鉱業法による登録を受けた一定の土地の区域であって,鉱業権者が登録鉱物と,これと同種の鉱床中に存在する他の鉱物の採掘を独占的・排他的に行いうるところ。鉱業権の設定・変更の出願が許可され,登録税が納付されたときに,鉱業権の設定・変更の登録,鉱業原簿への記載,登録番号と登録年月日を記載した鉱区図の作成が行われて鉱業権者に交付されるとともに,鉱区図は鉱区図帳に登録番号の順に綴り込まれ,鉱業原簿の一部とされる。この鉱区図によって鉱区が示される。鉱区の境界は直線で定められ,地表の境界線の直下を区切りとされるため,鉱区と鉱床,地形,土地の境界が一致しないことがある。この不一致によって鉱床の完全な開発ができない場合には,鉱区,採掘出願地の増減命令,勧告,決定により是正できる。
鉱区には,公正の観点から,少数の者の鉱物の独占を防ぐ必要があり,同時に,小資本の乱掘によって社会的な希少資源をそこなうことを防ぐ必要もあるところから,鉱物の種類に応じて,最大面積,最小面積の制限が加えられている。また,他の諸利益との調和を図るために,通商産業局長が出願を許可しないことによって鉱区とすることを避けるべき場合が法定されており,さらに一定の地域において,鉱業以外の法益の保護がとくに重要である場合に,その地区においては通産局長の判断を待たずに,第三者である土地調整委員会があらかじめ鉱区の設定を禁止する鉱区禁止地域を指定する制度もある。鉱区内で行使される鉱業権は,物権とみなされる独占的排他的権利であるが,土地の所有権や使用権とは別個の独立した権利である。鉱区内で鉱物を掘採取得することは,土地所有権の内容からは除かれており,土地所有者といえども,鉱業権を得ずに,鉱物の取得を目的として土地の鉱物を掘採する場合には,鉱業法191条の違反で処罰され,しかもそれが他人の鉱区内であるときには,鉱業権の侵害行為として不法行為となる。
執筆者:来生 新
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鉱業権の及ぶ土地の区域をいう。鉱区の境界は直線で定め、横にはその直線の地表の境界線の直下を限りとし、深さは人力の限度において無限に及ぶ。鉱区には試掘鉱区、採掘鉱区、租鉱区がある。鉱区は、鉱物資源の合理的開発の見地から細分することは好ましくないため、石炭、石油、アスファルトおよび可燃性天然ガスについては15ヘクタール、石灰石、ドロマイト、珪石(けいせき)、長石、ろう石、滑石および耐火粘土については1ヘクタール、その他の鉱物については3ヘクタールを下ることができない。砂鉱については最低の定めがない。また一鉱業権者による広範囲の区域の独占を避けるために、鉱物の合理的開発上やむをえない場合のほか、350ヘクタールを超えることができない。鉱区は、鉱床の位置・形状と適応した適正な規模であることが望ましいので、鉱区の増減・分割合併が認められ、場合によっては通商産業局長が鉱区の増減の出願を命じ、または鉱業権者間で鉱区の増減の出願について協議するよう勧告し、協議が調わないときは当事者は通商産業局長の決定を申請することができる。また公害等調整委員会において、鉱物の掘採が一般公益または一般産業と対比して適当でないと認めるときは、鉱物を指定して鉱区禁止地域を決定することができる。旧鉱業法では、皇居、離宮、軍港、要塞(ようさい)地帯などの外側300間(約540メートル)以内は鉱区禁止区域であった。
[宮田三郎]
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