若水(読み)ワカミズ

デジタル大辞泉 「若水」の意味・読み・例文・類語

わか‐みず〔‐みづ〕【若水】

元旦に初めてくむ水。1年の邪気を除くとされ、この水で年神への供え物家族食べ物を調える。 新年》「―のよしなき人に汲まれけり/一茶
昔、宮中で、立春の日に主水司しゅすいしから天皇に奉った水。
[類語]霊水

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精選版 日本国語大辞典 「若水」の意味・読み・例文・類語

わか‐みず‥みづ【若水】

  1. 〘 名詞 〙 昔、宮中で立春の日の早朝、主水司(もいとりのつかさ)が天皇に奉った水。また一般に、立春の早朝、あるいは、後世ではもっぱら元旦にくんで用いる水。一年中の邪気を除くとされる。《 季語・春 》
    1. 若水〈絵本世都之時〉
      若水〈絵本世都之時〉
    2. [初出の実例]「わか水して、いつしか御湯殿まゐる」(出典:栄花物語(1028‐92頃)若水)

若水の補助注記

「延喜式‐四〇」に、前冬の土用に宮中または京内の井戸を一つ選んで清めて祭り、立春の日の明け方にその井戸を開いて水を汲み、天皇に奉る旨の記述がある。井戸は、一汲みした後に廃して用いないという。また、「袖中抄‐二〇」にも正月元日に奉るというのは誤りだといっている。しかし、挙例の「栄花」のように、章子内親王が誕生して初めての正月に若水を湯殿に用いたなど、かなり早くから誤解が生じていたらしい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「若水」の意味・わかりやすい解説

若水
わかみず

元日早朝に初めてくむ水。初水ともいう。平安時代、宮中では、あらかじめ封じておいた生気(せいき)のある井戸から、主水司(もいとりのつかさ)が立春早朝に若水をくみ、女房の手によって天皇の朝餉(あさげ)に奉った。その後、朝儀が廃れ、元旦(がんたん)早朝にくむ風が定着した。現行民間の若水は、年神祭の祭主である年男未明に起き、「若水迎え」などと称して新調した柄杓(ひしゃく)と手桶(ておけ)を持って井戸や泉・川に行ってくんでくるもの。年神に供えたり、口をすすいだり、沸かして福茶などといって家族一同で飲んだり、雑煮(ぞうに)の支度に用いたりする。西日本にはくむのを主婦の役目にしている所があるが、何か隠された理由があると思われる。くむ作法としては、「福くむ、徳くむ、幸いくむ」「こがねの水くみます」などのめでたい唱え言をしたり、餅(もち)や洗い米を供えるなどが一般的であるが、秋田県などのように、丸餅を半分だけ井戸に入れ残りを若水に入れて持ち帰ったり、九州南部のように、歯固(はがた)めの餅を若水桶に落として表裏の返り方で年占いをするなど、所によって特色ある作法が守られている。愛知県北設楽(きたしたら)郡の一部には、このとき井戸から小石を二つ拾ってきて、一年中水甕(みずがめ)の底や茶釜(ちゃがま)に入れておく所があった。これら若水には、年中の邪気を払い幸いを招く力が認められていたが、同時に、古代の変若水(おちみず)の信仰のように人を若返らせる力も期待されているのであろう。近年、水道の普及に伴い、若水をくむ風は各地で絶えようとしている。

[田中宣一]

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改訂新版 世界大百科事典 「若水」の意味・わかりやすい解説

若水 (わかみず)

元日の朝,最初にくむ水。神聖視して,初穂水(はつほみず),福水(ふくみず),宝水(たからみず),黄金水(こがねみず)とも呼ぶ。元日の行事の使い水で,口をすすいで身を清めたり,神への供物や家族の食物の煮たきに用いたりする。若水汲みは〈若水迎え〉ともいわれ,儀礼的な色彩が濃く,若水手拭で鉢巻したり,井戸に餅や洗米を供え,祝いの唱え言をしてくむ土地が多かった。鹿児島県奄美群島には,若水といっしょに小石を3個取ってきて,火の神に供えた村もある。一般に新年の行事を主宰する年男がくむが,西日本には,女性がくむ地方もある。平安時代,朝廷では若水は立春の日の行事で,恵方(えほう)の井戸からくんだ水を,朝食のとき天皇に供えた。かつて琉球の首里王府では,沖縄島北端の村からくんできた水で,元日の朝,王が〈お水撫で(ウビーナディ)〉をした。〈お水撫で〉は,神聖な水を中指で額に3回つける作法で,若返りの水を浴びた効果があるといわれた。新年にあたり生命の更新をはかる儀礼で,民間では主婦が若水で〈お水撫で〉をする習慣があった。
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百科事典マイペディア 「若水」の意味・わかりやすい解説

若水【わかみず】

元日の朝早くくむ水。この水で年神の供え物や家族の食べ物をたき,口をすすぎ,お茶などをたてる。これをくみにいくのが若水迎えで,東日本では年男の役目だが,西日本では女がするところも少なくない。古く宮中では立春の日の行事であった。邪気を除くといわれ,古代の変若水(おちみず)(若返り水)の信仰から出たものという。
→関連項目元日

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「若水」の意味・わかりやすい解説

若水
わかみず

元旦に初めて汲む水。一年の邪気を払うといい,歳神に供えたのち家中の者が茶をたてて飲む風習がある。古くは立春の朝に汲む水をいい,宮中では主水司 (もいとりのつかさ) が天皇に献じたが,これは当時は立春正月であったゆえである。若水を汲みに行くことを若水迎えといい,普通は年男の役割であるが,女の役割とするところも西日本にはみられる。若水迎えには餅や米をたずさえ,これを水神に供え,縁起のよい唱え言をしてから汲むのが普通である。若水迎えに行くときは人に会っても口をきかないならわしがある。

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デジタル大辞泉プラス 「若水」の解説

若水

酒造好適米の品種のひとつ。愛知51号。愛知県農業総合試験場作物研究所で1972年に育成、1985年に品種登録された。あ系酒101と五百万石の交配種。

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事典 日本の地域遺産 「若水」の解説

若水

熊本水遺産」指定の地域遺産。
元旦早朝に汲んだ水を若水という

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世界大百科事典(旧版)内の若水の言及

【泉】より

…奄美地方では,集落から遠く離れた暗河(くらごう)と呼ぶ鍾乳洞内の地下水を,厳しい規則を設けて利用した。水場は神の支配地であり,水神や井の神などと呼んでこれを祭り,新年の若水も古くからの水場から迎えるところが多い。各地に伝わる,弘法大師などの宗教者が水が不足する土地の者のためにその杖を地に突き刺して水を出してやったといういわゆる弘法清水伝説も,いかに人びとが水に苦しんでいたかを語っている。…

【沖縄[県]】より

…沖縄では年末に豚をころし,正月は餅をつかずに豚で祝った。沖縄島では元旦に若水をくみ,神棚,仏壇,かまどに若水をあげ,家族はその水で〈お水撫で〉をする。若水はスディミズともいわれ,生命を新しくする水という意味がある。…

※「若水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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