金神(読み)コンジン

デジタル大辞泉 「金神」の意味・読み・例文・類語

こん‐じん【金神】

陰陽道おんようどうで祭る方位の神。金気の精で、この神がいる方位に向かって土木を起こしたり、移転出行嫁取りをしたりすることを忌む。

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精選版 日本国語大辞典 「金神」の意味・読み・例文・類語

こん‐じん【金神】

  1. 陰陽道でまつる神。金気の精で、殺伐を好むおそるべき神。この神の方位は大凶方とされる。その方位は、異説が多いが、例えば、十干の甲己(こうき)の年は午・未・申・酉の方、乙庚(おつこう)の年は辰・巳・戌・亥の方、戊癸(ぼき)の年は子・丑・申・酉の方、丙辛(へいしん)の年は子・丑・寅・卯の方、丁壬(ていじん)の年は寅・卯・戌・亥の方を忌むべき方角とする。回(まわり)金神。
    1. [初出の実例]「問申金神方事、被禁忌之由承之」(出典:後二条師通記‐寛治六年(1092)六月二一日)

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改訂新版 世界大百科事典 「金神」の意味・わかりやすい解説

金神 (こんじん)

道教の方位方角に関する禁忌を踏まえて成立した陰陽道(おんみようどう)で,方位の神として恐れられたもの。金の性のゆえに金神と称された。《中右記》の1114年(永久2)の記事に,金神を忌み方違(かたたがえ)をする習俗のあったことを記し,《本朝世紀》《百練抄》《玉海》などの文献にも同様の記事がある。南北朝時代の《簠簋(ほき)内伝》には,〈金神は,巨旦大王の精魂なり〉と説き,遊行するものとされ,金神七殺の方として,甲(きのえ)己(つちのと)の年は午未申酉(うまひつじさるとり)の方,乙(きのと)庚(かのえ)の年は辰巳戌亥(たつみいぬい)の方,丙(ひのえ)辛(かのと)の年は子丑寅卯(ねうしとらう)の方,丁(ひのと)壬(みずのえ)の年は寅卯戌亥(とらういぬい)の方,戊(つちのえ)癸(みずのと)の年は子丑申酉(ねうしさるとり)の方にいると記されている。金神の遊行する方位を犯して,土木・建築・移転・旅立ち・嫁とりなどをすると,その祟り(たたり)が7人に及び,家人の数がそれに満たない時は,隣人にも祟ると言われて忌避されていた。遊行については異説もあり,《和漢三才図会》には,春は丑,夏は申,秋は未,冬は酉にあるとか,春は乙卯の日より6日は東,夏は丙午より6日は南,秋は辛酉より6日は西,冬は壬子より6日は北にいるとしている。《仮名暦略註》には,金神に陽の天金神と陰の地金神があり,後者は災厄が重いとある。金神の祟りについては,西日本を中心に修験者や祈禱師によってその信仰が広められ,家造りにあたって金神の留まる方位に呪符を埋める〈金神除け〉や,稲荷などの社にまつりこめる〈金神封じ〉が行われた。こうした信仰の強い岡山県地方に,幕末期に生まれた赤沢文治川手文治郎,のち金光大神)は,1855年(安政2),42歳の厄年の大患を契機として,日柄・方位にかかわる祟り神としての金神を,大地の神としてとらえ直す宗教的自覚に達し,〈実意丁寧神信心〉という篤実な生き方を説く金光(こんこう)教を創唱した。その根本神は,天地金乃神と呼ばれている。出口なおの創唱した大本教も,初期に金光教の影響を受け,鬼門にいる艮(うしとら)の金神による世の中の立替えを説いた。こうした祟り神や悪神の福神化の傾向は,社会変動期に現れる民衆の宗教運動の特質の一つである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金神」の意味・わかりやすい解説

金神
こんじん

忌避しなければならないと畏(おそ)れられている方位の神。陰陽五行説に起源をもつとされているが、さだかではない。現在のところ、金神に関する文献は中世の『簠簋内伝(ほひつないでん)』など限られている。それらによると、金神は遊行(ゆぎょう)するということが大きな特徴である。方位については異説があるが、たとえば、甲己(こうき)の年は午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)、乙庚(おつこう)の年は辰(たつ)・巳(み)・戌(いぬ)・亥(い)、戊癸(ぼき)の年は子(ね)・丑(うし)・申(さる)・酉(とり)、丙辛(へいしん)の年は子・丑・寅(とら)・卯(う)、丁壬(ていじん)の年は寅・卯・戌・亥の方(かた)を忌むべき方位としている。これを犯して建築や旅などをすると、金神七殺(こんじんしちせつ)といってかならず家族7人が殺される。家族が7人に満たないときはその災いが隣家に及ぶと考えられた。平安時代に盛んに行われた方違(かたたがえ)は、こうした金神説に伴って引き起こされたものである。これらの知識が修験(しゅげん)などの民間宗教者によって広められた。岡山県などを中心とする中国地方においては、金神を屋敷神として祀(まつ)る家が少なくない。金光(こんこう)教は金神を基盤として創立したものであるといわれている。

[佐々木勝]

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百科事典マイペディア 「金神」の意味・わかりやすい解説

金神【こんじん】

陰陽道における方位の神。この神のいる方に工事,移転,嫁取りなどするのを忌み,これを犯すと家族7人が殺されるという金神七殺の迷信がある。回り金神といって干支や季節で居場所が変わり,その方角は暦の注記や巫女(みこ)に見てもらって知る。金神信仰は金光教大本教にも及ぶ。
→関連項目家相方違

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金神」の意味・わかりやすい解説

金神
こんじん

陰陽道 (おんようどう) で祀る方位の神。兵戈,騒乱,水旱,病疾を司る。その遊行の方角に,土木を起し,出行,移転,嫁娶するのを忌むといわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の金神の言及

【金光大神】より

…幕府天文方渋川景祐の門人で陰陽頭土御門家の直門であった同村庄屋小野光右衛門に手習いをならい,36年(天保7)に家督を継ぎ,農事に精励,家産を回復した。生来信心深く,55年(安政2)42歳の厄年に難病を患い,金神(こんじん)の祟りを教えられたことで金神信仰を深めた。57年に実弟香取繁右衛門が神がかりをして金神の教えを説くとその熱心な信者となり,翌年にはみずからも金神の知らせを受ける身となった。…

※「金神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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