言語障害教育(読み)げんごしょうがいきょういく

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

言語障害教育
げんごしょうがいきょういく

言語に障害のある人を対象に行われる教育。言語障害について、アメリカのウェスタンミシガン大学教授バン・ライパーCharles Van Riper(1905―94)は、1972年、「(その人の)話しことばが他の人々から非常にかけ離れているので、話しことばそのものに聞き手の注意がひかれたり、コミュニケーションが妨害されたり、話し手が不適応に陥ったりするとき、言語に障害があるという」と定義している。言語の障害には、音声機能の障害や言語機能の障害が含まれ、構音障害(発音のためのあごや舌などの位置や動きに関する障害)、吃音(きつおん)、声の障害、また、口蓋裂(こうがいれつ)、脳性麻痺(のうせいまひ)、言語発達遅滞、聴覚障害などによる障害があげられる。ほかに、小児失語症や情緒障害に伴う言語障害を加えることもある。[草薙進郎・四日市章]

教育と留意点

日本では言語障害児の教育のために、言語障害児を対象とする特別支援学級(一般に「ことばの教室」という)が小・中学校に設置されている。1958年(昭和33)仙台市立通町(とおりまち)小学校に最初に設置されて以来、徐々に増加していった。当初は、対象児を終日(全時間)学級に固定して指導する「固定式」であったが、1965年ごろから、通常の学級(原学級)で授業を受け、必要な時間だけ言語や発音の学習のために、専任教師のいる学級に通級してくる「通級制」がとられるようになった。1993年度(平成5)には「通級による指導」が制度化され、「通級指導教室」が設置されるようになった。
 教育は、個々の児童・生徒の言語障害の特性に応じて実施する必要がある。
 「構音障害」の指導としては、聴覚を活用する指導、構音の指導のほか、心理療法も必要とされる場合がある。
 「吃音」は、ことばのリズムの障害であるが、一次性吃音(自分のことばについて意識していない)と二次性吃音(意識している)に分けられる。初期の吃音は、まず家族の態度や言語環境の改善を図り、遊戯療法も行う。二次性吃音では、症状改善のための指導と心理療法を組み合わせて実施する。
 「声の障害」は、声の高低、大小、抑揚、質の異常として表れる。指導は、発声の練習、聴覚の利用や、ときには心理療法も有効である。
 「口蓋裂」では、声が鼻に抜けてしまったり、のどを締め付けるような声になったりする。指導は、聴覚の活用による練習や呼吸・構音の練習が重要である。
 「脳性麻痺」は、音声器官のコントロールが不十分なため、構音の不明瞭(ふめいりょう)さ、リズムの障害が生じる。指導は、言語発達の促進、表現意欲の喚起、発音・発声の練習が中心となる。
 「言語発達遅滞」は、知的な遅れ、情緒障害、環境的な要因などから生じる。指導は、言語発達の促進、感覚・運動機能向上の指導、生活面での指導などを総合的に行う必要がある。
 このように、言語障害児への指導は、言語障害の改善という主要な目標をもつが、それは単にことばの異常や問題点だけを扱うものではなく、友達や他者とのコミュニケーション関係、人間関係の調整も含み、学校教育のすべての領域と密接な関連のもとに実施する必要がある。したがって、対象児の在学する通常の学級の担任の配慮が必須(ひっす)となる。[草薙進郎・四日市章]

相談機関

言語障害は早期発見、早期指導が重要である。相談機関には、言語障害児を対象とする特別支援学級(小学校では幼児の相談にも応じる場合がある)のほかに、特別支援教育センター、保健センター、障害・福祉センター、病院、民間のクリニックなどがある。[草薙進郎・四日市章]
『内須川洸他編『講座 言語障害治療教育』全6巻(1982・福村出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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