1953年(昭和28)に農林漁業金融公庫法に基づいて設立された全額政府出資の政府金融機関。設立の目的は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、農林中央金庫その他一般の金融機関が融通することを困難とするものなどを融通することにあった。しかし、2005年(平成17)に出された「政策金融改革の基本方針」において「農業・林業・水産業向けの超長期低利融資機能は、資本市場が代替できない範囲に限って、残す」「食品産業向け金融は、大企業・中堅企業向けは撤退するが、中小企業向けは、10年超貸付に限定して残す」という方針が決まった。この方針に基づき、2006年の「政策金融改革に係る制度設計」に沿って、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、国際協力銀行(国際金融部門)とともに、2008年10月日本政策金融公庫(日本公庫)に統合され、当該公庫に事業承継されている(国際協力銀行は2012年4月に分離独立)。統合されたとはいえ、民間金融だけではファイナンシャル・ギャップを生じやすい分野への専門的金融の必要性は変わらないことから、農林漁業金融公庫の事業そのものは日本公庫の「農林水産事業」として引き継がれている。
[前田拓生]
農林漁業に対して,農林中央金庫やその他の民間金融機関では困難な長期・低利の資金を融通し,生産力の維持増進をはかるために,農林漁業金融公庫法に基づき全額政府出資で設立された政府系金融機関(特殊法人)。農林漁業の投資,とくに土地改良投資を促進するために財政補助による低利資金を融資する制度は古くからあるが,1951年に農林漁業資金制度が特別会計として発足し,その業務を受けついで,53年4月に開業した。当初は政府出資金を資金源としたが,現在は主として大蔵省資金運用部からの借入金を貸し付けている。融資条件は長期・低利であることが法律で規定されているため年々欠損を生じ,国の一般会計から補給金を受けている。2008年10月日本政策金融公庫に統合された。なお04年3月末現在,資本金3116億円,融資残高3兆4429億円。
→農業金融
執筆者:荏開津 典生
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…100%政府出資の政府金融機関で,国民金融公庫,住宅金融公庫,農林漁業金融公庫,中小企業金融公庫,北海道東北開発公庫,環境衛生金融公庫,公営企業金融公庫,中小企業信用保険公庫,沖縄振興開発金融公庫がある(1996年末現在)。これらの公庫は,おもに財政投融資資金などの政府資金を,それぞれの公庫が担当する特定分野に低利で貸し付け,政府が行政目的を遂行する一助にされる。…
…これには組合系統金融(単に系統金融ともいう)とそれを補完する制度金融(〈政策金融〉の項参照)とがある。前者の頂点に立つのが農林中央金庫(農林中金),後者のそれが農林漁業金融公庫(農林公庫)であり,大手資本には一般金融機関が応ずる。戦前期からの歴史をもつ系統金融機関および農林公庫は,1950年代前半に制度的骨組みを整備し,高度成長期に躍進する。…
…これは農業発展に必要な長期・低利の資金を供給するために,財政資金を貸し付けたり,財政で利子補給を行ったりするものである(政策金融)。土地改良事業に対する長期・低利の融資は明治の末年から行われていたが,1953年にはそれを主務とする農林漁業金融公庫が政府系金融機関の一つとして設立された。その後同公庫は個別農業経営の投資資金をも融資するようになり,現在では農林漁業金融公庫の農業向け資金は制度金融の柱の一つになっている。…
※「農林漁業金融公庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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