最勝会(読み)サイショウエ

デジタル大辞泉 「最勝会」の意味・読み・例文・類語

さいしょう‐え〔‐ヱ〕【最勝会】

国家平安を祈って行われる、金光明こんこうみょう最勝王経を講ずる法会薬師寺では、3月7日から7日間行われる。

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精選版 日本国語大辞典 「最勝会」の意味・読み・例文・類語

さいしょう‐え‥ヱ【最勝会】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。南京(なんきょう)三会の一つ薬師寺最勝会ともいい、薬師寺で国家平安を祈って三月七日から七日にわたって行なわれる金光明最勝王経を講ずる法会。後に北京(ほっきょう)でも二月に円宗寺で行なわれた。最勝王経会。
    1. [初出の実例]「応㝡勝会立義得第僧等請用諸寺安居講師事」(出典:類聚三代格‐二・貞観一〇年(868)一〇月四日)
    2. 「公家より始め、藤氏の殿ばら皆加供し給ふ。〈略〉薬師寺にて最勝会七日」(出典:大鏡(12C前)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「最勝会」の意味・わかりやすい解説

最勝会 (さいしょうえ)

《金光明最勝王経(最勝王経)》を講賛して教学興隆を図るとともに,国家安穏と天皇無事息災を祈願する法会。著名なものに毎年正月8日から14日の7日間にわたって行われた宮中大極殿の最勝会がある。これは宮中最勝会とか御斎会(みさいえ)と称せられ,《初例抄》では766年(天平神護2)より恒例化し,宮中での年中行事中,第一の大会といわれた。また薬師寺の最勝会は830年(天長7)6月薬師寺仲継の発議により当寺の教学興隆に資するため,檀主直世王の上奏により始められた。毎年3月7日から13日にわたって行われ,源氏の氏人が勅使となり下向したが,供料として播磨国賀茂郡の水田70町が充てられ,興福寺維摩会(ゆいまえ),宮中御斎会とともに南都三会(さんえ)の一つとして,官僧の登竜門となった。その後慧達,平超,常全などにより興隆整備され,《延喜式》主税式によると,供料は大和,近江国よりそれぞれ黒米60石をつき,その年の正月中に寺家に送られたという。維摩会,御斎会,最勝会の竪義(りゆうぎ)を終えた僧は得業(とくごう)といわれ,またこの三会の講師を果たした僧は律師に補任された。1445年(文安2)6月の薬師寺諸堂の大風による倒壊で,以後中絶するにいたった。一方,平安京円宗寺においても1082年(永保2)2月に最勝会が開始され,当寺の法華会と法勝寺の大乗会とともに北京三会と称して,南都三会に準じ,延暦,園城両寺で隔年勤修したが,鎌倉時代末に至り円宗寺の廃寺とともに廃絶した。《最勝王経》の盛行はすでに奈良時代からみられるが,最勝会のほか最勝講と称して,国家の安泰,天皇の長寿を祈願する法会が,1002年(長保4)から毎年5月の吉日を選んで5日間,宮中で釈迦を本尊とし毘沙門天,吉祥天を脇侍として,東大,興福,延暦,園城の4寺の学僧を招いて行われ,恒例化した。仙洞(せんとう)最勝講,法勝寺最勝講とともに三講の一つに数えられたが,南北朝期以後衰退した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「最勝会」の意味・わかりやすい解説

最勝会
さいしょうえ

3月7日~13日の7日間、勅使(ちょくし)を迎え、護国の経典『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』を講じ、国家の繁栄と皇室の安泰を祈る法会(ほうえ)。宮中で正月8日~14日に行われた最勝会は御斎会(ごさいえ)といわれ、768年(神護景雲2)に始まり、802年(延暦21)最勝会と維摩会(ゆいまえ)に六宗を請(しょう)じた。現在3月に行われる最勝会は830年(天長7)奈良薬師寺で始修。それは、興福寺維摩会、宮中御斎会とともに南京三会(なんきょうさんえ)と称され、三会を成し遂げた講師は僧綱(そうごう)に任ぜられる盛儀であった。1082年(永保2)京都円宗寺でも最勝会を催し、同寺の法華会(ほっけえ)、法勝寺(ほっしょうじ)の大乗会(だいじょうえ)とともに北京(ほっきょう)三会と称され、延暦寺(えんりゃくじ)と園城寺(おんじょうじ)で隔年に営まれた。北京三会ではまず僧綱に任じてから、三会の講師を勤めた。

[西山蕗子 2017年5月19日]

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百科事典マイペディア 「最勝会」の意味・わかりやすい解説

最勝会【さいしょうえ】

仏教の法会の一つ。金光明最勝王経(金光明経)を講説して天下泰平,鎮護国家を祈る。持統天皇の693年宮中で開催されたのが初め。830年3月薬師寺で行われて以来,毎年3月7日〜13日の7日間,勅命で営まれた。維摩会(ゆいまえ)・御斎会(みさいえ)とともに南都三会ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の最勝会の言及

【法会】より

…日本では598年(推古6)4月に聖徳太子が,諸王・豪族を集めて法華・勝鬘(しようまん)の2経の講義を行ったことが知られ,仏教の興隆流布とともに各種の法会が催された。経論の主旨を究明しようとした維摩(ゆいま)会最勝会,唯識会,俱舎(くしや)会,華厳会,法華会をはじめ,国家の安泰を祈る仁王(にんのう)会,大般若会や,釈迦の入滅を追慕し報恩の意を表す涅槃(ねはん)会は,やがて一宗一寺の祖師信仰と結びついて,祖師の御影(みえ)像や堂を造って忌日に法事を行うにいたった。中世には祖先の追善冥福を祈る法会も一般化し,ときに斎(とき)(食事)の席を設けるなどして今日に至っている。…

※「最勝会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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