許物(読み)ゆるしもの

精選版 日本国語大辞典 「許物」の意味・読み・例文・類語

ゆるし‐もの【許物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 罪人を許すこと。赦免恩赦
    1. [初出の実例]「ふるきためしのありけるとかやとて、ゆるしものなん侍りけり」(出典:古今著聞集(1254)二)
  3. 荘園領主から得分として認められたもの。
    1. [初出の実例]「下司職之内有限御許物於給候外者、於庄内事大小事雖何事候、不候」(出典醍醐寺文書‐嘉吉二年(1442)三月二〇日・有間教実請文案)
  4. 芸道で、師から免許を受けて学習する曲目技芸
    1. [初出の実例]「其年の春狂言に上せたところ頗る人気に投じ連日の大入を占め爾来市川家の許(ユル)し物(モノ)となった」(出典:江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「許物」の意味・わかりやすい解説

許物 (ゆるしもの)

芸能や武道における相伝認可の種目をいう。相伝の種目は秘事,秘曲などの性格をもち,師匠の許しを得なければ習得できない。これらの秘事や秘曲を許物,あるいは許しと呼ぶが,茶道では伝授物(相伝物),平曲では秘事,能・狂言では習物(習(ならい))などという。許物の曲や段階は流儀流派によって違いがある。芸能の伝授には,伝統的に秘事観念があり,技芸の相伝は特殊能力の分与と考えることから,極意奥義秘儀,秘技,秘伝,秘曲などという性格が生じ,これが許物の制度となった。近世以降家元制度(家元)が発達したことから,家元は秘事・秘伝に関する相伝権(免許権)を独占管理するようになり,家元に伝授料を支払って免許状を受ける。弟子は免許状をとって教授権を得,名取(師範)になることはできるが,免許状の発行はできない。許物が伝授されると,それに従った装束や持ち物が許されることもある。
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