明治・大正時代の経済学者。元治(げんじ)2年2月1日遠江(とおとうみ)国(静岡県)見付町に生まれる。1885年(明治18)東京大学文科大学を卒業、翌年ドイツに留学、約3年にわたり、クニース、コンラート、シュモラー、ワーグナーら新歴史学派の巨頭について経済学、社会政策学を学んだ。ついでイギリスに移り、約1年間社会問題の調査研究を行い、90年11月帰国。同年同月帝国大学法科大学教授に任ぜられ、1925年(大正14)の停年退官まで経済学を講じた。その間1896年には桑田熊蔵らと社会政策学会を創設し、中心的指導者として活動、自由主義と社会主義の双方を批判するとともに、国家による労資階級の対立調和の必要性を強調し、労働組合の育成、工場法の制定にも努力した。また、日露戦争直前の1903年には七博士の一人として対露強硬外交を主張する建議書に参加した。河合栄治郎(金井の次女国子の夫)は、彼を国家主義者にふさわしい国士であり古武士であると称している。彼の主著『社会経済学』(1902)は、イギリス自由主義経済学とドイツ歴史学派経済学を折衷したものであるが、当時日本人の手になる本格的経済原論書として天野為之(ためゆき)のそれと並ぶものであった。ほかに主著として『経済学研究法』(1912)があげられる。昭和8年8月13日没。
[多田 顯]
『河合栄治郎編著『金井延の生涯と学蹟』(1939・日本評論社)』
明治・大正期の社会政策学者。静岡県生れ。東京帝大文科大学卒業後,ドイツに留学し,G.シュモラー,A.ワーグナーらに学ぶ。1890年帰国とともに東京帝大法科大学教授。日本におけるドイツ新歴史学派経済学の先駆者で,97年設立の社会政策学会の創設者の一人である。時局問題について積極的に発言し,金銀複本位制度の採用,工場法の制定などを主張した。戸水寛人ら七博士の一人として日露開戦を訴え,中国東北部への帝国主義的進出を説いた(七博士建白事件)。社会政策論においては,社会有機体説にもとづいて社会政策の国家的意義を強調し,社会政策と帝国主義との相互補完的な関係を説き,また社会主義を個人主義の系譜を継ぐものととらえて批判した。第1次大戦後は東大法科大学から分離・独立して経済学部を発足(1919)させることに尽力し,その初代学部長を務めた。なお彼は河合栄治郎の岳父である。主著《社会経済学》(1902)。
執筆者:池田 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
明治・大正期の経済学者 東京帝国大学教授。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
(藤井隆至)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1865.2.1~1933.8.13
明治・大正期の経済学者・社会政策学者。遠江国生れ。東大卒。ドイツに留学し歴史学派の理論を学ぶ。1890年(明治23)帰国直後に帝国大学法科大学教授となり,ドイツ社会政策学にもとづき,労資協調,国家による労働者保護を主張。社会政策学会の結成,帝国学士院会員としての活動,東大経済学部の創設(初代経済学部長)のほか,工場法の必要や日露開戦論,社会主義批判など社会的発言も活発に展開した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…社会政策は資本主義体制の内部に生まれたものであって,その容認によってはじめて体制が維持されているという限りでは,資本主義体制の維持に役立ってはいるが,もともと社会政策が資本主義体制とは異質な社会的理念の産物であるからには,社会政策的獲得物が積み重ねられていけば,ついには資本主義体制を揚棄しうる道が開けてくると主張されたのである。 日本では,1890年代に金井延などによって新歴史学派の社会政策論が導入され,96年に社会政策学会の創立をみたが,大恐慌によって資本主義各国で社会政策が危機に陥った1930年代に社会政策に関する新たな理解が展開されることとなった。その代表的な理論家である大河内一男(1905‐84)によれば,近代の社会政策は,土地から切り離された貧民の浮浪化の抑止と労役場制度を中心とする労働者の育成策など資本主義の生成期にとられた労働力創出のための政策を前提とし,(1)幼少年・婦人などの過度労働を防止するための工場法,疾病・失業などの生活上の事故に対する保障としての社会保険など,労働力の継続的再生産を維持するための労働力保全策,(2)労働運動の勃興にともない,これを資本主義体制のうちに包摂していくために展開されてくる労働組合の法的承認と統制を中心とする産業平和策,の二つの類型をもっている。…
※「金井延」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新