(読み)クサビ(その他表記)wedge

翻訳|wedge

デジタル大辞泉 「楔」の意味・読み・例文・類語

くさび【×楔/轄】

木や金属で、一端が厚く他端に至るにしたがって薄くなるように作ったもの。木材石材を割るとき、重い物を押し上げるとき、差し込んだ材が抜け落ちるのを防ぐときなどに用いる。責め木。
車軸の端の穴に差し込んで車輪の外れるのを防ぐ小さな棒。
二つのものを固くつなぎ合わせるもの。きずな。「共通危機感両派分裂を回避させる―となる」
[類語]リベット

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精選版 日本国語大辞典 「楔」の意味・読み・例文・類語

くさび【楔・轄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 堅い木、または石や鉄でV字形に作り、物を割ったり、広げたりするために、または枘(ほぞ)穴に挿しこんだ部材が抜けないようにするために打ち込むもの。責木(せめぎ)
    1. [初出の実例]「輗 奈加江乃波志乃久左比」(出典:新撰字鏡(898‐901頃))
    2. 「此の一字がはづれては、なんの役にたたぬくさびのはづれたる車のごとし」(出典:随筆・独寝(1724頃)下)
  3. 物と物とをつなぎ合わせる役目のもの。絆(きずな)となるもの。
    1. [初出の実例]「夜の程にいとど閉ぢ重ねてける氷のくさびは、足もいみじう堪へがたうて歩みもやられ給はず」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)三)

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普及版 字通 「楔」の読み・字形・画数・意味


13画

[字音] セツ・ケツ・カツ
[字訓] くさび・うつ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(契)(けい)。(せつ)の声がある。は契刻。〔説文〕六上に「(せん)なり」とあり、前条のに「楔なり」とあって、互訓。両木を連ねるとき、契刻してそこに(くさび)をうつのである。門の両旁の木を楔といい、拍子木を楔子という。

[訓義]
1. くさび、くさびする。
2. ほこだち、門の両旁の木。
3. 挈と通じ、うつ、鼓うつ、かきならす。
4. にわざくら、ゆすらうめ。

[古辞書の訓]
名義抄〕楔 エハメ・ニハサクラ・ニハクサ 〔字鏡集〕楔 ニハクサ・ニハサクラ・サルトリ

[語系]
楔()・)khyatは同声。kheat、keatは声近く、契刻を加える意。(刻)khkもその系統の語で、みな契刻に関している。

[熟語]
楔撃・楔・楔歯・楔子・楔
[下接語]
枷楔・楫楔・楔・木楔

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改訂新版 世界大百科事典 「楔」の意味・わかりやすい解説

楔 (くさび)
wedge

断面が鋭いV字形をした木片や金属片。木や石を割ったり,下に差し込んで重い物をもち上げたりするのに利用される。図のように,割れ目に打ち込まれた楔をたたくなどして力Fを加えると,ほぼ同じ力が楔の両面に垂直な力F1とF2とに分解されて両側物体に伝わるが,楔の頂角が小さいとF1とF2はFよりもはるかに大きい力になる。このほか楔は,つなぎ目で両方にまたがらせて打ち込んでつなぎ合わせた物が離れないようにしたり,突き通したほぞ先に打ち込んでほぞ継ぎの強さを増したりするなどいろいろに応用されており,ナイフやかんなの刃なども楔の原理を利用したものである。なお,日本では木や石の隙間に差し込み,強打して割るのに用いる場合,くさびを箭(や)とも呼び,この作業を箭割という。木製の箭には鉄輪をはめることがある。中世以前大鋸(おが)のなかった時代,造材はすべて箭割によった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「楔」の意味・わかりやすい解説


くさび

断面がV字形になるようにつくられた建築・工作材料。木や石を割ったり、重い物を押し上げたり、本棚のような工作物の継ぎ目に差し込んで堅く締めたりするのに使われる。このほか、物と物とをつなぎあわすのに使われるもの、車の心棒の端に差し込んで、車輪が外れないようにするものも楔という。断面がV字形の楔を物体に押し込むと、小さな力で物体に大きな力を与えることができる。たとえば、斧(おの)で薪(まき)を割る場合に、斧の断面が鋭角であればあるほど、薪を引き裂く力は強くなる。ナイフのような刃物の断面がV字形で、刃先が鋭くとがっているのは、このような原理を利用して、小さな力でよく切れるようにするためである。

[石川光男]


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百科事典マイペディア 「楔」の意味・わかりやすい解説

楔【くさび】

断面が鋭角のV字形をなす木片や金属片。これをほかの物体に押し込むと,くさびの両側面に垂直な方向に大きな力が生じるので,物体を割り広げるのに使われる。また逆に側面に垂直な方向に大きい力が加わっても,くさびを押し出す方向には小さい力しか働かないので,2物体を固着させるのにも使われる。断面が鋭角なほど効果が大きい。キー,刃物,くぎなどもくさびの原理の応用。
→関連項目斜面(物理)

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