芸能や武道における相伝認可の種目をいう。相伝の種目は秘事,秘曲などの性格をもち,師匠の許しを得なければ習得できない。これらの秘事や秘曲を許物,あるいは許しと呼ぶが,茶道では伝授物(相伝物),平曲では秘事,能・狂言では習物(習(ならい))などという。許物の曲や段階は流儀や流派によって違いがある。芸能の伝授には,伝統的に秘事観念があり,技芸の相伝は特殊能力の分与と考えることから,極意,奥義,秘儀,秘技,秘伝,秘曲などという性格が生じ,これが許物の制度となった。近世以降家元制度(家元)が発達したことから,家元は秘事・秘伝に関する相伝権(免許権)を独占管理するようになり,家元に伝授料を支払って免許状を受ける。弟子は免許状をとって教授権を得,名取(師範)になることはできるが,免許状の発行はできない。許物が伝授されると,それに従った装束や持ち物が許されることもある。
執筆者:上原 輝男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報