特定の人や家により憑き,貧乏をもたらす神。貧乏神にとり憑かれると食物が欠乏したり金銭に貪欲になったり思いもよらぬ妨げなどの厄災が生じたりする。貧乏神は人間の姿でちまたをさまようものと信じられ,金壺眼でとがった顎をし瘦身で,ねずみ色の単衣(ひとえ)に白い菅笠をかぶり,首から頭陀袋をつりさげた姿で描かれるのが典型的である。貧乏神は貨幣経済の発達をみた近世以後の文献や小咄・落語などに登場するが,注意されるのは貧乏神に憑かれた家でこの神を丁重にまつると逆に富や福をもたらす福神に転化することであり,こうして東京小石川の牛天神のそばの貧乏神のように流行神(はやりがみ)となった貧乏神もある。つまり,貧乏神とはいいながらその災厄をもたらすたたりの性格が鎮められれば富貴をもたらす福神となるのである。民間では,炉の灰をほじくったり炉の火をたやすと貧乏神が出るとか,焼きみそをするとそのにおいで貧乏神が来るなどという。また大阪地方の金持ちの家には〈貧乏神送り〉といって毎月晦日に焼きみそを二つ作って家中をもってまわって災厄をつけたあと川に流す風習もあったという。中国にもかつては〈送窮〉とか〈送窮鬼〉といい,大晦日や正月晦日などに家の中の貧乏神を送り出し,福禄の神を迎えて一年の幸福と安寧を祈る行事があった。唐代の《四時宝鑑》には〈高陽氏の子,好んで弊を衣(き),糜(かゆ)を食す。正月晦日,巷に死す。世々糜を作り破衣を棄て,是の日巷に祝し,貧を除くといふ〉とあり,粥を煮,破衣を捨てることで貧乏よけにしていたことがわかる。これらの習俗は,厄病神送りの一つとみることができよう。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
家に居着いてその家を貧乏にさせるという神。近世の随筆類から現れ始めた都市的な俗信である。乞食(こじき)坊主のようなしょぼくれた姿をしており、顔は青黒く、目は落ち込んで、体はやせているという。渋うちわに貧乏神がつくとか、貧乏神は焼きみそのにおいを好むとか、いろりの火種を絶やすと貧乏神が出るなどの俗信があり、焼きみそを川に流して貧乏神を送り出す作法もある。
[井之口章次]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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