針ノ木岳(読み)はりのきだけ

日本歴史地名大系 「針ノ木岳」の解説

針ノ木岳
はりのきだけ

針ノ木峠のすぐ西にそびえる鋭三角形の岩峰。立山町と長野県大町市の境。標高二八二〇・六メートル。長野県側の山麓からは前山の陰になって見えないが、立山からは黒部峡谷を隔てて真向いに屹立して見える。越中側では地蔵じぞう岳とよんだ。針ノ木峠は戦国時代すでに越中と信州を結ぶ山間通路であったため、この峠越えの守神として地蔵の名が付けられたのであろう。石黒信由の文政八年(一八二五)の越中四郡村々組分絵図(県立図書館蔵)、江戸時代末の黒部大川筋絵図(吉沢家蔵)などに地蔵岳の名で記載されるが、南北に走る後立山連峰稜線は針ノ木峠付近で東西方向に屈曲しているため、地蔵岳は国境から外れて越中内にあるように描かれた。


針ノ木岳
はりのきだけ

北アルプスの中央部、後立山うしろたてやま連峰に属する一峰で、標高二八二〇・六メートル。輝石安山岩の岩質で、その岩礫を積み上げた狭い山頂とそれとは逆に底部が大きいことでピラミッド形山容を呈する。東面のやまくぼと称する所には圏谷氷河状の氷食地形がある。針ノ木峠は、この針ノ木岳と、東隣の蓮華れんげ(二七九八・七メートル)の中間の鞍部にあって、標高二五四一メートル、峠ではわが国第二位の高さをもち、江戸時代には越中から信濃への魚や塩の通路ともされたという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「針ノ木岳」の意味・わかりやすい解説

針ノ木岳 (はりのきだけ)

長野・富山県境,飛驒山脈のほぼ中央,黒部湖の東岸上にそびえる後立山(うしろたてやま)連峰南端の山。標高2821m。古くは,信濃側で厩窪(まやくぼ)の頭,越中側で地蔵岳とよばれていたが,一般には用いられず,大正初め登山家辻本満丸によって東方の針ノ木峠にちなんで名付けられた。山体は下半部が花コウ岩,上半部が安山岩類から構成されている。頂上の東側直下に,氷河の浸食によってできた厩窪カールがある。登山路は大町有料道路(1990年無料開放)の扇沢から,籠川の谷をさかのぼる。標高2000m以上には,北アルプス三大雪渓の一つ針ノ木雪渓が横たわり,登りつめたところが針ノ木峠で,峠の西方1kmに頂上がある。雪渓下の山小屋の前には,北アルプス登山に貢献した地元大町市の登山家百瀬慎太郎(1892-1949)の碑があり,毎年6月には針ノ木岳慎太郎祭が行われる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「針ノ木岳」の意味・わかりやすい解説

針ノ木岳
はりノきだけ

長野県大町市と富山県立山町との境,飛騨山脈の後立山連峰の最南端山。標高 2821m。ピラミッド形の山容が名称由来。東斜面は高瀬川の支流籠川が深い谷を刻み,日本三大雪渓の1つといわれる針ノ木雪渓がある。山頂からは眼前に立山連峰,眼下に黒部湖を展望できる。山頂南東方に針ノ木峠がある。中部山岳国立公園に属する。

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デジタル大辞泉プラス 「針ノ木岳」の解説

針ノ木岳

飛騨山脈、後立山連峰の最南端、富山県中新川郡立山町と長野県大町市の境にある山。標高2821メートル。針ノ木峠を挟んで蓮華岳と対峙する。北東麓に針ノ木大雪渓が広がる。

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