舌の炎症の総称です。舌に特有な所見のこともありますが、歯肉や
局所的原因によるものと、全身的疾患に伴う口腔症状のひとつとして発現するものがあります。
①局所的原因
また、食べ物やその他の原因で、舌粘膜の損傷した部位に細菌が感染し、
②全身的疾患に伴う舌炎
ウイルス性疾患、悪性貧血(巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血)、鉄欠乏性貧血などがあります。
ヘルペスウイルスやエイズウイルスの感染で口腔粘膜全体に炎症が起こり、舌にも発症します。二次感染が起こると、さらに複雑な炎症像を示すことになります。
ビタミンB12と
鉄欠乏性貧血でも、プランマー・ビンソン症候群として悪性貧血と同様な舌病変がみられます。
そのほか、
局所的原因のものは原因除去と対症療法が主となり、全身的疾患のものは対症療法に加えて、元になっている疾患の治療が必要です。
山根 源之
口内炎のなかで、その病変が主に舌に限られているものを舌炎と呼びます。原因が不明であったり、治療が不要のことも少なくないのですが、舌の病変がきっかけで全身的な病気が見つかることもあるので注意が必要です。
原因不明、あるいは先天的な異常と考えられているものには、舌に多数の溝を認める
全身疾患に関連したものでは、貧血に伴って、舌が赤く平らな感じになることがあります。貧血で舌の粘膜が
舌の状態から全身的な病気や感染症が疑われる場合は、それらの病気に対する検査、治療を行います。溝状舌、正中菱形舌炎、地図状舌では積極的な治療の必要はありません。
うがいなどで口腔内を清潔に保つようにしておけば問題のない場合が多いのですが、一度は医師の診察を受け、全身的な病気などがないかどうかを調べておくことが望まれます。
一宮 一成
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
舌粘膜の炎症で、いろいろな原因でおこる。細菌感染でおこる単純性舌炎は口内炎に合併したり、外傷によるものが多い。舌が腫脹(しゅちょう)・発赤し、舌苔(ぜったい)がつき、口臭が強い。疼痛(とうつう)の程度は種々である。炎症が深部(舌実質)に及ぶと疼痛も強く、高熱を伴い、言語が不明瞭(めいりょう)となり、嚥下(えんげ)も困難となる。治療は、口内を清潔にし、抗生剤の投与を行う。ときに真菌の感染による舌真菌症、梅毒性舌炎、舌結核などもある。歯が生えてくる時期の乳児で、舌粘膜に潰瘍(かいよう)ができ、ときにはその部位に肉芽(にくが)が生じ、出血と哺乳(ほにゅう)困難をおこす。これをリガ‐フェーデRiga-Fede病といい、歯と舌粘膜の摩擦によるもので、歯の治療が必要である。
細菌感染と関係なく、舌の表面にやや隆起した不規則な白斑(はくはん)ができ、白斑のない部分の粘膜は深紅色となる地図状舌(ぜつ)がある。原因は不明であるが、ストレスと関係があるという説もある。自覚症状はなく、数年で自然治癒する。悪性貧血や低血色素性貧血などで舌縁に沿った発赤、腫脹、疼痛をおこすことがある。貧血の治療をすれば治癒する。舌背の中央に黒色の毛が生えたようにみえる毛状舌(黒舌(こくぜつ))は抗生剤の使用時におこることが多い。
[河村正三]
舌の炎症。舌乳頭が赤くはれ,ついで舌の先端,背部が発赤し,灼熱感を伴って,やがて乳頭が消失し,舌は赤く平滑になる。舌炎は貧血,ビタミン欠乏,薬剤による反応,全身感染などによって起こり,化学物質による化学的刺激や物理的刺激によって起こることもある。治療は原因疾患を見つけ出し,それを治癒させるようにすることを基本とするが,症状がひどければ消炎剤などによる対症療法を行う。原因がはっきりせず,灼熱感などの自覚症状がないときは,とくに治療の必要はない。
執筆者:菊池 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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