葬送儀礼のことば(読み)そうそうぎれいのことば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「葬送儀礼のことば」の意味・わかりやすい解説

葬送儀礼のことば
そうそうぎれいのことば

仏式・神式の葬送儀礼に関する言葉を集めて、五十音順に配列した。

(『日本語便利辞典(小学館)』より)

位牌(いはい)
中世以後の仏教信仰で、死者をまつるために法号、戒名を記して、依代(よりしろ)とする板。死者の冥福を祈る霊牌(れいはい)や生前にその寿福を願う逆修牌(ぎゃくしゅはい)などがある。形状や戒名の書き方にも宗旨・身分などによって異同がある。


院号(いんごう)
一般に死者の戒名(または法名)に付ける「院」の付く称号。


引導(いんどう)
(1)迷っている人々や霊を教えて仏道にはいらせること。また、極楽浄土へ導くこと。

(2)死人を葬る前に、僧が、棺の前で、迷わずにさとりが開けるように、経文や法語をとなえること。また、その経文や法語。


回向・廻向(えこう)
読経念仏など、善根の功徳を死者に手向けること。死者の冥福(めいふく)を祈って読経をしたり、念仏を唱えたり、供えをしたりすること。供養。たむけ。


戒名(かいみょう)
(1)受戒によって与えられる名。法名。

(2)僧が死者につける法名。


仮葬(かそう)
正式の葬儀をしないで、仮に葬ること。


忌明(きあけ)
喪に服する期間が終わること。いみあき。


北枕(きたまくら)
枕を北に向けて寝ること。釈迦涅槃(ねはん)の時、頭を北にし、顔を西に向けて臥したことから、特に死者を、枕を北にして寝かせること。普通には、これを忌む。


忌中(きちゅう)
家族に死者があって、喪に服する間。現在普通は死後49日間をいう。喪中


忌日(きにち)
毎年または毎月、ある人の死んだ当日で、回向(えこう)をする日。命日。きじつ。


清祓(きよはらえ)
祭事の前後などに、不浄を清めるためにおこなう祓え。きよはらい。きよみはらい。


清塩・清の塩(きよめじお・きよめのしお)
不浄を清めるための塩。とくに、葬式のけがれをはらう塩や、力士土俵を清めるためにまく塩などをいう。


功徳(くどく)
(1)現在、また未来に幸福をもたらすよいおこない。神仏果報をうけられるような善行。すぐれた果を招く力を徳としてもっている善の行為。断食、祈祷喜捨、造仏、写経の類。

(2)神仏のめぐみ、ごりやく。善行をつんだ報い。


五十日(ごじゅうにち)
人の死後50日の喪。五十日祭(ごじゅうにちさい)。


三途の川(さんずのかわ)
人が死んで冥土に行く途中に越えるという川。川に緩急の異なる三つの瀬があって、生前の罪業によって渡る場所が異なり、川のほとりには鬼形の姥がいて衣を奪い取るという。


四十九日(しじゅうくにち)
(1)人の死んだ後の49日間。死者が次の生を得るまでの間の日数。今生の死と来世の生との間。中陰。

(2)人の死後49日目にあたる日。中陰の満ちる最後の日。また、その日におこなう仏事。なななぬか。

〈補注〉人は無限に生死をくり返すという仏教思想に基づき、人が死んでから再び次の生を得るまでの期間を中有、中陰という。この期間は7日を単位として、極善、極悪は死後直ちに次の生を得るが、最長7期目の7日、すなわち49日目にはすべての者が次の生を得るとする。現在、日本ではこの49日目を忌明けとして法事をおこない、香典の返礼をする習慣がある。また表記も「七七日」とすることが多い。


死化粧(しにげしょう)
死者の顔に施す化粧。


死装束(しにしょうぞく)
死ぬときの装束。


死水(しにみず)
死にぎわに口に注いでやる水。死にぎわの人の唇(くちびる)をしめす水。末期(まつご)の水。


死に水を取る(しにみずをとる)
死にぎわに口に水を注いでやる。死にぎわの人の唇(くちびる)を水でしめしてやる。転じて、死にぎわの面倒をみる。死ぬまで世話をする。


収骨(しゅうこつ)
(1)火葬後、骨を骨壺などに収めること。

(2)戦死者などの遺骨を、埋葬するために拾い集めること。


精進落(しょうじんおとし)
葬式や法要などの後にもうけられる酒宴。


祥月命日(しょうつきめいにち)
人が死んだ月日と同じ月日。正忌(しょうき)。正忌日。忌辰(きしん)。祥月。


初七日(しょなのか)
人の死後、重い忌の期間のあける7日目にあたる日。また、その日におこなう法事。一切の労働を禁じて忌籠(いごも)るとされる。軽い忌のあけるのは49日目が多い。しょなぬか。しょしちにち。


施餓鬼(せがき)
(「せがきえ(施餓鬼会)」の略)餓鬼道におちて飢餓に苦しむ亡者(餓鬼)に飲食物を施す意で、無縁の亡者のために催す読経や供養。真宗以外で広くおこなわれる。本来、時節を限らない。7月1日より15日にわたっておこなわれるものは盂蘭盆の施餓鬼。盂蘭盆と施餓鬼の併用が両者の混同を招いたらしい。施餓鬼祭。


施主(せしゅ)
(1)(布施の当人の意)僧や寺に物品を施す人。檀那(だんな)。檀越(だんおつ)。

(2)葬式、または法事などを主人役となってとりおこなう者。


卒都婆・卒塔婆・率都婆(そとば)
供養のため墓のうしろに立てる細長い板。上部は五輪卒都婆の形をしており、梵字、経文などが記されている。塔婆。そとうば。


逮夜(たいや)
(「逮」はおよぶの意で、翌日の火葬におよぶ前夜の意)死去の次の日で火葬または、葬儀の前夜。または、忌日の前夜。


荼毘(だび)
死体を焼いてその遺骨を納める葬法をいう。


玉串・玉籤(たまぐし)
神道の行事作法として用いられる献供物の一種で、榊(さかき)の枝などに、絹、麻、紙などを付けて神前に供えるもの。太玉串(ふとたまぐし)。


霊代(たましろ)
神霊の代わり。霊のよるところとしてまつるもの。御霊代(みたましろ)。


檀家(だんか)
一定の寺に墓地を持ち、布施などによってその寺を援助する家。檀越(だんおつ)。檀那。だんけ。


茶子(ちゃのこ)
彼岸会(ひがんえ)の供物。仏事の供物、または配り物。


中陰(ちゅういん)
(1)人の死後49日間の称。人は死後7日を1期としてまた生を受けるという。極悪・極善の者は死後直ちに次の生を受けるが、それ以外の者は、もし7日の終わりにまだ生縁を得なければさらに7日、第2期の終わりに生を受ける。このようにして最も長い者は第7期に至り、第7期の終わりには必ずどこかに生ずるという。

(2)人の死後49日目にあたる日。七七日。


中有(ちゅうう)
衆生が死んでから次の縁を得るまでの間。無限に生死を繰り返す生存の状態を四つに分け、衆生の生を受ける瞬間を生有、死の刹那を死有、生有と死有の中間を本有とし、死後次の生有までを中有とする。


追善供養(ついぜんくよう)
死者の冥福を祈ってする供養。追供(ついく)。


通夜(つや)
(1)神社・寺院に参籠して、終夜祈願すること。徹夜で勤行・祈願すること。

(2)葬儀の前夜、故人とかかわりの深い者が集まり、終夜遺体を守ること。夜とぎ。とぎ。

(3)葬儀の前夜に行なわれる法要。


十日祭(とおかさい)
神道で、人の死んだ後、10日目に当たる日にその霊をまつる行事。


斎・時(とき)
(食すべき時の食の意)
(1)僧家で、食事の称。正午以前に食すること。午後に食することを、時ならぬ食として非時(ひじ)というのに対していう。

(2)檀家や信者が寺僧に供養する食事。また、法要のときなどに、檀家で、僧・参会者に出す食事。おとき。

(3)法要。仏事。


弔上(とむらいあげ)
これ以後年忌供養をしないという弔いじまい。最終年忌。死後32年目とか49年目の例が多い。問い切り。


七七日(なななぬか)
人が死んでから49日目。また、その日におこなう法事。死後それまでの間は、死者の魂が所を得ないでさまようものとされる。しちしちにち。なななのか。ななめぐり。→四十九日(しじゅうくにち)

涅槃(ねはん)
(1)すべての煩悩の火がふきけされて、悟りの智慧を完成した境地。迷いや悩みを離れた安らぎの境地。また、その境地に達すること。解脱。

(2)仏、とくに釈迦の入滅をいう。


年忌(ねんき)
人の死後、毎年巡ってくる祥月(しょうつき)命日(めいにち)。また、その日におこなう法要。その回数を数えるのにも用いる。回忌。年回。


年忌法要(ねんきほうよう)
年忌におこなう法要。


納棺(のうかん)
死体を棺に納めること。入棺(じゅかん)。


野辺送(のべおくり)
なきがらを、火葬場や埋葬場までつき従って送ること。また、その行列や葬式。葬列には位牌・花籠・四花(しか)・龍頭(たつがしら)など地方によっていろいろの依代(よりしろ)があって、途中で死者の霊が逸脱しないように墓地や火葬場まで送り届ける。とむらい。野送り。野辺の送り。野辺。


布施(ふせ)
(1)仏や僧・貧者などに、衣服・食物などの品物や金銭などを施し与えること。また、その財物。財施。

(2)教法を説くこと。僧が説法によって財施に報いること。法施。


分骨(ぶんこつ)
死者の骨を2か所以上に分けて納めること。また、その分けた骨。


菩提寺(ぼだいじ)
一家が代々その寺の宗旨に帰依(きえ)して、そこに墓所を定め、葬式を営み、法事などを依頼する寺。一家が代々菩提を求める寺。菩提院。檀那(だんな)寺。香華院。


本葬(ほんそう)
本式の葬儀。


枕経(まくらぎょう)
死者の枕もとでする読経。


枕団子(まくらだんご)
死者の枕もとに供えるなま団子。玄米を洗わないで粉にしてつくり、味はつけず白いままで土器に盛る。


枕飯(まくらめし)
死者の枕もと、または墓前に供える飯。まくらいい。


満中陰(まんちゅういん)
「なななぬか(七七日)」のこと。人の死後、7日を1期として7回数える四十九日をいう。→中陰(ちゅういん)

密葬(みっそう)
ひそかに遺骸を葬ること。内々で葬式をおこなうこと。また、その葬式。


銘旗(めいき)
葬送の時に用いる、死者の官位・姓名を記した旗。銘旌(めいせい)。


(もがり)
貴人の葬儀の準備などが整うまで、遺体を棺におさめてしばらく仮に置いておくこと。また、その所。あらき。そのお。


喪中(もちゅう)
喪に服している期間。


湯灌(ゆかん)
仏葬で、死体を棺に納める前に、湯で洗い浄めること。湯洗い。


六道銭(ろくどうせん)
死人を葬る時に、三途の川の渡船料として棺の中に納める六文の銭。六道能化の地蔵菩薩への賽銭とも、金属の呪力で悪霊を払う意味ともいう。


法要
初七日(しょなぬか)…7日目
二七日(ふたなぬか)…14日目
三七日(みなぬか)…21日目
四七日(よなぬか)…28日目
五七日(いつなぬか)…35日目
六七日(むなぬか)…42日目
七七日(なななぬか)…49日目
百か日…100日目

年忌法要
一周忌(一回忌)…死亡の翌年
三回忌…2年目
七回忌…6年目
十三回忌…12年目
二十三回忌…22年目
二十七回忌…26年目
三十三回忌…32年目
五十回忌…49年目

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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