チガヤを束ねてつくった大きな輪。6月晦日(みそか)の夏越(なごし)の節供にこれを社頭に設置する。参詣(さんけい)者がこれをくぐると災いを避けることができるといわれている。茅の輪のことは古く『備後国風土記(びんごのくにふどき)』逸文に書かれている。北海におられた武塔(むとう)の神が南方に行かれたとき夜になり蘇民将来(そみんしょうらい)の家に宿を請われた。兄弟2人いたが弟は富んでいたのに断り、兄は貧しいが喜んで宿を貸した。それで武塔の神は、茅の輪をつくって腰に下げれば災いを免れることを兄に教えたという。茅の輪をくぐることは相当古くから行われたらしく、『御湯殿上日記(おゆどののうえのにっき)』には毎年朝餉(あさがれい)の間(ま)で行われたことが記されている。茅の輪くぐりは今日も各地の神社で行われているが、広島県などではとくに7歳の子はかならずくぐるという。
[大藤時彦]
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菅貫(すがぬき)とも。災厄や疫病除けに用いる祓(はらえ)の具の一つ。夏越(なごし)の祓ともいう6月の祓に使用する茅(ちがや)や菅(すげ)を束ねて輪にしたもの。「備後国風土記」逸文の蘇民将来説話に起源がのべられ,茅の輪を腰につける人は災厄をまぬかれるとある。中世には宮中や神社で大きな輪を作り,これをくぐれば除病・延命を得るといい,暑気を無事にこす行事の呪具として定着。現在でも全国各地でみられる。
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…平安時代,摂津難波津で行われた一代一度の八十島祭(やそしままつり)では,天皇が下賜した御麻(おおぬさ)の撫物を振って金人銀人の人形に穢を移し,海浜に棄却した。やがてこれが密教の〈六字河臨法〉と称する祓にも影響し,河川に舟を浮かべ,僧侶の読経と陰陽師の中臣祓(なかとみのはらい)読誦を伴いつつ,檀家がわら人形である撫物に穢を移し散米をかけ茅の輪(ちのわ)をくぐらせる呪法を行ってこの人形を水中に投ずる。こうして中世には広く社寺が撫物棄却の祭儀を行うようになった。…
※「茅の輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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