西暦2000年の地球(読み)せいれきにせんねんのちきゅう

百科事典マイペディア 「西暦2000年の地球」の意味・わかりやすい解説

西暦2000年の地球【せいれきにせんねんのちきゅう】

1980年7月,米国ホワイト・ハウス直属の環境問題諮問委員会(CEQ)が国務省と共同で完成した,2000年の地球の人口資源,環境の予測報告書。当時のカーター大統領が1977年5月,作成を命じ,カーター政権が総力を挙げて作成した。その内容は,(1)世界の人口は1975年の40億から2000年には63億5000万に増える。この増加の90%は後発発展途上国LDC),(2)国家間の貧富の差が拡大する,(3)南アジア,中東アフリカの後発発展途上諸国の1人当たり食糧消費はほとんど改善されないか,あるいは現在の不十分な水準を下回る。耕地はわずか4%しか増えない,(4)多くの開発途上国で2000年までに水の供給量が著しく不安定になる,(5)開発途上国に残存する森林の約40%が消滅する,(6)耕地の深刻な悪化が進み,砂漠化が加速度的に拡大する,(7)地球上の動物・植物の種の20%(何十万という種)が熱帯雨林を中心とする生息地を奪われて絶滅する,(8)大気中の二酸化炭素(CO2)の量は21世紀の半ば以降は現在の2倍に増加,中緯度地域では気温が2度から3度上昇。フロンは上昇して成層圏蓄積オゾン層破壊,このため有害な紫外線地表に達し,皮膚癌発生率を高める,(9)放射性物質や他の有害物質がより多くの国で健康や安全上の問題となる,(10)石炭利用が増えれば酸性雨による湖沼土壌作物被害が増大する,というもの。この予測は大きな反響を呼び,地球環境問題に関する国際的なとりくみをうながした。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西暦2000年の地球」の意味・わかりやすい解説

西暦2000年の地球
せいれきにせんねんのちきゅう
The Earth in 2000

カーター米大統領の指示により,国務省,環境問題諮問委員会を中心に 13の連邦政府機関が,世界の人口,天然資源,環境の 20世紀中の変化を取りまとめた報告書。 1980年に発表。人口の大幅増加 (2030年に 100億人) ,南北の所得格差拡大,食糧,水供給の問題,森林減少,砂漠拡大,気候変化を問題提起している。鉱物資源などの再生不可能な資源だけでなく,森林,農地など開発の再生可能な資源にも焦点を当てた。国連やサミットなどでも言及され,地球環境問題に対する世界の関心を高めた。

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世界大百科事典(旧版)内の西暦2000年の地球の言及

【資源】より

…石油がなくなれば原子力,太陽エネルギーがあるという考えは問題を正しくとらえていない。アメリカ政府機関の地球に関する調査報告である《西暦2000年の地球》(1981)をはじめとする各種の報告によれば,ウラン資源は在来技術である軽水炉で燃やすかぎり,エネルギー量としては少なくなったといわれる石油よりも少ないといわれている。高速増殖炉,核融合技術などの速やかな開発が望まれる。…

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