酸化マンガン(読み)サンカマンガン

化学辞典 第2版の解説

酸化マンガン
サンカマンガン
manganese oxide

MnO,Mn3O4,Mn2O3,MnO2およびMn2O7などが知られている.酸化状態の低いMnOは塩基性酸化物,酸化状態の高いMn2O7酸性酸化物で,中間のMnO2などは両性酸化物である.【】酸化マンガン(Ⅱ):MnO(70.94).一酸化マンガンともいう.天然には緑マンガン鉱として産出する.炭酸マンガンを水素または窒素中で焼くか,二酸化マンガンヒドラジンで還元すると得られる.灰緑色の粉末.塩化ナトリウム型構造.密度5.18 g cm-3.融点1650 ℃.水素還元を受けにくい.塩基性酸化物で,塩酸,硝酸,硫酸などに溶けて,マンガン(Ⅱ)の塩を与える.触媒,陶磁器,乾電池,媒染剤,磁性材料の原料などに用いられる.[CAS 1344-43-0]【】酸化マンガン(Ⅲ):Mn2O3(157.87).三酸化二マンガンともいう.α形とγ形の2変態がある.α形はMnO2を酸素中で550~900 ℃ に加熱すると得られる.天然にはブラウン鉱として産出する.黒色の立方晶系結晶.密度4.81 g cm-3.γ形はMnO(OH)を真空中で250 ℃ に加熱して得られる.正方晶系の黒色の粉末.不安定型で加熱によりα形にかわりγ形に戻らない.空気中で940 ℃ 以上に加熱すると O2 を放出してMn3O4となる.ガラス工業,窯業用着色剤などに用いられる.[CAS 1317-34-6]【】酸化二マンガン(Ⅲ)マンガン(Ⅱ):Mn3O4(228.81).四酸化三マンガンともいう.天然には,ハウスマン鉱として産出する.金属マンガンまたはマンガン化合物を空気中で940 ℃ 以上に強熱すると得られる.黒色の結晶.密度4.72 g cm-3.融点1564 ℃.酸素を吸収しやすく,組成は非化学量論的である.濃塩酸に溶けて塩素を発生して Mnを生じる.熱濃硫酸には酸素を発生して溶け Mnとなる.鉄鋼添加剤に用いられる.[CAS 1317-35-7]【】酸化マンガン(Ⅳ):MnO2(86.94).二酸化マンガンともいう.[CAS 1313-13-9]【】酸化マンガン(Ⅶ):Mn2O7(221.87).七酸化二マンガンともいう.冷濃硫酸に過マンガン酸カリウムの粉末を少量ずつ加えて得られる緑色溶液に,注意して冷水を加えると,暗褐色の油状液として得られる.密度2.4 g cm-3.液体空気で冷やすと暗緑色の結晶となる.このものは-5 ℃ までは安定であるが,0 ℃ では酸素を発して分解する.常温では爆発的に分解し,MnO2 + O2 となる.有機物に触れると爆発する危険物質である.[CAS 12057-92-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

酸化マンガン
さんかマンガン
manganese oxide

酸化数2,3,4,7の化合物がある。酸化マンガン (II) MnO は緑マンガン鉱,四酸化二マンガン (III) マンガン (II) Mn3O4 は黒マンガン鉱,酸化マンガン (III) ,三酸化二マンガン Mn2O3 は水マンガン鉱,酸化マンガン (VI) ,二酸化マンガン MnO2軟マンガン鉱として天然に産出する。これらの酸化物のうち,特に重要なのは二酸化マンガンで,黒褐色の粉末である。加熱すると酸素を発生し,四酸化三マンガンを残す。塩酸を除く酸には難溶。塩酸と反応して塩素を発生し,塩化マンガンとなる。強烈な酸化剤で,有機物,硫黄,硫化物などと加熱したり,摩擦したりすると爆発し危険。酸化剤,マンガン鋼の製造,乾電池,陶磁器用絵具,紫色ガラスの製造,顔料染色,電子工業などに広範な用途がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

酸化マンガン
さんかまんがん
manganese oxide

マンガンと酸素の化合物で、マンガンの酸化状態により次のものが普通に知られる。

(1)酸化マンガン(Ⅱ) 一酸化マンガンともいう。天然に緑(りょく)マンガン鉱として産出。高級酸化物を水素で還元すると得られる。灰緑色粉末または緑黄色結晶で、岩塩型構造。塩基性酸化物で、酸に溶けてピンク色のマンガン(Ⅱ)塩を生じる。

(2)酸化マンガン(Ⅳ)二マンガン(Ⅱ) 四酸化三マンガンともいう。ハウスマン鉱として産出。ほかのマンガン酸化物を空気中で約1000℃に熱して得られる。黒色金属光沢のある結晶。正方晶系、ひずんだスピネル型構造で、Mn2MnO4にあたる。化学式Mn3O4、式量228.8。塩酸と熱すると塩素を発して塩化マンガン(Ⅱ)となる。

(3)酸化マンガン(Ⅲ) 三酸化二マンガンともいう。ブラウン鉱として産出。酸化マンガン(Ⅳ)またはマンガン(Ⅱ)塩を空気中で600~800℃に熱すると得られる。黒色、立方晶系と正方晶系のものがある。

(4)八酸化三マンガン(Ⅳ)二マンガン(Ⅱ) 四酸化三マンガンを窒素‐酸素混合気体中で250~550℃に熱すると得られる。黒色晶。水に不溶。Mn2Mn3O8に相当する。

(5)酸化マンガン(Ⅳ) 二酸化マンガンともいう。各種の変態が知られており、天然にはα(アルファ)型が硬マンガン鉱として、β(ベータ)型がパイロルース鉱(軟マンガン鉱)として産出。硝酸マンガン(Ⅱ)を焼いてつくる。灰色から灰黒色の粉末。正方晶系でルチル型構造。水に溶けず、両性酸化物であるが、希酸やアルカリに作用しにくい。冷濃塩酸に溶けて暗緑色の溶液(MnCl62-)を生じるが、熱すると分解して塩化マンガン(Ⅱ)と塩素を発する。熱濃アルカリ溶液に溶けて3価(おそらくMn(OH)63-)と5価(MnO43-)を含む紫色溶液を生じる。γ(ガンマ)型が乾電池の減極剤に用いられる。ガラスの色消、触媒、マッチの原料、その他酸化剤としての用途が広い。

(6)酸化マンガン(Ⅶ) 七酸化二マンガンともいう。冷濃硫酸と過マンガン酸カリウムの反応によって得られる。化学式Mn2O7、式量221.9。暗緑褐色の油状液で、きわめて爆発しやすく危険。有機物と接触すると爆発する。水に溶けて過マンガン酸の紫色溶液を生ずる。融点5.9℃。比重2.4(20℃)。

  Mn2O7+H2O―→2HMnO4
[守永健一・中原勝儼]

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世界大百科事典 第2版の解説

さんかマンガン【酸化マンガン manganese oxide】

酸化数II,III,IV,VIIのマンガンの酸化物と,IIとIIIの両方およびIIとIVの両方を含む酸化物が知られている。
[酸化マンガン(II)]
 化学式MnO。天然には緑マンガン鉱として産出。炭酸マンガン(II)MnCO3などを空気を断って加熱するか高級酸化物を水素などで還元すると得られる。緑色粉末。比重5.43~5.46,融点1650℃,モース硬さ5~6。低温で反強磁性。酸素を吸着しやすく組成はMnO1.13まで変化する。

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