( 1 )通常の和紙は厚様が一般なので、薄手のものを指す場合、特に薄様といった。
( 2 )平安中期以後、懸想文や親密な相手との贈答に用いられ、季節にあった配色に加えて、草花など状況にあったものに添えられていた。薄くて透けて見えるため、ものを書く時は、「薄様重ね」にして使った。和歌会では、女の懐紙は普通、薄様重ねにして、上の紙に歌を書き、下の紙の端に作者の名を書いた。
非常に薄い雁皮(がんぴ)紙を指し,薄葉,薄用などとも書く。平安時代から用いられてきた名称であるが,本来,紙の厚さを指す言葉なので,厚様(あつよう)・中様(ちゆうよう)などという表現もある。はじめは雁皮紙ばかりでなく,楮(こうぞ)紙などにも用いられたのであろうが,繊維の短い雁皮の薄紙は,美しい光沢を放つ滑らかな紙肌,緻密(ちみつ)な紙の地合などの印象が強いゆえか,薄様といえばもっぱら,雁皮紙の薄手の紙を指すようになった。とくに平安時代の女流文学者によって,さまざまの色に染められた薄様に,和歌や消息が書かれ,また包紙として愛用された。染めた薄様を重ね合わせると,下の色が透けて中間色になるが,これは雁皮の半透明な薄紙の特色がよく発揮された利用法といえよう。現代では,雁皮の薄紙が最も多く用いられているのは,謄写版原紙の用紙や金箔を打つ箔打紙などであり,その美しさが十分に発揮されているのは,書画用の料紙や,楮紙などにすき合わせて1枚にする銅版画用紙などである。
執筆者:柳橋 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
薄手の和紙のこと。薄葉とも書く。厚様(厚葉)に対することばで、平安初期に流し漉(ず)き法が確立されたことにより、薄紙の抄造が容易となった。平安時代の女性に好まれ、当時の文学作品のなかに多くの用例がみられる。『日葡(にっぽ)辞書』(1603)に薄様と薄紙があげられているが、とくに薄様は鳥の子紙の薄いものと解説されている。流し漉き法が一般化しても、ガンピ(雁皮)類を原料とした上代の斐紙(ひし)は薄手の紙に適しているため、薄様の主流はこの系統の雁皮鳥の子紙が占めていた。しかしコウゾ(楮)やミツマタ(三椏)などを原料としても、流し漉き法によって薄様を抄造することができ、近年では機械漉きの薄様紙も各種製造されている。現在の紙の分類では、和紙は1平方メートル当り20グラム以下、洋紙では40グラム以下の秤量(ひょうりょう)のものを薄葉紙としている。
[町田誠之]
…なお,和紙の技法の特色である流しずきは,奈良時代から平安時代にかけての時期に完成されたと推定されている。平安時代には,ガンピの薄紙である薄様(うすよう)が,とくに貴族の女性の間で,仮名書きの手紙や歌を書く用紙や包紙など(懐紙)として愛用された。各色に染めた薄様を重ね合わせ,中間色になる効果を楽しむなど,半透明の雁皮紙の特色がよく生かされている。…
…とくに紙肌が滑らかで,流麗な仮名書きに適した雁皮紙が愛用された。はじめは楮紙と雁皮紙を含めて,厚い紙を厚様(あつよう)(厚葉),薄い紙を薄様(うすよう)(薄葉)と呼んでいたものが,しだいに薄様とは雁皮紙をさすようになった。光沢が半透明な薄様は染紙にして,異なった色の薄様と重ね合わせて中間色にするなど,微妙な使い方がなされ,とくに女性の消息などに愛用された。…
※「薄様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新