2001年(平成13)まで置かれていた大蔵省(現財務省)の組織。郵便貯金や各種特別会計の準備金および余裕金を資金運用部資金として統合管理し、その運用を図る政府組織であったが、2001年4月廃止となり、その事業は財政融資資金に引き継がれた。
旧資金運用部は、1885年(明治18)に設置された大蔵省預金部が前身で、1951年(昭和26)に資金運用部資金法が制定され、それに基づいて大蔵省の資金運用部が創設された。資金運用部資金は、国の制度によって、国の信用に基づいて集められた資金であり、2000年(平成12)12月末の時点で、資産総額は439兆6626億円にのぼり、うち保有有価証券期末残高は85兆9558億円、長期国債72兆6823億円(16.5%)、一般会計および特別会計貸付99兆2414億円(22.5%)、政府関係機関貸付116兆0518億円(26.4%)、公団・事業団(特殊法人)等貸付71兆0344億円(16.1%)、地方公共団体貸付69兆5318億円(15.8%)であった。
2000年度末における資金運用部預託金残高は、427兆8506億円。このうち郵便貯金および郵便振替は247兆0079億円で57.7%を、厚生保険特別会計は131兆5206億円で30.7%を占めた。債券および貸付金の残高は、431兆9407億円であり、このうち債券は85兆9558億円、貸付金は345兆9849億円であった。
資金運用部特別会計は、資金運用部資金の運用に伴う歳入歳出を一般会計と区分して経理するために設けられていたものであり、歳入とは資金運用部資金の運用利殖金および付属雑収入であり、歳出とは資金運用部預託金の利子、資金運用部資金の運用損失金、運用手数料、事務取扱費等である。
財政投融資制度は、大蔵省資金運用部が郵便貯金などの資金を全額預かり、資金運用部から特殊法人(公庫や公団など)に融資する制度であった。特殊法人は、この資金を使って高速道路や空港などを建設する大型事業に活用した。これまで特殊法人は、資金運用部から自動的に資金の流入を受けており自主的な資金調達を行う必要がなかったため、市場のチェックを受けることがなく経営が不透明であるといわれてきた。そのため、2001年度に財政投融資の抜本的見直しが行われ、資金運用部は廃止され、その継承組織として財政融資資金が新設された。
[林 正寿]
資金運用部資金法によって創設された制度で,資金運用部資金の管理・運用を行う国の金融機構ともいうべきもの。その収入・支出は資金運用部資金特別会計によって経理されている。郵便貯金や厚生年金・国民年金の保険料など国の制度・信用を通じて集まった資金は,資金運用部資金(これを単に資金運用部と表現することもある)として一元的に統合・管理され,公共の利益の増進に寄与するよう運用されている。資金運用部は,このような資金運用部資金の管理運用権限を有する大蔵大臣を長とする一種の国営金融機関と考えることもできる。その資金量は大手都銀をはるかに上回る。
沿革的には,明治初期の財政制度の確立過程で,1872年(明治5)国の諸積立金準備金として利殖運用のため用いることとされ,76年に定められた〈準備金取扱規則〉において大蔵省国債寮で預金を預かり,これを運用するという仕組みが定められ,これが資金運用部の原型となった。1875年に発足した郵便貯金は,78年より大蔵省に預けられて運用されることとなり,85年には大蔵省預金部が設立された。預金部の資金は,主として国債に運用されたが,明治末期以降,地方公共団体や金融債を通じて産業資金にも運用されることとなった。第2次大戦後の1951年に資金運用部資金法および資金運用部資金特別会計法が制定され,現在の資金運用部がスタートした。現在,資金運用部に預託されている資金は,(1)郵便貯金,(2)厚生年金等公的年金制度の積立金,(3)その他の特別会計の積立金・余裕金である。
資金運用部資金は,有償の資金であるとともに公共的な資金であるため,〈確実且つ有利な方法〉で運用することにより〈公共の利益の増進に寄与〉せしめることが義務づけられており,国,地方公共団体,公社,公庫,公団等を対象に投融資(財政投融資計画)されている。資金運用部資金のうち,その運用期間が5年以上にわたるものについては,特別会計予算の総則において国会の議決を受けることとなっている。資金運用部資金特別会計の歳入は同資金の運用利殖金と雑収入であり,歳出は預託金利と事務取扱費等であり,この損益面のみが経理されている。この特別会計は独立採算となっており,期間が7年以上の預託金利率と貸付利率が等しくされているので長期的にはおおむね均衡するが,決算上剰余金が生ずれば積み立てられ,反対に不足となれば積立金が取り崩されて補塡(ほてん)される。
2001年4月より資金運用部特別会計は財政融資資金特別会計と改められ,資金運用部資金は財政融資資金と改称した。郵便貯金,年金積立金の預託義務が廃止され,自主運用が可能となった。
執筆者:吉田 和男
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