(読み)テイ

デジタル大辞泉 「釘」の意味・読み・例文・類語

てい【釘】[漢字項目]

人名用漢字] [音]テイ(漢) [訓]くぎ
〈テイ〉
くぎ。「釘頭」
くぎを打つ。「装釘
〈くぎ〉「釘目五寸釘

くぎ【×釘】

一端をとがらせた金属や竹・木などの細い棒。打ち込んで物と物とを接合・固定したり、物を掛けたりするのに用いる。「を打つ」「を抜く」
[類語]リベット

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精選版 日本国語大辞典 「釘」の意味・読み・例文・類語

くぎ【釘】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 短小な棒状の金属、竹、木などの一端をとがらせたもの。材木や板などの接合する部分に打ち込んで固定するのに用いる。
    1. [初出の実例]「用鉄二斤八両〈釘卅六隻料、一斤二両 隅鉄八枚料、一斤六両〉」(出典:正倉院文書‐天平六年(734)五月一日・造仏所作物帳)
    2. 「くぎ打つ所には、瑠璃をくぎのかたにふせ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)歌合)
  3. 門、扉などをとざし固めるためにさすもの。錠。
    1. [初出の実例]「群玉(むらたま)の枢(くる)に久枳(クギ)さし固めとし妹が心は揺(あよ)くなめかも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三九〇)
  4. 打ちつけられた釘。「釘も離れぬ」のいい方で物事の容易に離れないことのたとえにいう。
    1. [初出の実例]「おかめと我らこといとこどうしの水いらず。〈略〉くぎもはなれぬ中といひ」(出典:浄瑠璃・卯月の潤色(1707頃)下)
  5. 紋所の名。釘を模様化したもの。
  6. くぎ(釘)の折れ」の略。
    1. [初出の実例]「時々は国から釘を封じて来」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一九)

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普及版 字通 「釘」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 10画

[字音] テイ
[字訓] のべきん・くぎ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は丁(てい)。丁は釘の頭の形で、釘の初文。〔説文〕十四上に「(れんぺい)の金なり」とあって、金ののべ板をいう。また金(へいきん)といい、黄金一斤をという。金文の金の字形に含まれている隋円の平の形のものが、その金の形であろう。その形がまた釘頭に似ているので釘という。のち釘の意に用いる。

[訓義]
1. のべきん、金ののべいた、こがね。
2. くぎ、くぎうつ、くぎさす。

[古辞書の訓]
和名抄〕釘 鐵杙なり。久(くぎ) 〔立〕釘 ナツ・ツラヌ・ウツ・ウガツ・カギ・クギ

[語系]
釘・丁・tyengは同声。は〔説文〕三下に「履下を補ふなり」とあって、靴の皮底の類。すべて平らかにうちのばしたものをいう。

[熟語]
釘鞋・釘釘靴釘筋・釘・釘坐釘住・釘帖・釘頭・釘封釘鈴・釘牢
[下接語]
朽釘・金釘・施釘・帖釘・掣釘・抜釘・布釘・木釘

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改訂新版 世界大百科事典 「釘」の意味・わかりやすい解説

釘 (くぎ)

主として木材と他の材料をつなぐ接合材で,材質によって金釘,鉄釘,木釘,竹釘などがある。接合力は基盤の木材と釘との間に作用する静摩擦力である。したがって,金釘は木材中の水分によって表面が少しさびたほうが接合力が高くなる。歴史的には木釘が最も古いと思われるが,すでに青銅器時代のオリエントやヨーロッパで青銅,銅の釘が使用され,鉄釘はアナトリアでは前1000年ころに出現している。中国では戦国時代に断面が方形の鉄釘が現れ,日本でも弥生時代中期以降に鉄釘の遺品が知られ,7世紀になると古墳からの出土例も急増する。現在の鉄釘は鉄線製で,洋丸釘といわれる。しかし,明治以前の釘はすべて鍛造品で,和釘,あるいは断面が方形であるので角釘と呼ばれる。鍛造のために,和釘は一般に大型で,建築物や造船に多く用いられた。法隆寺の桁に対する垂木のとりつけに大型の和釘(最大のものは75cm)が用いられ,また《延喜式》木工寮の項には一尺釘から二寸釘までの記載があり,大型の釘が用いられたことを物語っている。しかし一方では推古朝の作といわれる赤漆文欟木厨子(せきしつぶんかんぼくのずし)の鉄金具に見るように,きわめて小型の釘も用いられた。

丸釘は頭の形と脚の長さと径によって区分され,JISで規定されている(表参照)。頭の形は浅皿形を普通とし,これを平(ひら)釘という。特殊なものに波釘,股釘などがある。釘の一種に鋲がある。画鋲,虫ピン,畳鋲,四分一(しぶいち)鋲などがあり,また材質によって鉄鋲,シンチュウ鋲,銅鋲などがあり,頭の形で平鋲,太鼓鋲などがある。古代では大型の鋲のことを鉜(ふく)といった。城門の飾りに用いられる,一般に乳(にゆう)鋲といわれるものはこの鉜のなごりであろう。丸釘は低炭素鋼を線材として製釘機にかけてつくる。頭は線材の先を少し出してたたいて成形し(ヘッディングという),その際に線材をつかんだ部分が首の下のすべり止めのすじとなる。抜けないようにするために,胴の部にらせん溝を転造でつけた釘もある。

ウツギ,ヒバ,ガマズミなどの木を細長い円錐あるいは角錐状に削り,火熱で煎(い)って硬化させたものを木釘,マダケ(真竹),ハチク(淡竹)などで同様にして作ったものを竹釘という。共に桐,杉,ヒノキなど軟材の指物細工などに用いる。木釘を使うときは続飯(そつくい)(米飯を練って作った糊)を併用する。木・竹釘使用の歴史も古く,古代には木久岐(きくぎ),木栓(もくせん)ともいい,奈良時代に櫃(ひつ)などの側板の幅矧(は)ぎ(幅接合)などに,合釘として用いられていたことがわかっている。
かすがい
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「釘」の意味・わかりやすい解説


くぎ

主として木材の結合や金物などを止め付けるために用いるもので、一般に鉄丸釘に代表される。現在では止め付ける材料および部位によって、各種のサイズや形状の釘が使われている。釘の材料は、家具や工芸品などの細工物に使われる木釘、竹釘、金釘があり、建築など木構造の接合には鉄釘、錆(さび)に強いステンレス釘、亜鉛釘、また銅釘、青銅釘、黄銅釘など、装飾性のある釘がある。日本産業規格(JIS(ジス))にはJIS A 5508として10種類の釘が定めてある。

 釘は打ち付ける材料およびその打ち付けられる基材によってサイズ、形状を決めることが必要で、たとえば木材の柱に板材を取り付ける場合、板厚の2.5~3倍の長さの釘が適しており、また釘の径は使用する板厚の6分の1以上になると割れやすくなる。杉材の場合、1本の釘の引き抜き耐力は、長さ4センチメートル程度のもので約100ニュートン(9.8kgf=重量キログラム)、長さ15センチメートルのもので約400ニュートン(39.2kgf)であるが、これも釘の打ち方や材質によって異なる。現在では枠組み工法(ツーバイフォー工法)などの普及により、機械打ちによるものが多い。

 鉄釘は、鉄線を機械によって切断し、成形したもので、釘の頭に布目をつけて釘打ちのときのすべり止めとしている。断面は主として円形であるが、四角の断面のもの、スクリューのように下地に食い込む螺旋釘(らせんくぎ)、また釘のあたまを小さくした隠し釘に使われる釘、材料の接合を目的とした波型釘、特殊鋼でつくられたコンクリート釘、カラー釘、フローリング釘、ルーフィング釘など各種の釘がある。また現在では、頭部にカラーリング(着色)して施工後も使用した釘の長さがわかるようになっているものがある。次にそのおもなものについて述べる。

(1)鉄丸釘 頭部を円形に打ち出し、その上面に布目を、また下面に適当な傾斜をつけ、首部に滑り止めの刻みをつけてから、さらに先端四面を錐(きり)状に切り落としたのを磨いたもの。長さ19~150ミリメートル、太さ1.5~5.2ミリメートル、頭部の径3.6~11.5ミリメートルの14種類がJISにより規格化されている。また太め鉄丸釘にも9種類が規格化されている。

(2)ステンレス鋼釘 ステンレス鋼の釘として、頭部の形状により平頭フラット、平頭網目付き、丸頭、ケーシング頭の4種類が規格化されている。鉄とアルミニウム合金のように接触腐食をおこすおそれのある場所や、さびを嫌う場合に用いる。長さ16~100ミリメートル、ケーシング頭の釘はボード用などに使われるので長さ25~45ミリメートルとなっている。

(3)ボード用釘 ボード用釘には石膏(せっこう)ボード用釘とシージング(内外装)用、インシュレーション(断熱、保温)用、ファイバーボード(繊維板)用の釘があり、各ボード類の特性にあわせた各種の釘が定められている。ボードを間柱など木造下地押さえに打ち付ける場合に使用する釘は、長さに対して頭部の円形が一般の釘より大きい。これに対して、下地等の取り合いから釘の長さに対して胴部分の太いものもある。

 釘の歴史は古く、洋釘は1868年(明治1)にヨーロッパから輸入された。和釘は社寺建築などで使われていたかすがいと釘が発達したもので、正倉院文書に釘の記録がみられ、『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には釘、栓(きくぎ)などの種類があげられている。当時の釘の多くは断面が四角形の角釘で、装飾的な考慮をした金著(きんきせ)釘、金泥(きんでい)釘などもあった。

[坂田種男]

『遠藤元男著『工具・器具と暮らしの文化史』(1997・つくばね舎、地歴社発売)』『保坂貴司著『住宅が危ない!シリーズ1 「釘」が危ない!』(2002・エクスナレッジ)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「釘」の意味・わかりやすい解説


くぎ
nail

木材,板などの接合材。材料により金釘,竹釘,木釘があり,また日本在来の和釘と,西洋から新技術に伴って輸入された洋釘がある。木釘はよく乾燥したうつぎ,あすなろ,かし,竹釘は淡竹 (はちく) ,真竹などでつくるが,ともに頭がなく,4角,6角などの多角形で,木製家具や屋根ふき,靴底などに用いられる。金釘は鉄,黄銅,銅などを材料に,線材から製釘機により連続的に切断,成型される。鉄釘が最も多く,目的によって亜鉛メッキやクロムメッキなどの防錆処理が施される。形状や寸法,材質によって非常に種類が多いが,板を打ちつける場合,板の厚さの 2.5~3倍の長さの釘が適し,また径が板の厚さの6分の1をこえると板が割れるので注意を要する。和釘は多くが四角形の角釘であるが,現在では特殊な場合を除いてはほとんど用いられていない。ほかに特殊なコンクリート釘やカラーネールなどもある。

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百科事典マイペディア 「釘」の意味・わかりやすい解説

釘【くぎ】

木材などの接合に用いるもの。材料により金釘,木釘,竹釘などがあるが,最も多用されるのは金釘,特に鉄釘で,ほかに銅・黄銅釘など。日本で古くから使われた角釘を主とする和釘は,明治以後,洋釘の導入ですたれた。鉄釘は普通鉄線を製釘(せいてい)機で自動的に切断,頭付けなどを行って作る。最も一般的なのは丸釘(普通釘とも)で,円形の頭部上面に網目をつけ,首部にすべり止めの刻み目をつけてある。ほかに丸小釘,スレート釘,かわら釘,逆目釘,スクリュー釘,包釘,合釘,波釘など多くの種類の特殊釘がある。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【建築金物】より

…建築に使用される金属部材のうち,構造材,屋根等の被覆材,配管設備機器等に用いられるもの以外をいう。蝶番(ちようつがい∥ちようばん),把手(とつて)などがその典型であり,実用本位のものと装飾性を重視したものに大別され,前者を機能金物,後者を装飾金物と呼ぶことがある。建築装飾
[西洋]
 建築金物の使用は,前5000年のエジプト時代に銅製の家具用金物の使用例が見いだされるほどに古く,ブロンズ(青銅)も前4000年ころにはピラミッド内部で棒材として使用され,鉛も前3000年ころから使用されていた。…

※「釘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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