ドア、扉、引出しや金庫などに取り付けて、鍵(かぎ)によって開閉する機構、または装置のこと。このような機構をもつ締まり金物を錠前といって区別することもあるが、普通は両方をあわせて錠という。
錠はかなり古くから用いられていたようで、中国では紀元前2、3世紀ごろに、古代エジプトでは前2000年ごろに使用されており、『旧約聖書』には錠と鍵の記述が多くある。ローマ時代には、すでに現在の南京錠(ナンキンじょう)に似た小型のものが現れた。中世以降は、実用的な面よりも装飾的な面での進歩であって、機能的、機構的にはあまり変わらず、現在のように発達したのは18世紀末から19世紀にかけてである。
錠は、構造(開閉機構)、取り付け方法、用途により分類される。構造別では、ウォード錠は鍵穴または錠の回転する軌跡に障害物を設けて、これに妨げられないような刻みの入った鍵以外の回転を阻むもの。レバータンブラー錠は棒鍵錠ともいい、内部にスプリングをつけた数枚のレバータンブラーがあり、その何枚かを回転する鍵で押してボルトを動かすもの。また、ピンタンブラー錠はシリンダー錠ともよばれ、その機構は、錠の中の同筒の偏心位置に自由に回転できる栓を設け、それら同筒と栓とを貫通して小穴を5、6個つくり、そこに接続位置がそれぞれ異なる2個重ねのピンを、一方の端部にスプリングを挿入して仕掛け、差し込んだ鍵の刻みがそれぞれのピンを押し上げ、すべてのピンの接続位置が同筒と栓との境にちょうど並んだときに、鍵によって栓が回転してボルトを動かして開けることができるものである。また、ドアのノブのなかにピンタンブラーを収めた錠は、インテグラル錠とよばれる。さらに、鍵を用いないで開閉できる空錠(そらじょう)、数字や文字をあわせて開く文字組み合わせ錠、時計を組み込んで設定した時間にならないと開かない時計錠などのほかに、引き戸用の差し込み錠(栓錠、鎌錠)や窓用のクレセント錠がある。最新の錠は、いろいろな機構を組み合わせて構成されている。たとえば、鍵のかわりに孔(あな)あきカードや磁気カードを用いるシリンダー錠がある。
取り付け方法による分類としては、面(つら)付け錠と彫り込み錠に大別され、さらに持ち運び錠がある。面付け錠はドアの内側から框(かまち)の表面などに取り付けるもので、簡単に取り付けられる。彫り込み錠はドアの側面からドアの内部に錠の部分をくりぬいて収めるので、表面には錠が突き出ないので意匠的に優れている。持ち運びできるものに南京錠がある。
錠の用途として最大の分野は建築である。そのほか、船舶、自動車、機械、日用品、旅行用品など、広範囲にわたっている。
建築用のおもなものは、玄関錠(外からは鍵で、内からはラッチで施解錠)、浴室・トイレ錠(内から施解錠)、施錠する必要のない間仕切り錠(病室などには消音錠)、ホテル錠(ホテルの経営方針によって多くの種類がある)、非常錠(通常は鍵で施解錠するが、非常時には内側から非常解錠ができる)、インターロック錠(病院などで扉が2か所ある場合、同時に開かないように制御する錠)などがある。
錠は現代の生活に欠くことのできないもので、錠を選ぶには、防犯性、耐久性および操作性に優れているかどうかを調べること、これには警察庁優良防犯機器認定制度がある。また、JIS(ジス)(日本工業規格)に等級が規定されている。
[岸谷孝一]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…戸,引出し,箱などに取りつけ,差しかためて,しまりとする器具を錠あるいは錠前lockといい,これを開閉する具を鍵という。一対で用いられ,一般に〈鍵をかける〉などというように両者は混同されることが多い。…
※「錠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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