船遊亭扇橋(読み)せんゆうていせんきょう

改訂新版 世界大百科事典 「船遊亭扇橋」の意味・わかりやすい解説

船遊亭扇橋 (せんゆうていせんきょう)

落語家。(1)初代(?-1829(文政12)) もと中津藩奥平家の家臣で赤坂に住み,はじめ常磐津兼太夫(ときわづかねだゆう)門に入って若太夫と称した。のち,初代三笑亭可楽に入門したが,1809年(文化6)に独立し,下谷寄席吹抜(ふきぬき)亭を開いて音曲(おんぎよく)噺で売り出し,音曲噺の祖と称せられた。(2)2代(1786(天明6)-?) 旗本野々山大膳の次男。放蕩の末,狂言作者の初世並木五瓶(ごへい)に入門して篠田金治を経て2世五瓶を襲名。落語では音曲の分野で活躍し扇蔵(せんぞう)から扇橋となった。(3)3代(1847-90・弘化4-明治23) 本名清水栄蔵。2代扇蔵から襲名。(4)4代(生没年不詳) 落語家立川玉輔の実子で庄太郎といった。4代扇蔵から扇橋を襲名。

 なお,現在の入船亭(いりふねてい)扇橋(1931(昭和6)- )は扇橋名の9代目だが,亭号を船遊亭から入船亭にしたのは8代扇橋(1865-1944・慶応1-昭和19)からといわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「船遊亭扇橋」の意味・わかりやすい解説

船遊亭扇橋
せんゆうていせんきょう

落語家。

[関山和夫]

初代

(?―1829)もと中津藩奥平(おくだいら)家の家臣で江戸・赤坂に住み、初め常磐津兼太夫(ときわずかねたゆう)に入門して若太夫といった。のち三笑亭可楽(さんしょうていからく)の一門に加わって音曲(おんぎょく)入りの落語を案出。1809年(文化6)下谷(したや)に寄席(よせ)吹抜亭(ふきぬきてい)を開く。音曲噺(ばなし)の祖といわれ、柳派の基を築く。

[関山和夫]

2代

(1786―?)歌舞伎(かぶき)作者で、初め並木吾市(ごいち)といったが、のちに2世並木五瓶(ごへい)となったことや、音曲師として入船扇蔵(いりふねせんぞう)から2代船遊亭扇橋になったことを自著『落語家奇奴部類(はなしかきぬぶるい)』に記す。また奥州旅行記『奥のしをり』を残した。扇橋の名は長く襲名され、現在の入船亭(いりふねてい)扇橋(1931― )は9代目である。

[関山和夫]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「船遊亭扇橋」の解説

船遊亭扇橋(初代) せんゆうてい-せんきょう

?-1829 江戸時代後期の落語家。
もと豊前(ぶぜん)中津藩(大分県)藩士。江戸赤坂にすみ,2代常磐津兼太夫(ときわず-かねたゆう)に入門して若太夫(2代)と称した。のち落語家に転じて初代三笑亭可楽(さんしょうてい-からく)一門にくわわる。文化6年下谷に寄席(よせ)吹抜(ふきぬき)亭をひらき,音曲噺(おんぎょくばなし)をはじめた。文政12年4月13日死去

船遊亭扇橋(2代) せんゆうてい-せんきょう

1786-? 江戸時代後期の落語家。
天明6年生まれ。初代船遊亭扇橋の門にはいり,入船扇蔵(いりふね-せんぞう)をへて2代目を襲名。のち陸奥(むつ)への旅に出,旅行記「奥のしをり」をあらわした。仙台で75歳で死去とも。別号に烏亭扇橋,語仏老人。著作ほかに「落語家奇奴部類(きぬぶるい)」。

船遊亭扇橋(4代) せんゆうてい-せんきょう

?-? 幕末の落語家。
五明楼(ごめいろう)(立川)玉輔の子。江戸浅草にすむ。扇風,立川扇太郎をへて,4代目を襲名。その後,歌舞伎の4代市川小団次から米蔵の名をもらい,初代入船(いりふね)米蔵を名のった。明治初年ごろ死去。幼名は庄太郎。

船遊亭扇橋(3代) せんゆうてい-せんきょう

?-? 江戸時代後期の落語家。
2代船遊亭扇橋の門人。入船(いりふね)扇童・扇之助,2代入船扇蔵をへて,天保(てんぽう)12年(1841)ごろ3代目を襲名。一説に宇都宮で没したという。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の船遊亭扇橋の言及

【音曲噺】より

…落語の口演途中で,楽屋の三味線や鳴物を伴奏にして,演者自身の唄,または下座(げざ)の唄を入れて噺の進行を効果的にするスタイル。初代三笑亭可楽門下の初代船遊亭扇橋(?‐1829)を元祖としている。代表的な音曲噺としては,《稽古屋》《紙屑屋》《味噌蔵》《電話の散財》などがある。…

※「船遊亭扇橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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