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見えざる手 みえざるてinvisible hand

翻訳|invisible hand

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

見えざる手
みえざるて
invisible hand

古典派経済学の始祖 A.スミスの『道徳情操論』『国富論』に登場する有名な言葉。彼は富は労働の生産物であるから,生産的労働を使用する農工業部門に資本を投下し,分業化,機械化を進めて労働生産力を高めれば国富は増大すると主張する一方,近代的個人の利己心を経済活動の動機として認め,個々の資本家がそれぞれ最大の利潤を追求して最大の労働を維持すれば,社会の全生産物の価値は最大となり,これに相応する社会の年収,すなわち利潤や賃金も最大になる。したがって個々人は私の利益だけを追求して自由競争していくうちに,見えざる手に導かれて,みずから予期しなかった目的,すなわち社会の繁栄と調和を達成することになると考え,国家干渉の排除を主張した。スミスがこのような予定調和論を唱えた理由は,彼自身が利己心は公平な第三者の「同感」の枠内で働くものであるという楽観的信念をもっていたこと,および当時は産業資本の上昇期にあたり,また資本と労働の対立が現れていなかったという事情による。この言葉に象徴されるスミスの考え方は『国富論』に随所にみられるが,この言葉自体は前記2著にそれぞれ1度ずつ登場するだけである。

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世界大百科事典 第2版の解説

みえざるて【見えざる手 invisible hand】

個々人の私益追求のエネルギーが結果的に社会全体の利益増進に役立つことを示すのに,アダム・スミスは著書《国富論》第4編第2章,および《道徳感情論》第1編第4部において,〈見えざる手に導かれてled by an invisible hand〉という表現を用いた。19世紀になると〈見えざるのみ手〉と誇張して,独占利潤を含めた無法な私益追求までも正当化しようとする傾向を生じたが,スミスの本意では,私益追求に伴う弊害が市場での主体間競争によって除去され浄化されることを大前提としているのである。

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大辞林 第三版の解説

みえざるて【見えざる手】

かみの見えざる手(「神」の句項目)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

見えざる手
みえざるて
invisible hand

イギリスの古典派経済学者アダム・スミスが『道徳感情論』(1759)と『国富論』(1776)で、それぞれ一度ずつ使ったことばであるが、彼の予定調和の思想=自然法思想を象徴することばとされている。『道徳感情論』では、自然的秩序の成立は、諸個人の自己愛を制御する神の導きによるものとされている。しかし、『国富論』では、利己心の抑制を求めるのではなく、諸個人の利己的な経済活動が、結果的には、社会の生産力の発展に寄与し、また諸階級の利害も調整されて、繁栄のなかに自然的調和が成立することを、日常の経験的事実から演繹(えんえき)的に記述しようとしているのである。彼の理論において、自然的調和と繁栄に導くものは、自由競争市場における価値法則の作用と、利潤動機に導かれた資本投下の自然的序列=「富裕への自然のコース」であった。したがって、これが神の「見えざる手」の作用の具体的な現れと考えることができるのである。こうした自然的秩序を混乱させるものとして、重商主義国家による経済への介入を、彼は強く批判したのである。[佐々木秀太]

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世界大百科事典内の見えざる手の言及

【古典派経済学】より

…近代社会の市民政府は,この正義の確保,つまり人々の生命・身体と財産の保全を任務とする。市民政府の手でその正義さえ実現されれば,あとは各人が利己心に従って自由に行動しながら,〈見えざる手〉つまり市場機構によって調和が実現されるとして,その商業社会の構造と動態を,価値論,分配論,蓄積論などをもって詳論した。ただ彼は,支配労働量は投下労働量より大きいということから剰余の発生の仕組みを説きつつも,価値分解説と価値構成説を統一しなかった。…

※「見えざる手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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