本性の発達にはむしろさまたげになるのではないか,ということであった。教育における〈自由〉の本義は,それが人間の理性的な自己決定を保障するところにある。したがって,教育の実際においてもそのような〈自由〉がゆたかな成果をうみ出すことが必要である。
→新教育
執筆者:中野 光
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…これに対し,高等教育(大学)においては,普通教育に代わり,一般教育が同義の用語として使われている。 普通教育の理念は,古代ギリシアにおける一部の少数自由民のための,身体,道徳,知性の調和した発達をめざした自由教育にさかのぼることができる。この伝統的な自由教育の理念は,近代に至って人間の平等を求める人権思想の展開と結びつき,身分や職業によって異なっていた従来の教育に対して,万人がひとしく受けるべき,人間たるに必要な普遍的教育universal educationという意義を担って発展してきた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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