還魂記(読み)かんこんき(英語表記)Huan-hun-ji

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

還魂記
かんこんき
Huan-hun-ji

中国,明の戯曲湯顕祖の作。正しくは『牡丹亭還魂記』。万暦 26 (1598) 年完成。南安太守の娘の杜麗娘が花園でまどろむうちに,夢で柳の枝を手に持つ青年と契り,さめてのち恋の病にかかって,その青年の面影を宿す梅の大樹のもとに葬るように遺言して死ぬ。一方,科挙におもむく途中,病気で南安に滞在する柳夢梅は,夢に現れた麗娘の願いでその墓をあばき,愛の力によってよみがえった麗娘と出会い,その後麗娘の両親の反対を乗越えて結ばれる。洗練された表現と緊密な構成をもつ明代戯曲の代表作。偽善的な礼教のきびしい束縛を,死をかけた愛によって打ち破った麗娘の積極的な生き方は,当時の女性層に大きな衝撃を与えたといわれる。

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百科事典マイペディアの解説

還魂記【かんこんき】

中国,明代の戯曲。正称は《牡丹亭還魂記》。湯顕祖(とうけんそ)の作。南宋の一地方太守の娘が夢に青年と契り,恋い焦がれて死ぬが,青年の愛の力で再生し結ばれる。封建的礼教を信じる父親の監視のもとに,娘の心理がリアルに追求され,明代伝奇の代表作とされる。
→関連項目戯文

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大辞林 第三版の解説

かんこんき【還魂記】

中国、明代の戯曲。湯顕祖作。杜麗娘とれいじようは夢に見た青年を恋して死ぬが、冥界で許されて三年後に魂のみこの世に戻る。彼女を夢に見て慕う青年があって深く契り、ついには肉体も蘇生して幸せに暮らす。明曲の代表作。牡丹亭ぼたんてい。牡丹亭還魂記。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

還魂記
かんこんき

中国、明(みん)代の戯曲。55齣(せき)(幕)。湯顕祖(とうけんそ)の作。一名「牡丹亭(ぼたんてい)」。杜麗娘(とれいじょう)が夢のなかで青年柳夢梅(りゅうむばい)と出会い、花園の牡丹亭で契りを交わす。また柳夢梅も麗娘を夢にみて、慕わしく思うが、現実には会えないままに、麗娘は恋煩いのあげく他界する。しかし思慕の情は変わらず、亡魂が夢梅のもとに通い続け、ついに墓中より回生することができて、現世でめでたく夫婦になる、というのが大筋。湯顕祖は羅汝芳(らじょほう)や李贄(りし)から強い影響を受け、人間の真実の姿、男女の愛情を強調しようとしたが、未婚の男女の私通を正当化するのは、社会の倫理道徳の通念に反することであるので、まず夢のなかの場面を設定し、2人の幸福が現世で実現することを観客が期待するよう巧みに筋を運ぶ。夢と現実、幽界と明界との交錯した構成をとり、これを典雅で美麗な文字で綴(つづ)った。恋愛至上主義の文学というべく、青年男女の喝采(かっさい)を浴び、明代戯曲の最高傑作に推されている。[岩城秀夫]
『岩城秀夫訳『還魂記』(『中国古典文学大系53 戯曲集 下』所収・1971・平凡社)』

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