豊明節会(読み)とよのあかりのせちえ

改訂新版 世界大百科事典 「豊明節会」の意味・わかりやすい解説

豊明節会 (とよのあかりのせちえ)

豊明は宴会の意で豊明節会とは大嘗祭新嘗祭(にいなめさい)ののちに行われる饗宴をいう。天皇豊楽院,または紫宸殿に出席して行われる新穀供御の神事大嘗祭,新嘗祭はともに原則として11月の下の卯の日に行われるが,大嘗祭では次の辰の日を悠紀(ゆき)の節会,巳の日を主基(すき)の節会とし,3日目の午の日が豊明節会となる。新嘗祭では辰の日に行われ,辰の日の節会として知られた。当日は天皇出席ののち,天皇に新穀の御膳を供進。太子以下群臣饗饌をたまわる。一献で国栖奏(くずのそう),二献で御酒勅使(みきのちよくし)が来る。そして三献では五節舞(ごせちのまい)となる。吉野の国栖が歌笛を奏し,大歌所の別当歌人をひきいて五節の歌を歌い,舞姫が参入して庭前の舞台で五度袖をひるがえして舞う五節舞がある。雅楽寮の楽人が立歌の後,皇太子以下禄を拝領して儀式は終了する。文献にみえるはじめは,《続日本紀》の神護景雲2年(768)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊明節会」の意味・わかりやすい解説

豊明節会
とよのあかりのせちえ

新嘗祭(にいなめのまつり)の後にくる辰(たつ)の日に行う饗宴(きょうえん)で、新穀供御の神事。その年の稲を神に供え、天皇が初めて召し上がる日でもある。天皇が豊楽院(ぶらくいん)あるいは紫宸殿(ししんでん)に出御し、皇太子以下群臣に酒などを賜り、吉野の国栖人(くずびと)たちに歌笛を奏させる。また大歌所(おおうたどころ)の別当が歌人を率いて五節の歌をうたい、五節舞姫が舞台で五節舞を舞う。この行事は大化改新(645)後まもなく、天武(てんむ)、聖武(しょうむ)天皇のころに行われていたが、応仁(おうにん)の乱(1467~77)後一時中絶した。そして1688年(元禄1)に再興されている。その後、1740年(元文5)になると、儀式も完全に再現されるようになった。

山中 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「豊明節会」の意味・わかりやすい解説

豊明節会
とよのあかりのせちえ

奈良時代中期以後に整備されたと思われる宮中の重要な年中行事。平安時代には,元日,白馬 (あおうま) ,踏歌 (とうか) ,端午とともに五節会 (ごせちえ) の一つに数えられた。その語意は,「とよ」は美称で,「あかり」は酒を飲んで顔の赤らむことをいい,宴会のことをさす。新嘗会 (しんじょうえ) の翌日,すなわち 11月中の辰の日,大嘗会のときはその第3日目の午の日,天皇が豊楽殿 (のちには紫宸殿) で新穀を食べ,皇太子以下諸臣にも賜わり,賜宴ののち舞楽があり,群臣に禄を賜わり,叙位なども行われた。この日,吉野の国栖 (くず) の御贄 (みにえ) 奉献,五節の舞なども行われ,舞楽には,吉志舞,王節舞などが演じられた。

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百科事典マイペディア 「豊明節会」の意味・わかりやすい解説

豊明節会【とよのあかりのせちえ】

古くから宮中で行われた年中行事。新嘗(にいなめ)祭の翌日辰(たつ)の日,天皇が豊楽(ぶらく)殿(のちの紫宸(ししん)殿)に出て,新穀を食し,諸臣にも賜った儀式。五節舞(ごせちのまい)などの歌舞があり,賜禄・叙位などの儀式も行われた。大嘗(だいじょう)祭では3日目の午(うま)の日が豊明節会となる。
→関連項目節会

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「豊明節会」の解説

豊明節会
とよのあかりのせちえ

新嘗祭の翌日の辰日,または大嘗祭3日後の午日に,天皇臨席のもとで行われる公的な宴会をいう。新嘗祭では,祭に献上された白酒(しろき)・黒酒(くろき)を用いる直会(なおらい)の要素もあった。節会では,国栖(くず)の奏,御贄(おにえ)献上(大嘗祭は久米舞などの歌舞奏上が加わる),さらに大歌・五節舞・立楽(同じく大和舞)が奏され,賜禄・叙位が行われた。称徳朝では西宮前殿でもよおされ,平安京では豊楽院,のち紫宸殿で行われている。

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世界大百科事典(旧版)内の豊明節会の言及

【大嘗祭】より

…(9)同巳の日,巳日の節会。(10)同午の日,豊明(とよのあかり)節会。終始7ヵ月にわたって行われるが,この祭りの核心をなすのは(7)大嘗宮の儀である。…

※「豊明節会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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