街路照明をいう。広場,公園などの照明もこれに準ずる。防犯用に始まったものが多いが,交通安全用,都市美観上にも用いられる。
古代ローマ時代,アンティオキアで,浴場や盛り場近辺の街路に,ロープでつるしたランプが提げられた。一時的なものとしてはさらに古く,古代エジプトにおいて家々の前にランプを置き,夜通しともし続けたし,また,ローマでは競技を行うため公共広場の夜間照明を行った。1524年にはパリで,街頭泥棒や放火犯の横行に対処するため,街路に面した家の窓の前を照明し続けるよう命令が出された。58年には,ピッチなどの可燃物を入れた角灯が街角に建てられ,1667年パリ市の警察制度の大改善で,月夜にも点灯して夜間の凶行防止をはかり,市民に費用を負担させた。ヨーロッパ各都市はこれにならって,おおむね17世紀には街灯が設置された。1803年にはガス灯が劇場照明に利用され,07年に街灯に用いられた。
日本では,臨時的なものは古くから庭園や神社で篝火(かがりび)が焚かれ,恒常的なものとしては,奈良東大寺の聖武天皇時代の灯籠が現存している。近代文明を輸入した1872年(明治5)9月に,横浜の本町通りに十数基のガス灯が設置された。83年には東京電灯株式会社が設立され,87年12月には江戸橋郵便局前に白熱灯による街灯が設置された。その後,光源としては,蛍光灯,水銀灯,霧の中でも光をとおすナトリウム灯などが用いられている。街灯は維持費もかかるため,主要交差点や橋などのほかは公的な設置は少なかったが,自動車交通の発達によって,主要街路や高速道路は常時点灯されるようになってきた。また,商店街でも街の美化のために,自力によってくふうをこらした形態の街灯を建てるようになっている。しかし,その一方,市街化の急膨張によって生まれた住宅地では照明は少なく,防犯灯と称して,住民の負担や,一部自治体の援助で設置,管理されているものも多い。
執筆者:田村 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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