土地所有者が作物の全栽培期間にわたる耕作を他の経営体に委託し、その代償として一定額の料金(委託料)を支払う土地利用形態。ただし、土地所有者が農地法(昭和27年法律229号)に規定された許可を得ずに小作料を受け取って他の経営体に耕作させる実質的な賃貸借(いわゆるヤミ小作)も、請負耕作とよんでいる。前者が本来の請負耕作であり、後者は賃貸借型の請負耕作というが、いずれの形態でも、土地所有者は委託者、耕作者は受託者とよばれる。なお、農作業の一部を他に委託するのは作業請負とよばれる。
賃貸借型請負耕作は、兼業化、機械化の進展のなかで1965年(昭和40)以降増加してきた。労力不足で耕作ができなくなった兼業農家が、機械の効率的利用や家族労力の活用のために規模拡大を望む専業農家などに、耕作を委託するようになったのである。その際、農地法を通じた正規の賃貸借とせずに請負耕作にするのは、耕作権の強化を恐れる土地所有者の意向からである。したがって、請負耕作における耕作者の権利は弱く、土地所有者の意向によっていつでも契約は解除され、小作料も一般に高率高額である。しかし、耕作者は請負耕作によって地域の他産業労賃並みの労働報酬を得ており、土地所有者と耕作者との間には第二次世界大戦前の地主・小作関係のような人格的従属関係はない。
この請負耕作が全国的に増加し、それを通じて農地流動化が進み、一部の経営が大きく規模拡大していることに着目した政府は、1975年から、期限がきたら許可なしで貸借を終了できる農地賃貸借の権利(利用権)を新設して耕作権を弱め、請負耕作という形をとらなくとも土地所有者が安心して土地を貸せるようにし、1980年には農用地利用増進法(昭和55年法律65号。1993年に全面改正され、農業経営基盤強化促進法となる)を制定して利用権に基づく農地流動化の促進を図ることにした。その結果請負耕作は減少し、現在は利用権に基づく賃貸借が主となっている。
[酒井惇一]
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…厳密な法律論はともあれ,法律上の事業として展開された農協による農地賃貸借の事実上の仲介は,農地法外の農地賃貸借に半ば公認の道を開いたともいえる。それゆえ,この事業の普及に応じて,従来〈請負耕作〉などと表現されていた,農民間の農地法の手続をしていない農地賃貸借は,農協が仲介する場合はもちろん,そうでない場合にも,ある一定の期間だが,〈経営受委託〉あるいは〈経営委託〉〈経営受託〉といわれることが多くなったのである。
[請負耕作と農地賃貸借]
請負耕作は,歴史的にみると,つねに法律の規定を免れようとするものとして登場している。…
※「請負耕作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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