植物は養分を根から吸収するだけでなく,葉面からも吸収できる(葉面吸収)。肥料成分を水溶液にして展着剤(界面活性剤)を加えて葉面に噴霧し,葉から養分を補給させることを葉面散布といい,追肥の一種である。根の活力が衰えて養分吸収能が低下しているときや,根が土中深く入りこんでいて土壌表面に追肥しても根に到達しにくいとき,あるいは土壌に施用しても養分が沈殿・吸着して,植物に吸収されがたい形態(不可給態)に変化してしまうときなどに,葉面散布によって養分を吸収させる。養分が直接植物に吸収されるので速効性がある。
果樹の場合は根が土中深く伸びているので,尿素の葉面散布が広く用いられている。また,銅,亜鉛,鉄,マンガンなどの微量要素の欠乏している土壌では,土壌に少量施用しても不可給態化しやすく,効果が少ないため,葉面散布のほうが効果のある場合が多い。日本では,マンガン,ホウ素以外のいくつかの微量要素は普通の販売肥料への混入が認められず,葉面散布などに用いる液体複合肥料に混入が認められ,液体微量要素複合肥料といわれている。液体複合肥料の生産量は年約1000tほどで,50種以上の葉面散布肥料があり,窒素,リン酸,カリウムのうち2成分以上の合計量が10%以上の成分が保証されている。
葉面散布では,濃厚な養分液を散布すると,葉が濃度障害を受けるので,散布液中の養分濃度,散布量,散布頻度(回数)には注意せねばならない。一般に窒素は尿素の形で0.5~0.7%程度以下の溶液で散布するのが安全である。リン酸とカリウムはリン酸カリウムの0.5%程度の液がよいとされ,ホウ素はホウ砂の0.1~0.2%液,銅は硫酸銅の0.1%程度の液,亜鉛は硫酸亜鉛の0.1%程度の液,鉄は硫酸第一鉄の0.1%程度の液がよいとされる。リンゴではとくに果実の斑点性障害(ビターピット)を防ぐのに塩化カルシウムの0.5%ほどの液を散布することもある。マグネシウムは硫酸マグネシウムの1%ほどの液を,マンガンは硫酸マンガンの0.3%ほどの液を散布する。これらの濃度は植物の種類・生育状況で適宜変更しないと障害の現れることがあるので,あらかじめ予備散布を一部の葉に対して行って1~2日ようすをみることが望ましい。葉面に付着した尿素は数時間で50%が吸収されるが,リンは10日ほどもかかり,一般の微量要素は数日を要する。
執筆者:茅野 充男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
肥料成分を植物に吸収させるために液状にした薄い肥料を葉面に散布することをいう。通常、作物に必要な無機成分は土壌中に肥料として施され、根から吸収、利用されるのが本筋であるが、植物は根ばかりでなく葉からも養分を吸収できるので果樹や花卉(かき)のように味、色の商品性を重んじるもの、葉の大きな野菜などで補助的、応急的な手段として葉面散布が行われる。
散布される無機成分は作物の必要量も少なく、しかも土壌に施すと固定されたり移動しにくい鉄、亜鉛やマグネシウム、ホウ素などの微量要素(微量養素ともいう)である。尿素のような多量要素も薬害が出にくいことから葉面散布に使用されているが、作物の種類や天候などにより吸収状況が大きく異なり、また濃度をあまり濃くできないなどの制約から、多量要素の葉面散布はあくまでも補助的なものにすぎない。
[小山雄生]
『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』
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