貧乏神(読み)ビンボウガミ

デジタル大辞泉 「貧乏神」の意味・読み・例文・類語

びんぼう‐がみ〔ビンボフ‐〕【貧乏神】

人にとりついて貧乏にさせるという神。また、貧乏をもたらす人のたとえ。
相撲で、十両の筆頭力士の称。給金は十両でありながら、幕内力士とも取り組まされるところからいう。
[類語]死に神疫病神邪神悪神魔神鬼神

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「貧乏神」の意味・読み・例文・類語

びんぼう‐がみビンバフ‥【貧乏神】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 俗に、人にとりついて貧乏にさせるという神。乞食坊主のような姿で、老いさらばえて色青ざめ、破れた渋団扇(しぶうちわ)を持って悲しそうな姿で現われるという。また、貧乏や、不景気な事、不幸などを持ちこむ人のたとえ。近世になって現われはじめた都市的な俗信だが、焼味噌(やきみそ)のにおいを好み、いろり火種を絶やすと出るなどという俗信がある。窮鬼。びんぼがみ。
    1. [初出の実例]「門のうちへはひとりましませ ふくの神ひんほう神をつれられて」(出典:俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)墨何第一〇)
  3. 相撲番付で、十両筆頭のこと。幕内力士と取り組むことが多く、そのわりに収入は少なく、種々のことで損をするところからいう。
    1. [初出の実例]「十両取の首位なるを貧乏神(ビンボフガミ)といふ」(出典:東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「貧乏神」の意味・わかりやすい解説

貧乏神 (びんぼうがみ)

特定の人や家により憑き,貧乏をもたらす神。貧乏神にとり憑かれると食物が欠乏したり金銭に貪欲になったり思いもよらぬ妨げなどの厄災が生じたりする。貧乏神は人間の姿でちまたをさまようものと信じられ,金壺眼でとがった顎をし瘦身で,ねずみ色の単衣(ひとえ)に白い菅笠をかぶり,首から頭陀袋をつりさげた姿で描かれるのが典型的である。貧乏神は貨幣経済の発達をみた近世以後の文献や小咄・落語などに登場するが,注意されるのは貧乏神に憑かれた家でこの神を丁重にまつると逆に富や福をもたらす福神に転化することであり,こうして東京小石川の牛天神のそばの貧乏神のように流行神(はやりがみ)となった貧乏神もある。つまり,貧乏神とはいいながらその災厄をもたらすたたりの性格が鎮められれば富貴をもたらす福神となるのである。民間では,炉の灰をほじくったり炉の火をたやすと貧乏神が出るとか,焼きみそをするとそのにおいで貧乏神が来るなどという。また大阪地方の金持ちの家には〈貧乏神送り〉といって毎月晦日に焼きみそを二つ作って家中をもってまわって災厄をつけたあと川に流す風習もあったという。中国にもかつては〈送窮〉とか〈送窮鬼〉といい,大晦日や正月晦日などに家の中の貧乏神を送り出し,福禄の神を迎えて一年の幸福と安寧を祈る行事があった。唐代の《四時宝鑑》には〈高陽氏の子,好んで弊を衣(き),糜(かゆ)を食す。正月晦日,巷に死す。世々糜を作り破衣を棄て,是の日巷に祝し,貧を除くといふ〉とあり,粥を煮,破衣を捨てることで貧乏よけにしていたことがわかる。これらの習俗は,厄病神送りの一つとみることができよう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貧乏神」の意味・わかりやすい解説

貧乏神
びんぼうがみ

家に居着いてその家を貧乏にさせるという神。近世の随筆類から現れ始めた都市的な俗信である。乞食(こじき)坊主のようなしょぼくれた姿をしており、顔は青黒く、目は落ち込んで、体はやせているという。渋うちわに貧乏神がつくとか、貧乏神は焼きみそのにおいを好むとか、いろりの火種を絶やすと貧乏神が出るなどの俗信があり、焼きみそを川に流して貧乏神を送り出す作法もある。

[井之口章次]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貧乏神」の意味・わかりやすい解説

貧乏神
びんぼうがみ

家に住みつき,その家を貧乏にすると信じられる神。流通経済の発達とともに,近世以降に生じた都市的な俗信で,その名のとおりみすぼらしい姿に描かれる。貧乏神送りと称して,焼き味噌を川に流す習俗もある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「貧乏神」の解説

貧乏神

古典落語の演目のひとつ。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android