茅の輪(読み)チノワ

デジタル大辞泉 「茅の輪」の意味・読み・例文・類語

ち‐の‐わ【×茅の輪】

夏越なごしのはらえに用いる。チガヤまたはわらで作った大きな輪。くぐると疫病をまぬがれるとされる。あさじのなわ。すがぬき。 夏》「子を連れて―を潜る夫婦かな/大江丸

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「茅の輪」の意味・わかりやすい解説

茅の輪
ちのわ

チガヤを束ねてつくった大きな輪。6月晦日(みそか)の夏越(なごし)の節供にこれを社頭に設置する。参詣(さんけい)者がこれをくぐると災いを避けることができるといわれている。茅の輪のことは古く『備後国風土記(びんごのくにふどき)』逸文に書かれている。北海におられた武塔(むとう)の神が南方に行かれたとき夜になり蘇民将来(そみんしょうらい)の家に宿を請われた。兄弟2人いたが弟は富んでいたのに断り、兄は貧しいが喜んで宿を貸した。それで武塔の神は、茅の輪をつくって腰に下げれば災いを免れることを兄に教えたという。茅の輪をくぐることは相当古くから行われたらしく、『御湯殿上日記(おゆどののうえのにっき)』には毎年朝餉(あさがれい)の間(ま)で行われたことが記されている。茅の輪くぐりは今日も各地の神社で行われているが、広島県などではとくに7歳の子はかならずくぐるという。

[大藤時彦]

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百科事典マイペディア 「茅の輪」の意味・わかりやすい解説

茅の輪【ちのわ】

6月30日の六月祓(みなづきはらえ),夏越の祓(なごしのはらえ)に用いるチガヤの輪で,スゲで作ったものは〈すがぬき〉ともいう。チガヤを束ねて輪の形に作り,これを参詣人がくぐれば病災を免れるという。《備後(びんご)国風土記》逸文に見える武塔神説話に由来するとされている。
→関連項目大祓蘇民将来夏越の祓厄年

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「茅の輪」の解説

茅の輪
ちのわ

菅貫(すがぬき)とも。災厄疫病除けに用いる祓(はらえ)の具の一つ。夏越(なごし)の祓ともいう6月の祓に使用する茅(ちがや)や菅(すげ)を束ねて輪にしたもの。「備後国風土記」逸文の蘇民将来説話に起源がのべられ,茅の輪を腰につける人は災厄をまぬかれるとある。中世には宮中や神社で大きな輪を作り,これをくぐれば除病・延命を得るといい,暑気を無事にこす行事呪具として定着。現在でも全国各地でみられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「茅の輪」の意味・わかりやすい解説

茅の輪
ちのわ

旧暦6月 30日の夏越祓 (なごしはらえ) に用いる,かや,またはわらでつくった大きな輪。すげでつくったものは「すがぬき」という。これをくぐると疫気を避けることができるという一種の呪術行事に使われる。

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世界大百科事典(旧版)内の茅の輪の言及

【撫物】より

…平安時代,摂津難波津で行われた一代一度の八十島祭(やそしままつり)では,天皇が下賜した御麻(おおぬさ)の撫物を振って金人銀人の人形に穢を移し,海浜に棄却した。やがてこれが密教の〈六字河臨法〉と称する祓にも影響し,河川に舟を浮かべ,僧侶の読経と陰陽師の中臣祓(なかとみのはらい)読誦を伴いつつ,檀家がわら人形である撫物に穢を移し散米をかけ茅の輪(ちのわ)をくぐらせる呪法を行ってこの人形を水中に投ずる。こうして中世には広く社寺が撫物棄却の祭儀を行うようになった。…

※「茅の輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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