貝虫亜綱Ostracodaに属する甲殻類の総称。体は二枚貝様の背甲か殻によって,左右より完全に包まれ,この殻の中に完全に体を収めることができ,したがって小さな二枚貝とまちがうこともある。貝形類または介形類ともいう。殻の大きさ0.5~2.5mmくらいの小型の甲殻類で,淡水,海水域ともに多数の種類がある。生活様式は変化に富み,浮遊生活をするもの,底生生活をし,底質の上をはったり,近くを遊泳するものなどがある。ときに,水たまりほどの小さな陸水中に発生する種類もある一方,海岸線付近にすむものから,海溝の6500m近い深海底から採集された種類もある。体側を二枚貝様の殻によって包まれている点では,カイエビ(貝甲類)と似ているが,貝虫類では頭部と胴部の区別がやっとできるくらいで,体の分節がまったく不明りょうであり,その上,頭部に第1,2触角と大あご,小あごをもつほかは,胴部にわずか3対の胴肢しかなく,甲殻類の中ではとりわけ少数の付属肢しかもっていないことなどは,貝虫類の著しい特徴の一つである。第1,2触角は大きく,本来の感覚用のほかに,遊泳,匍匐(ほふく)などの運動や,底質を掘削することにも使われる。多くはノープリウス眼をもっているが,複眼をもつものもある。鰓(えら)はなく,呼吸は体表で行われる。ノープリウス幼生には体の左右に殻がある。現生種は4目に分類され,ウミホタル,マルカイミジンコなど1万3000種以上が知られている。殻の表面には独特な彫刻のある種類もあり,殻の形や表面の彫刻などによって種を区別することもできる。カンブリア紀以後の地層に多くの化石があり,油田の開発にも指標として重要な役目をもっている。
執筆者:蒲生 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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