舌炎(読み)ぜつえん(英語表記)Glossitis

  • (のどの病気)
  • (口・あごの病気)
  • 舌炎 Glossitis

翻訳|glossitis

家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 炎症がおこっているのが舌炎ですが、ほかの口腔粘膜(こうくうねんまく)にも同様の炎症(口内炎(こうないえん))がみられることが珍しくありません。
 舌の粘膜が広範囲に赤くなって腫(は)れ、痛みがおこるカタル性舌炎(せいぜつえん)の場合、炎症が強いと舌苔(ぜったい)(「舌苔」)を生じ、強い口臭を発することもあります。
 そのほか、舌尖(ぜっせん)(舌先(したさき))に疼痛(とうつう)をともなう黄白色の小粘膜疹(しょうねんまくしん)をもつアフタ性舌炎(せいぜつえん)、潰瘍(かいよう)をもつ潰瘍性舌炎(かいようせいぜつえん)、おもに外傷や感染症に合併して、舌の内部の実質に高度な炎症が生じる実質性舌炎(じっしつせいぜつえん)などがあります。
 これらは、局所的な原因による舌炎ですが、おもに全身の病気の一症状として舌全体が単に赤色となるだけの舌炎(赤色舌(せきしょくぜつ)(コラム「全身の病気と舌炎(赤色舌)」))もあります。
 舌の奥の中央部分に、菱形(ひしがた)から楕円形(だえんけい)で境界の明瞭(めいりょう)な赤い病変がみられることがあり、これは正中菱形舌炎(せいちゅうりょうけいぜつえん)と呼ばれます。舌が発育していく際の形態異常と考えられています。表面の糸状乳頭(しじょうにゅうとう)は欠損し、多くは舌全体が平滑ですが、ときに凹凸がみられます。
[治療]
 局所的な原因によるカタル性舌炎、アフタ性舌炎、潰瘍性舌炎は、うがいと、ときに副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンを含んだ軟膏(なんこう)を病変部に塗る局所治療が主体となります。
 実質性舌炎は、炎症が高度となるため、これらに、さらに抗生物質などの内服が必要になります。
 正中菱形舌炎の場合、ふつう自覚症状がきわめて乏しく、食事がしみたりしなければ治療の必要はありません。しかしこの舌炎は、真菌(しんきん)が感染することが珍しくないので、口腔の清潔には注意すべきです。

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世界大百科事典 第2版の解説

舌の炎症。舌乳頭が赤くはれ,ついで舌の先端背部が発赤し,灼熱感を伴って,やがて乳頭が消失し,舌は赤く平滑になる。舌炎は貧血,ビタミン欠乏,薬剤による反応,全身感染などによって起こり,化学物質による化学的刺激や物理的刺激によって起こることもある。治療は原因疾患を見つけ出し,それを治癒させるようにすることを基本とするが,症状がひどければ消炎剤などによる対症療法を行う。原因がはっきりせず,灼熱感などの自覚症状がないときは,とくに治療の必要はない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

舌粘膜の炎症で、いろいろな原因でおこる。細菌感染でおこる単純性舌炎は口内炎に合併したり、外傷によるものが多い。舌が腫脹(しゅちょう)・発赤し、舌苔(ぜったい)がつき、口臭が強い。疼痛(とうつう)の程度は種々である。炎症が深部(舌実質)に及ぶと疼痛も強く、高熱を伴い、言語が不明瞭(めいりょう)となり、嚥下(えんげ)も困難となる。治療は、口内を清潔にし、抗生剤の投与を行う。ときに真菌の感染による舌真菌症、梅毒性舌炎、舌結核などもある。歯が生えてくる時期の乳児で、舌粘膜に潰瘍(かいよう)ができ、ときにはその部位に肉芽(にくが)が生じ、出血と哺乳(ほにゅう)困難をおこす。これをリガ‐フェーデRiga-Fede病といい、歯と舌粘膜の摩擦によるもので、歯の治療が必要である。

 細菌感染と関係なく、舌の表面にやや隆起した不規則な白斑(はくはん)ができ、白斑のない部分の粘膜は深紅色となる地図状舌(ぜつ)がある。原因は不明であるが、ストレスと関係があるという説もある。自覚症状はなく、数年で自然治癒する。悪性貧血や低血色素性貧血などで舌縁に沿った発赤、腫脹、疼痛をおこすことがある。貧血の治療をすれば治癒する。舌背の中央に黒色の毛が生えたようにみえる毛状舌(黒舌(こくぜつ))は抗生剤の使用時におこることが多い。

[河村正三]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 舌の炎症。口内炎の一部として疼痛を伴って潰瘍(かいよう)、糜爛(びらん)を示すものや、血液疾患時に見られる舌乳頭の萎縮を主とするものなどがある。〔医語類聚(1872)〕

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 舌の炎症の総称です。舌に特有な所見のこともありますが、歯肉や(きょう)粘膜の炎症に合併してみられる場合も多くあります。

原因と症状の現れ方

 局所的原因によるものと、全身的疾患に伴う口腔症状のひとつとして発現するものがあります。

①局所的原因

 咬耗(こうもう)(すりへる)や破折で生じた歯や歯科補綴物(ほてつぶつ)のとがった部分に舌粘膜が接触した場合や、熱い食べ物でのやけどによる外傷性の炎症です。これらの刺激を受けた直後は舌粘膜は赤くなり、灼熱感(しゃくねつかん)やぴりぴりした痛みが発現しますが、刺激が続くとびらんや潰瘍に移行し、二次感染を起こします。

 また、食べ物やその他の原因で、舌粘膜の損傷した部位に細菌が感染し、舌膿瘍(ぜつのうよう)(化膿性炎症)を発症することがあります。アフタ(浅い潰瘍)も舌に発現し、同時にできた数個のアフタが癒合(ゆごう)して大きな病変になると、周囲にも炎症症状を伴いアフタ性口内炎となります。この場合は痛みが著しくなります。

②全身的疾患に伴う舌炎

 ウイルス性疾患、悪性貧血(巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血)、鉄欠乏性貧血などがあります。

 ヘルペスウイルスやエイズウイルスの感染で口腔粘膜全体に炎症が起こり、舌にも発症します。二次感染が起こると、さらに複雑な炎症像を示すことになります。

 ビタミンB12葉酸(ようさん)の欠乏で起こる悪性貧血では、ハンター・メラー舌炎がみられます。初期には舌乳頭が発赤して灼熱感がありますが、次第に舌乳頭は萎縮(いしゅく)して赤く滑らかな平滑舌(へいかつぜつ)となります。

 鉄欠乏性貧血でも、プランマー・ビンソン症候群として悪性貧血と同様な舌病変がみられます。

 そのほか、剥離(はくり)性舌炎がありますが、これは症状名であり疾患名ではありません。天疱瘡(てんぽうそう)天疱瘡(るいてんぽうそう)の症状のひとつとして現れます。

治療の方法

 局所的原因のものは原因除去と対症療法が主となり、全身的疾患のものは対症療法に加えて、元になっている疾患の治療が必要です。

山根 源之

どんな病気か

 口内炎のなかで、その病変が主に舌に限られているものを舌炎と呼びます。原因が不明であったり、治療が不要のことも少なくないのですが、舌の病変がきっかけで全身的な病気が見つかることもあるので注意が必要です。

原因は何か

 原因不明、あるいは先天的な異常と考えられているものには、舌に多数の溝を認める溝状舌(こうじょうぜつ)、舌の後方に菱形の隆起がみられる正中菱形舌炎(せいちゅうりょうけいぜつえん)、舌の表面が地図状に白くみえる地図状舌(ちずじょうぜつ)などがあります。

 全身疾患に関連したものでは、貧血に伴って、舌が赤く平らな感じになることがあります。貧血で舌の粘膜が萎縮(いしゅく)するためです。また、出血が全身に起こりやすくなるオスラー病という病気では、点状の発赤が舌にみられます。

 猩紅熱(しょうこうねつ)川崎病の際には、イチゴのようにぶつぶつした赤い舌がみられ、これをイチゴ舌といいます。また、口のなかで黒色の色素を産生する菌が増殖した結果、舌に黒い毛が生えたようにみえることがあり、黒毛舌と呼ばれています。カンジダが増殖した場合には、白っぽい病巣が舌に点状にみられます。

検査と診断

 舌の状態から全身的な病気や感染症が疑われる場合は、それらの病気に対する検査、治療を行います。溝状舌、正中菱形舌炎、地図状舌では積極的な治療の必要はありません。

病気に気づいたらどうする

 うがいなどで口腔内を清潔に保つようにしておけば問題のない場合が多いのですが、一度は医師の診察を受け、全身的な病気などがないかどうかを調べておくことが望まれます。

一宮 一成

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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