車骨鉱(読み)しゃこつこう(英語表記)bournonite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「車骨鉱」の意味・わかりやすい解説

車骨鉱
しゃこつこう
bournonite

硫塩鉱物の一種。中ないし低温熱水鉱床接触交代鉱床スカルン型鉱床)中に産し、比較的晩期生成の産物自形斜方短柱状、しばしば断面が十文字形の双晶を形成する。共存鉱物が変化に富むことでも知られる。閃(せん)亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱黄鉄鉱、安四面銅鉱、硫砒鉄鉱など。日本においては、埼玉県秩父(ちちぶ)鉱山、石川県金沢市倉谷鉱山のものが有名である。双晶した個体の断面が車輪スポーク(車骨)に似ているということで命名されたドイツ語のRädelerzの訳がそのまま鉱物名となった。

加藤 昭]


車骨鉱(データノート)
しゃこつこうでーたのーと

車骨鉱
 英名    bournonite
 化学式   CuPbSbS3
 少量成分  As,Ag,Zn,Fe
 結晶系   斜方(直方
 硬度    2.5~3
 比重    5.84
 色     鋼灰
 光沢    金属
 条痕    鉄黒
 劈開    無
       (「劈開」の項目を参照)
 その他   双晶がよく発達する

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改訂新版 世界大百科事典 「車骨鉱」の意味・わかりやすい解説

車骨鉱 (しゃこつこう)
bournonite

化学式PbCuSbS3の鉱物。斜方晶系で形態は(001)の板状または柱状。しばしば(110)を双晶面とする反復双晶の結果,十字形を呈し,車の輻(や)に似ていることからこの名がある。ふつうは粒状ないし緻密な塊状として産す。割れ口は貝殻状。モース硬度3,比重5.7~5.9。鋼灰~鉛灰から鉄黒色,金属光沢,不透明。しかし赤外線に対しほぼ透明。ウルツ鉱ZnSと関係した結晶構造をもち,CuS4四面体とSbS3三角錐のつくる層の間隙にPbが入っている。最もふつうな硫塩鉱物で,重要な鉛,銅,アンチモンの鉱石。鉛とアンチモン鉱床近傍の中温性熱水鉱脈中に産す。メキシコ,ボリビア,チリ,ペルーなどに多産。日本では埼玉県秩父鉱山,北海道八雲鉱山,三重県紀州鉱山などに産す。類縁鉱物にセリグマナイトseligmannite PbCuAsS3がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「車骨鉱」の意味・わかりやすい解説

車骨鉱
しゃこつこう
bournonite

CuPbSbS3 。斜方晶系の鉱物。ヒ素 As がアンチモン Sb を交代して Sb:As=4:1 のものがある。硬度 2.5~3,比重 5.83。金属光沢,暗灰色,不透明,しばしば双晶をなし歯車状をなす。中温の熱水性の鉛,亜鉛床に産する。ブールノナイトの名は,フランスの鉱物学者 J.ブールノン (1751~1825) に由来する。

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