改訂新版 世界大百科事典 「西ノ島」の意味・わかりやすい解説
西ノ島[町] (にしのしま)
島根県隠岐(おき)郡,隠岐諸島島前(どうぜん)三島のうち最大の西ノ島全域を占める町。人口3136(2010)。玄武岩の溶岩台地が起伏し,東西に走る山脈が脊梁となり,内海側と外海側とに分かれている。内海側は中ノ島,知夫里(ちぶり)島に囲まれた袋状の内海湾を抱き,天然の良港に恵まれている。外海側には集落は一つあるのみで,37kmにおよぶ海食断崖が連続する。水産業が基幹産業で,浦郷漁港を拠点に水揚高は県下第3位。浦郷には県栽培漁業センター(現,島根県水産技術センター栽培漁業部)がある。近年まで存続した牧畑(まきはた)はそのほとんどが牛や馬の放牧地に転換された。別府近くの黒木御所跡は後醍醐天皇配流時の行在所(あんざいしよ)跡と伝えられる。南部の焼火(たくひ)山(452m)中腹の焼火神社は海運業者の信仰が厚く,同神社所蔵の木舟〈トモド〉は国の重要民俗資料である。外海部と焼火山周辺は大山隠岐国立公園に属し,大絶壁と奇岩で知られる国賀(くにが)海岸は隠岐を代表する景勝地で,夏は観光客でにぎわう。島の北端の沖合にある星神(ほしがみ)島はオオミズナギドリの繁殖地,別府湾はクロキヅタの産地で,両者ともに天然記念物である。
執筆者:赤池 享一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報