アプレイウス(その他表記)Apuleius

デジタル大辞泉 「アプレイウス」の意味・読み・例文・類語

アプレイウス(Lucius Apuleius)

2世紀のローマ作家。その著「変身物語」(別名黄金のろば」)は、古典ラテン語小説唯一の完全な形で現存する作品として有名。

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精選版 日本国語大辞典 「アプレイウス」の意味・読み・例文・類語

アプレイウス

  1. ( Lucius Apuleius ルキウス━ ) 二世紀のローマの哲学者、散文作家。思想的には折衷的プラトン主義を奉じる。代表作転身譜」(別名「黄金のろば」)。

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改訂新版 世界大百科事典 「アプレイウス」の意味・わかりやすい解説

アプレイウス
Apuleius
生没年:123ころ-?

2世紀に活躍したローマの著作家。北アフリカのマダウロスの出身で,初等教育カルタゴで受け,のちアテナイで哲学や修辞学を学んだ。その後イタリア,ギリシア,アジアなどを広く旅し,その間に神秘宗教や魔術に接する機会があったと考えられる。ローマにもしばらく滞在したが,アレクサンドリアへの旅の途中オエア(トリポリ)の町で熱病にかかり,このとき世話を受けたのがきっかけとなって,友人シキニウス・ポンティアヌスの母親で金持ちの未亡人プデンティラと結婚した。財産が他人の手に渡ることを不満とする彼女の親戚たちは告訴し,彼が魔術を用いて未亡人を手に入れたと主張した。これに対してアプレイウスは法廷で雄弁に自己を弁護し,無罪となった。155年ころのことで,そのときの弁論が《アポロギア弁明)》の題で残っているが,これはローマ帝政時代の法廷弁論のうち,現存する唯一の例として貴重なものである。その後の経歴はほとんどわからず,没年も不明であるが,カルタゴに住み,文学的な著作をするかたわらアフリカ各地を旅し,哲学者や修辞学者として活躍して市民の尊敬を受けたらしく,カルタゴと故郷のマダウロスの両市に彼の彫像が建てられたと伝えられる。アフリカでの多くの演説の中から抜粋した《フロリダ(名句集)》は4巻にまとめられて残っており,その他の作品としては《プラトンの教説について》および《ソクラテスの神について》と題する哲学的な著述があり,アリストテレスの作と誤って伝えられてきた《宇宙論》のギリシア語からラテン語への翻訳もあるが,主としてプラトン哲学の影響を示すこれらの作品は,思想的にもあまり重要視されていない。それよりもアプレイウスの名を有名にしているのは,魂の遍歴を描いたきわめて異色の小説で,一種の教養小説とも解せる《黄金のろば》であり,これによって後世の文学に大きな影響を及ぼしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アプレイウス」の意味・わかりやすい解説

アプレイウス
あぷれいうす
Lucius Apuleius
(125ころ―?)

古代ローマの文学者。ヌミディアのマダウラ(またはマダウルス)で町の有力者の家に生まれる。マダウラで初等教育、カルタゴで修辞学、アテネでプラトンの哲学を学ぶ。修学後ギリシアと小アジアを旅し、イシス信仰に傾倒する。しばらくローマで修辞学の教師、弁護士として働いたのち、アフリカに帰り、年上の裕福な寡婦プデンティッラと結婚。この結婚をめぐり、妻の親族から、魔術を用いてプデンティッラを誘惑したとして訴えられたが、得意の弁舌で反論し無罪となる。カルタゴで名をなし、皇帝礼拝の祭司として余生を送る。作品には、青年ルキウスがロバに変身し、さまざまな体験をしたのち女神イシスの力で人間に戻るまでを描いた伝奇小説『変身物語』(または『黄金のロバ』)、結婚をめぐって訴えられたときの反論『弁明』、アプレイウスの名句を集めた『フロリダ』、そのほか『ソクラテスの神』『プラトンとその教え』『世界について』が残っている。その文体は華やかで、古典的な表現と俗語が入り混じっている。作品は当時の人々に広く受け入れられた。

[土岐正策]

『呉茂一・国原吉之助訳『黄金のろば』全2冊(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アプレイウス」の意味・わかりやすい解説

アプレイウス
Apuleius, Lucius

[生]123頃.北アフリカ,ヌミディア,マダウロス
[没]?
ローマの著述家。カルタゴとアテネで学び,各地を旅行したのちにカルタゴと故郷のマダウロスで詩人,哲学者,修辞家として活躍。金持の未亡人プデンチラとの結婚に魔術を使ったとして訴えられたが,得意の弁舌で無罪を立証,この経過を述べた『弁明』 Apologiaは法廷弁論の見本として貴重な文献。現存する主著は小説『黄金のロバ』 Metamorphoses,『演説選集』 Florida,『プラトンの学説について』 De Dogmate Platonis,『ソクラテスの神について』 De Deo Socratis,『世界について』 De Mundoなど。

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百科事典マイペディア 「アプレイウス」の意味・わかりやすい解説

アプレイウス

ローマの作家。北アフリカ生れ。宗教的秘儀や魔術に興味をもつ。伝奇小説《黄金のろば》(通称。原題《変身物語Metamorphoses》)は,魔法によってロバに変わった青年が女神イシスに救われるまでの冒険の物語で,〈クピドとプシュケ〉の挿話を含む。他に哲学的著作もある。
→関連項目転身物語プシュケー

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アプレイウス」の解説

アプレイウス
Apuleius

125頃~?

古代ローマの文学者。北アフリカ出身。その作品『黄金のロバ』はラテン文学史上完全に現存する唯一の長編小説で,当時の宗教,風俗などを知る好史料である。他に『弁明』などの著作がある。

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世界大百科事典(旧版)内のアプレイウスの言及

【黄金のろば】より

…2世紀後半にローマの作家アプレイウスによって書かれた小説。《黄金のろばAsinus aureus》の通称で知られているが,原題の意味は〈変身物語〉である。…

【ラテン文学】より

…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…

※「アプレイウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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