オオミズナギドリ(その他表記)streaked shearwater
Calonectris leucomelas

改訂新版 世界大百科事典 「オオミズナギドリ」の意味・わかりやすい解説

オオミズナギドリ
streaked shearwater
Calonectris leucomelas

ミズナギドリミズナギドリ科の鳥。中型の外洋性海鳥で,日本列島周辺や朝鮮半島,台湾周辺の島で繁殖する。全長約50cm,翼を広げると110cm,体の上面は黒褐色,下面は白色,頭部は白地に黒褐色の小斑がある。翼は細長く,滑翔(かつしよう)に適応している。繁殖期には陸地が見える範囲にいることが多い。海に深く潜ることはなく,表層の魚類,イカ類,大型動物プランクトンをくちばしでとらえて食べる。島の地面に長い横穴を掘り,中に枯葉などを引き込んで巣をつくり,6月半ばすぎに白色の卵を一つ産む。54日間雌雄交代で抱卵する。雛は8月半ばに孵化(ふか)し,2ヵ月半養育され,10月末から11月初めに巣立つ。親鳥は抱卵中以外は昼間は海上で過ごし,日没後営巣地の島に帰ってくる。このときは上空を乱れ飛び,しだいに低く飛ぶようになり,最後には林につっこんで着地する。朝,日の出の前,樹や岩など高いところに登ってから飛び立つ。夜中ずっと鳴声が続く。伊豆諸島御蔵島では巣立ち近い雛をとらえ保存食にする習慣があったが,今は行われていない。
ミズナギドリ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオミズナギドリ」の意味・わかりやすい解説

オオミズナギドリ
Calonectris leucomelas; streaked shearwater

ミズナギドリ目ミズナギドリ科。外見カモメ類に似ているが,鼻孔が上嘴基部に筒状になって開口している。全長 46~51cm。額は白いものもいるが,頭部背面は白色地に黒褐色のまだら模様。風切羽や尾羽は黒褐色。背から上尾筒,雨覆羽は褐色だが,各羽の縁の色が淡く,うろこ模様になっている。喉から腹面は白い。日本近海,ロシア極東部のウラジオストク朝鮮半島,中国のシャントン(山東)半島タイワン(台湾)沿岸や沖合いの島嶼で繁殖する。集団繁殖し,森林内の斜面に掘った横穴の中に枯れ葉などを敷いて営巣する。日中は海上に出て,日没後に島へ戻り,日の出前に島から飛び立つ。海に出るときは木に登って飛び出す。泳ぎながら,または浅く潜水しておもにカタクチイワシなどの魚やイカをとる。岩手県三貫島,北海道松前町など多くの繁殖地が国の天然記念物に指定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオミズナギドリ」の意味・わかりやすい解説

オオミズナギドリ
おおみずなぎどり / 大水薙鳥
streaked shearwater
[学] Calonectris leucomelas

鳥綱ミズナギドリ目ミズナギドリ科の海鳥。全長47センチメートル、翼開長110センチメートル。日本列島周辺の島で繁殖するが、冬季はフィリピン近海に渡る。沿岸から沖合いで魚類やイカなどをとらえて食べる。夕方島に戻り、地中に掘った巣内の雛(ひな)に給餌(きゅうじ)し、早朝海に出る。伊豆諸島御蔵島(みくらじま)ほかの繁殖地のうち、岩手県釜石(かまいし)市三貫島(さんがんじま)など6か所は天然記念物に指定されている。

[長谷川博]


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百科事典マイペディア 「オオミズナギドリ」の意味・わかりやすい解説

オオミズナギドリ

ミズナギドリ科の鳥。翼長32cm。日本産のミズナギドリ中最も大きく,最も普通。全身に白と褐色の斑紋をもつ。日本近海の島に集団で繁殖し,その周辺の海上で生活する。北海道渡島大島,岩手県三貫島などの繁殖地は天然記念物。ほかに伊豆諸島の御蔵島にも多数生息する。海上を滑空しながらジグザグ状に飛び回り魚やイカを捕食する。島の地面に穴を掘って巣とし1卵を産む。
→関連項目大島(北海道)松前[町]

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世界大百科事典(旧版)内のオオミズナギドリの言及

【ミズナギドリ(水凪鳥)】より

…【長谷川 博】。。…

【京都[府]】より

…面積=4612.39km2(全国31位)人口(1995)=262万9592人(全国13位)人口密度(1995)=570人/km2(全国9位)市町村(1997.4)=12市31町1村府庁所在地=京都市(人口=146万3822人)府花=シダレザクラ 府木=北山スギ 府鳥=オオミズナギドリ近畿地方の中央部から北部にかけて位置し,福井,滋賀,三重,奈良,大阪,兵庫の6府県に隣接,北は日本海に臨む。
[沿革]
 現在の京都府域は,かつての山城国と丹後国の全域および丹波国の大半からなっている。…

【ミズナギドリ(水凪鳥)】より

…(4)ミズナギドリ類(英名shearwater)はもっとも飛翔力を発達させたグループで,体は細く,細長い翼をもち,くちばしも細長い。高度の飛翔力を発達させたのはオオミズナギドリ属Calonectrisで,ユーラシアの両端にそれぞれ1種が分布し,東のものは日本列島特産のオオミズナギドリC.leucomelas(イラスト)である。日本近海の島々で大きな集団をつくって繁殖している。…

※「オオミズナギドリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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