解由状(読み)ゲユジョウ

デジタル大辞泉 「解由状」の意味・読み・例文・類語

げゆ‐じょう〔‐ジヤウ〕【解由状】

解由完了を証する文書。新任者から前任者に渡され、前任者はこれを上司に提出して任務を終了した。国司のそれは特に重視された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「解由状」の意味・読み・例文・類語

げゆ‐じょう‥ジャウ【解由状】

  1. 〘 名詞 〙 奈良平安時代、官人の任期満了に際して作成された文書。前任者の任期中、過怠のなかったことを新任者が証して前任者に渡し、これを中央に提出する。特に国司の解由状が重要。→不与(ふよ)解由状
    1. [初出の実例]「畿内七道諸国司解由状事」(出典:類聚三代格‐五・大同四年(809)二月二日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「解由状」の意味・わかりやすい解説

解由状 (げゆじょう)

日本古代において,官吏交替の際,新任者が前任者との間の交替事務を完了した旨を記して発給する公文。前任者は一定期日内にこれを太政官に提出しなければならず,また解由状を得られなければ次の官職につくことができなかった。解由状がいつごろより行われたかは不明であるが,遅くとも731年(天平3)まではさかのぼる。当初はおもに財政監察意図から国司の交替時にのみ発給されていたが,厳密には守られていなかった。平安時代に入り,租税制度が弛緩して国家財政が悪化しはじめるとともに,現地での租税徴収責任者である国司に対する監察強化の一環として解由制度励行が強調され,解由状の監察を目的とする勘解由使(かげゆし)が太政官の内局として設置された。また809年(大同4)には中央の諸官司の官吏交替にも解由制度が適用されることとなり,官吏全般に対する監察制度となった。《延喜式》によれば解由状は2通作成され,太政官を通じて,1通は式部省に送られて官吏の勤務評定の資料とされ,他の1通は勘解由使に下して内容を監察した。解由状の書式は《延喜式》に定めるが,時代を追うとともに書式も多様化し,《朝野群載》には11~12世紀ころの4種の書式を載せている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「解由状」の意味・わかりやすい解説

解由状
げゆじょう

史料上では単に解由とも記される。奈良・平安時代に官吏が交替する際、新任者が前任者に交付する事務引き継ぎの終わったことを示す証明書。とくに国司(こくし)の場合が有名で、120日以内に解由状が新任国司から前任者に渡され、これが太政官(だいじょうかん)に上申されて承認を受けることで交替が完了した。解由状のない前任国司は帰京を厳禁され、手続が完了しないと次に任用されないことになっていた。そのため新任者と前任者との間で争いが起きたときは両者の間で引き継ぎ未終了の旨を記した「不与(ふよ)解由状」が作成された。この制度では、国司のなかに、解由状を得られぬまま任期終了後も地方にとどまり百姓に乱妨(らんぼう)を働く者がいたので、842年(承和9)に、解由状のない国司の入京がいったん許されたが、6年後ふたたび禁じられた。なお、1025年(万寿2)には、着任する以前に、前任者に「白紙の解由」状を渡した国司の例があるが、詳しい事情は不明である。

[川島茂裕]

『阿部猛著『摂関政治』(教育社歴史新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「解由状」の意味・わかりやすい解説

解由状【げゆじょう】

古代官吏の交代の際,新任者が前任者との間の交代事務を完了した旨を記して発給した公文。前任者はこれを太政(だいじょう)官に提出して,次の官職に就くことができた。4世紀にはみえ,当初財政監察の意図から国司交代時のみに発給され,のち国司の監察強化のために解由状を監察する勘解由使(かげゆし)も設置された。809年以降は官吏全般に解由制度が適用されるようになった。
→関連項目上野国交替実録帳

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「解由状」の解説

解由状
げゆじょう

律令制下,国司などの任務交代のときの事務引き継ぎ文書
新任者が前任者に不正や渋滞の事実がないことを証明した文書で,前任者はこれを上司に提出して任務完了となった。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「解由状」の意味・わかりやすい解説

解由状
げゆじょう

日本の律令時代の公文書の一形式。国司など内外の官吏が任期を終え交代する際,前任者の任期中の事務取扱いに懈怠のない旨を記して,新任者が前任者に渡した引継ぎ文書。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の解由状の言及

【勘解由使】より

…〈とくるよしかんがふるつかさ〉ともいう。8世紀後半以降,地方行政の弛緩が目だちはじめ,国司に対する監督が強化されたが,その一環として,国司交替の際に前任者が交替完了の証明のため発給して後任者に与える解由状(げゆじよう)の制度の強化がはかられた。それにともなう事務処理および解由状の勘査を行うために設置されたのが勘解由使である。…

※「解由状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android