藤ノ木古墳(読み)フジノキコフン

デジタル大辞泉 「藤ノ木古墳」の意味・読み・例文・類語

ふじのき‐こふん〔ふぢのき‐〕【藤ノ木古墳】

奈良県生駒郡斑鳩いかるが町にある6世紀後半の円墳横穴式石室石棺内外から、金銀製の冠・帯・くつ大刀、金銅製の装身具、玉類、くら金具など豪華な副葬品出土

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精選版 日本国語大辞典 「藤ノ木古墳」の意味・読み・例文・類語

ふじのき‐こふんふぢのき‥【藤ノ木古墳】

  1. 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺藤ノ木にある六世紀後半の大形円墳。横穴式石室のなかに赤色塗彩の家形石棺をもつ。石室から副葬品として多数の須恵器土師器の他、金銅製馬具の優品が出土。

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日本歴史地名大系 「藤ノ木古墳」の解説

藤ノ木古墳
ふじのきこふん

[現在地名]斑鳩町大字法隆寺小字藤ノ木

大字法隆寺西里ほうりゆうじにしさと集落の西南に所在。直径四〇メートル、高さ八メートルの大型の円墳で、二段に築成されている。西南裾部が削り取られているほかは旧状をよく保っている。墳丘の一部に埴輪片の散乱がみられる。埋葬施設もまったくわからず、その築造時期の推定は困難であるが、古墳時代中期と思われる。また崇峻天皇陵との伝承もあり、付近の水田にミササギの小字名も残っている。

〔刊行後の調査の進展〕

昭和六〇年(一九八五)・同六三年に三度の調査が行われた。字藤ノ木・陵山みさざきやまに所在する径四八メートル、高さ八メートルの円墳。

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国指定史跡ガイド 「藤ノ木古墳」の解説

ふじのきこふん【藤ノ木古墳】


奈良県生駒(いこま)郡斑鳩(いかるが)町法隆寺西にある6世紀後半の円墳。法隆寺西院伽藍(さいいんがらん)の西方約350mに位置する。直径50m以上、高さ9mの円墳は、法隆寺に残る記録によると「陵山(みささきやま)」とあり、蘇我馬子(そがのうまこ)らに暗殺された崇峻(すしゅん)天皇陵と記すものもある。物部氏や蘇我氏、平群(へぐり)氏の墓ではないかとする説などがあるが、定説化したものはなく、これまで考古学の世界ではほとんど注目されることはなかった。しかし、1985年(昭和60)の調査によって、盗掘を免れてきた横穴式石室内から、金銅製の豪華な馬具などが出土したことで注目された。石棺は二上山の白色凝灰岩を使った刳()り抜き式の家形石棺で、全面に朱が塗られていた。石室内から馬具のほか武器や武具類などが発見され、石棺内には、埋葬後に攪乱を受けていない2体の被葬者が確認された。そのそばには鏡や刀など1万2000点を超える豪華な副葬品がほぼ原位置を保って発見され、これまで性格のはっきりしなかった副葬品の用途や機能を考えるうえで貴重なデータとなった。1991年(平成3)に国の史跡に指定された。出土品の保存状態は良好とはいえず、10年を費やして保存処理が実施され、金銅製の馬具類、副葬されていた金銅冠、金銅履(くつ)、装飾大刀、各種の玉類、銀や金銅製の装飾品などの詳細な調査が行われた。高度な技術と華麗な意匠は、古墳時代後期の工芸技術の粋を集めたものとして高く評価されている。副葬品は一括して国宝に指定され、奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所附属博物館で常設展示されている。JR関西本線法隆寺駅から奈良交通バス「法隆寺門前」下車、徒歩約5分。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「藤ノ木古墳」の意味・わかりやすい解説

藤ノ木古墳
ふじノきこふん

奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺字藤ノ木に所在する直径約 50m,高さ 8mの大型円墳。墳丘には埴輪が見られる。 1987年に橿原考古学研究所が1次調査を行なった。内部構造は巨石を用いた全長 14.5cmに達する両袖式の横穴式石室で,玄室には,長さ 2.35m,幅 1.26m,高さ 1.54mの刳抜 (くりぬき) 式家形石棺が密封状態で安置されていた。この調査で石棺付近から出土した馬具などは金銅装透彫 (こんどうそうすかしぼり) の優品で,汎東アジア的意匠を示すものとして注目された。 1988年の2次調査で石棺が開かれた。水銀朱で真紅に塗られた棺内には深さ 10cmほどの水がたまっており中に男子1体,性別不明1体の計2体の人骨に伴っておびただしい副葬品が沈んでいた。おもな遺物には金銅製冠,刀剣6点,画文帯神獣鏡を含む銅鏡4点などがあり,6世紀後半の古墳副葬品が盗掘されず一括出土した点で,当時の埋葬の実体を知るうえで大きな意義がある。

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百科事典マイペディア 「藤ノ木古墳」の意味・わかりやすい解説

藤ノ木古墳【ふじのきこふん】

奈良県生駒郡斑鳩町にある6世紀後半の円墳。法隆寺の西350mに位置する。直径48mで,全長14.5mの横穴式石室をもち,中に未盗掘の朱塗りの家形石棺(長さ2.35m)が納められていた。1985年の調査では金銅製馬具1組,鉄地金銅張馬具2組,挂甲札,鉄鏃,鉄刀など多くの遺物が出土。なかでも金銅製馬具は保存状態がよく,鞍金具には禽獣文,パルメット文,鬼神文が透彫りされ,当時の金工技術の粋を集めたものとして注目された。1988年に開棺された石棺の内部には伸展葬された2体の人骨があり,1体は20歳前後の男性であった。被葬者の周囲には多くの副葬品がほとんど埋葬時のまま残されており,冠,履,大帯など各種の金銅製品,獣帯鏡など4面の銅鏡,6口の刀剣,多量の玉類と金属製装身具などが出土。6世紀後半は聖徳太子が活躍する時代の直前であり,当時の斑鳩を知る上で重要な古墳である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤ノ木古墳」の意味・わかりやすい解説

藤ノ木古墳
ふじのきこふん

奈良県生駒(いこま)郡斑鳩(いかるが)町藤ノ木にある6世紀後半の円墳。古墳の東300メートル余には法隆寺があり、江戸時代にはミササギ山とよばれ、崇峻(すしゅん)天皇陵と伝承されていた。1985年(昭和60)に斑鳩町と奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所によって発掘調査が行われた。墳丘は径40メートルで、南南東に開口する全長14.5メートルの横穴式石室がある。石室には家形石棺があり、60個体余の土師(はじ)器・須恵(すえ)器と馬具などが出土した。

 馬具はすべて金銅(こんどう)装で3セットある。1セットの鞍金具(くらかなぐ)にはパルメット・亀甲(きっこう)・鳥・獣・怪魚・象・兎(うさぎ)と鬼神などの文様があり、後輪中央の把手(とって)の両端には金細工をはめ込んだガラス玉がついている。文様の背景には、中国・朝鮮の思想が考えられる。国際色豊かな馬具がなぜ斑鳩の地にもたらされたのかという点は、聖徳太子が飛鳥(あすか)ではなく斑鳩に宮を造営した背景と関連するかもしれない。

[石野博信]

『橿原考古学研究所編『斑鳩藤ノ木古墳』(1986・斑鳩町)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「藤ノ木古墳」の解説

藤ノ木古墳
ふじのきこふん

奈良県斑鳩(いかるが)町法隆寺にある古墳後期の円墳。金銅製服飾具と,きわめて精巧な馬具など豊富な副葬品を出土したことで著名。法隆寺の西方350mの丘麓にあり,墳丘は裾部分がわずかに削られているものの,現状で直径約48m,高さ約9mあり,円筒埴輪をめぐらしていた。墳丘の中央に南東にむかって開口する両袖式の横穴式石室があり,全長14m,玄室は長さ6m,最大幅2.7m,高さ4.3m,羨道(えんどう)は長さ8.3m,幅2m,高さ2.4mで,塊石を用いて閉塞していた。石室奥壁の近くに縄掛突起をもつ家形石棺があった。石棺は凝灰岩製で全面に赤色顔料を塗布。棺内には人骨2体があり,画文帯神獣鏡など鏡4や金銅製冠・筒形金銅製品・銅製大帯・金銅製飾履(しょくり)・剣菱(けんびし)形銀製品などが,多数のガラス玉・空玉(うつろだま)・耳輪と布帛をともなって副葬されていた。棺外出土の馬具は,鞍金具に亀甲繋文(きっこうつなぎもん)と竜・鳳凰・虎など各種動物文をパルメット文とともに配し,杏葉(ぎょうよう)・鏡板(かがみいた)などがあり,東アジアでも第一級の製品。国史跡。出土品は国宝。

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旺文社日本史事典 三訂版 「藤ノ木古墳」の解説

藤ノ木古墳
ふじのきこふん

奈良県生駒郡斑鳩 (いかるが) 町にある6世紀中頃の古墳時代後期の円墳
直径約48m,高さ約9mで墳丘に埴輪をともなう。1985年の調査で横穴式石室内から華麗な装飾馬具や土器が出土した。1988年の内視鏡を使った調査で,未盗掘の朱塗りの家型石棺から2体の男性骨と銅鏡,装飾刀剣5点,金銅製の冠・沓などの多数の装身具,織物,ベニバナの花粉などが出土した。被葬者は不明。

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知恵蔵 「藤ノ木古墳」の解説

藤ノ木古墳

奈良県斑鳩町にあり、1988年の開棺調査で金銅製の冠、沓、筒型製品、帯、6振の大刀、5面の鏡、金の耳飾りなどで装飾された成人男性2体の骨が発見された6世紀の円墳(直径48m)。85年に豪華な馬具が出土し、内視鏡調査で未盗掘石棺と判明、大規模な総合調査態勢がとられた。

(天野幸弘 朝日新聞記者 / 今井邦彦 朝日新聞記者 / 2007年)

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