改訂新版 世界大百科事典 「行政調査」の意味・わかりやすい解説
行政調査 (ぎょうせいちょうさ)
行政機関が,政策の立案,基準の設定,個々の決定を行うために必要な情報・資料を収集する活動。このような活動のうちとくに問題となるのは,質問・立入検査等が,その拒否・妨害・忌避・虚偽の答弁等に対する処罰規定によって強制的性質を付与されている場合である(所得税法234条,大気汚染防止法26条,食品衛生法17条,消防法4条,都市計画法82条などによる質問や立入検査)。行政活動が拡大している現在,このような行政調査によって,私人の営業や日常生活が妨害され,プライバシーが侵害されるおそれがある。このような調査権を認める法律は,行政職員の身分証の携帯・提示について定めるにすぎないが,憲法35条の令状主義や憲法38条の〈自己に不利益な供述を強要されない〉ことの保障が,行政調査にも及ぶか,行政調査の日時・場所・対象などの事前通知やその理由開示が,正当手続として必要ではないかなど,憲法の基本的人権との関係での議論がある。このほか,収集された情報の悪用を防ぐための統制も,現在における重要な課題である。
→プライバシーの権利
執筆者:広岡 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報