郵政省が〈郵便年金法〉(1949公布)に基づき事業を行う国営の任意の年金保険。郵便局で申し込める。この年金制度は簡易に利用でき,なるべく安い掛金で提供することによって,国民の経済生活の安定および福祉の増進をはかることを目的としている。1981年の改正により新しい制度がスタートした。この〈新郵便年金〉には,(1)保障期間付据置終身年金と(2)定期年金とがある。(1)は年金受取人の生存期間中ずっと年金が支払われるもので,年金支払開始時期を55歳から5歳きざみで70歳までのいずれかに決めることができる。また年金受取人が死亡した場合でも,15年の保障期間中(70歳から受取開始の場合は10年)ならば,遺族など継続受取人にその残りの期間年金が支払われる。この年金は基本年金部分と掛金を運用して得られる配当金による積増年金部分があり,それぞれが年3%の複利で逓増していく。掛金の払込期間は3年以上20年までである。(2)は一定金額の年金が5年ないし10年間支払われるもので,掛金の払込期間は3年以上10年までである。また配当金が年金の最終支払日に支給される。郵便年金には合計で72万円(終身年金では基本年金部分)まで加入できる。年金の支払は3ヵ月分ずつの後払いで,指定した郵便局で受けとれる。また掛金は年掛けと月掛けがあり,年掛けのほうが払込額が1ヵ月分少なくてすむ。
この郵便年金制度は1926年から始まり,第2次大戦後の49年に新たに発足したものである。しかし戦後の経済事情の変化などにより不評となり,68年ころからは新規契約の募集を停止していた。また戦前からの契約も,激しいインフレのため当初の目的を果たせなかった。このような経過のなかで81年に改正されたものである(88年9月より,分割払いに加えて一時払い型もできた)。
執筆者:黒田 満 91年に簡易生命保険のうちの年金保険という位置付けに制度が改められ,郵便年金の名称は廃止された。なお2001年の省庁再編によって郵政省が総務省となり,同省の外局である郵政事業庁が簡易保険事業を行ったが,03年4月から新たに設立された日本郵政公社が事業を行なった。さらに郵政民営化に伴って07年10月に日本郵政グループの株式会社かんぽ生命保険(かんぽ生命)に引き継がれた。
執筆者:編集部
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郵政省が運営していた国営の任意の個人年金保険。1926年(大正15)の郵便年金法により発足。第二次世界大戦後は、インフレなどにより開店休業の状態になり、1968年(昭和43)ごろからは新契約の募集を停止していたが、高齢化の進展に伴う個人年金に対するニーズの高まりに対応して、1981年に新郵便年金が発足した。さらに、1991年(平成3)には、生涯保障ニーズに対応するために郵便年金制度が簡易生命保険制度に統合され、法律も簡易生命保険法に統合され、郵便年金は「簡易生命保険の年金保険」となり、法律上の郵便年金という名称はなくなった。なお、簡易生命保険を含む郵政3事業の所管は、2001年1月の省庁再編で郵政省から総務省郵政事業庁へ移り、さらに2002年の日本郵政公社法により2003年4月から日本郵政公社となったが、2005年の郵政民営化関連6法により、2007年10月から持株会社である日本郵政株式会社のもとに4社に分割され、生命保険の事業は日本郵政株式会社の子会社である株式会社かんぽ生命保険に継承された(簡易生命保険法は廃止)。ただし民営化以前に取り交わされた政府保証のある簡易生命保険契約については、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が管理を行っている。
[山崎泰彦 2016年9月16日]
『山口修編『創業75年簡易保険事業史稿』(1991・簡易保険郵便年金加入者協会)』▽『郵政事業庁簡易保険部監修『簡易保険事業概説』(2002・国際通信経済研究所郵政教育センター)』
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